松岡山古墳群の特色

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これに対して松岡山古墳群は、一見したところ玉手山古墳群の一支群にすぎないかのような感を与えるが、意外に豊富な内容を有している。すなわち大和川に臨んでそそり立つ細長い丘陵上に、松岳山(美山)古墳の名で呼ばれる全長約一二〇メートル、後円部の直径約六〇メートル、前方部の幅約三五メートルの前方後円墳があって、この墳形も後円部が一五メートルと著しく高く、西方に延びる狭長な前方部はこれより一〇メートルも低い特色を呈している。後円部の中央には墳頂部をほとんどおおって広範囲に板石を厚く積み上げ、その中央に竪穴式石室を営んで、内部に古式の組合式長持形石棺を納めたものである。明治初年の発掘で二面の銅鏡と管玉・刀剣などを出土した記録があり、一九五四年の調査で、銅鏡片・勾玉・石釧・銅鏃・鉄鏃・鉄製農具のほか大量の刀剣片を発見した(163)。

163 柏原市国分松岳山(美山)古墳の後円部にある長持形石棺と周囲の竪穴式石室の板石積み

 この丘陵の西端にはかつて茶臼山と称した円墳があり、三角縁四神四獣鏡など三面の中国製銅鏡を出土したのがこの古墳であったと伝えている。松岳山古墳の東側に続く丘陵上にも数基の古墳があって、ヌク谷北塚からは仿製(日本製)の三角縁三神三獣鏡など三面の鏡が、多数の勾玉・管玉とともに粘土槨の中から出土し、東ノ大塚では鏡片・車輪石・鍬形石と、歯車形の珍しい碧玉製石製品が発掘されている(164・165)。

164 柏原市国分松岡山東ノ大塚出土の異形車輪石
165 柏原市国分ヌク谷北塚出土の仿製三角縁三神三獣鏡