古墳の出現と源流

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縄文・弥生の両時代には、それぞれの時代を特色づける墓制の存在が明らかにされていて、とりわけ後者の中にはつぎの古墳時代の萠芽を思わせる玉類の副葬や木棺の使用などの要素も認められる。兵庫県竜野市養久山の丘陵上には、前方後円墳のほかに、弥生式壺棺を埋葬したもの、鉢形の弥生式土器を副葬したものなどが箱式棺とともにあって、古墳の発生期に当たるものではないかという解釈もある。しかし弥生社会の発達が、日本列島内で自生的に前方後円墳の外形と、竪穴式石室と呼ぶ狭長な石積みの埋葬施設の構築を必然的に促したとする見方に対して、列島内外の社会情勢の変化が、朝鮮半島から日本列島にかけて基層的に広がっていた石室墓制に刺激を与え、地域的に特異な墓制の出現となったという、古代東北アジアの相互的連帯の視角から考察する方法もある。前方後円墳の発生と板石積みの竪穴式石室の構築とが、どこで発生したのかを解明したのちでなければ、この疑問は解決できない。

156 古代の前方後円墳として完成した美しい姿をもつ奈良県天理市柳本の崇神陵