弥生式土器は全体に赤褐色系の色調を帯び、壺・甕・鉢・高杯などの小破片で、完形品は存在しない。壺には漏斗状に大きく外反する口頸部を有するものがあり、口縁部端面に櫛描簾状文や波状文あるいは凹線文を加えて、その上に刺突文や円形浮文を施すものがある(138 24・27・28)。また口縁部端を上・下両方に拡張させ、端面に櫛描刺突文や簾状文をめぐらし、さらに端部上下縁に刻目を付けるものと、水平口縁の端部を上・下に小さく拡張して、端面および口縁内面に櫛描簾状文や波状文を描く場合とがある。頸部から胴部には二条の凸帯文をめぐらし、その間に簾状文を施したり、胴部には櫛描簾状文や直線文・波状文を配した破片もある(138)。底部は平底と上げ底とがあり、外面をヘラ削り調整している。内面には斜線文が認められる。口縁部や頸にもヨコナデ痕と研磨痕がみられる。無頸壺は口縁部が小さく外反し、頸部から胴部には櫛描簾状文を施し、頸部をヨコナデ磨研していて、口縁直下に一対二孔の紐孔を外面から穿っている。このほかに、わずかに時期の下る短頸壺片もある。甕には口縁部が「く」の字形に外反して端部が小さく立上る型式と、水平に外反して立上る型式とがある。前者は薄手で、口縁部をヨコナデし、胴部外面にはヘラによる斜線文がみられる。後者の外面にはヘラによる研磨痕が認められ、口縁部はヨコナデされていて、胴下部に条痕文様のあるものもある。甕の底部は外面をヘラケズリしたりヘラ研磨し、上げ底が多い。鉢形土器には、段上口縁を有し、口縁端面や頸部表面に櫛描簾状文を施す例がある。口縁下に紐孔を穿つ型式と、ヘラ先凹線文を数条加え、その凹線間に波状文を描いたり、無文や櫛描斜線文上に円形浮文を付着する型式などがある。このほかに把手付の小型土器もあり、口縁には刻目を加えている。鉢形土器が有脚かどうかはわからない。高杯は口縁部と脚部が出土している。頸部外面の上・下端部に凹線文を描き、脚部に向かって研磨していて、櫛描列点文や刻目を加える場合もある。脚部は端面が立上るものがあり、また若干時期の新しい器体には小円孔を穿つものがある。これら土器類のほかに、甕形土器破片を利用して作った径三・五センチの紡錘車があり、中央に一~〇・五センチの孔を有する(137・9)。主として溝内から出土したこれらの弥生式土器は、文様・形態から唐古第Ⅲ様式に併行し、凹線文や条痕叩きから第Ⅲ様式の新段階に属するものということができる(考古九―(1))。