石槍の剥離調整法

189 ~ 190

サヌカイト製で、先端が欠損するほかは、完好な状態で残されている。全長二〇・六センチ、幅三・一センチ、厚さ一・四センチある。全長に対して、基部寄りの三分の一は幅が一定し、先端に向かって徐々に細くなる。身の横断面は凸レンズ状で、縦断面は中央部が最も厚く、先端および基部寄りにいくにしたがい薄くなる。基端は調整剥離を施さず、直截面で終わる。身の両面には直線状に通る稜を作り出すが、一部では大きな剥離面のために、稜の形成されない個所もある。刃部は先端寄りの一四・五センチの範囲が鋭いが、それ以下の基部寄りでは擦りおとしたようににぶい。この石器には稜まで達する幅一センチ以上の大きな剥離痕と幅五ミリ前後で長さ一センチ前後の剥離痕が認められる。これらの剥離痕はフリー・フレーキングないし、ステップ・フレーキングの方法で形成されたと考えられる。また、プレッシャー・フレーキングによると思われる幅、長さとも五ミリ前後の小さな剥離痕が認められる。この剥離痕は身の先端寄りに集中し、基部寄りでは数少ない(144)。(置田雅昭)

144 五軒家出土の石槍実測図
145 西方からみた五軒家全景、造成中の金剛東団地から西方に丘陵がのびその上から石槍が採集された