再び真名井古墳の鏡をめぐる問題に戻ることにしよう。この三角縁三神三獣獣帯鏡と全く同じ文様をもつものが、現在までのところ他に二面発見されている。一面は上述した『佐味田及新山古墳研究』の報告にある奈良県北葛城郡広陵町大塚の新山古墳出土品で、他の一面は群馬県高崎市柴崎町蟹沢の芝崎古墳から出土している。さらに樋口隆康氏によると倉敷考古館の収蔵品中に京都から出土したと伝えるもう一面の鏡があるというが、出土地について正確なことはわからない。全く同じ文様をもつ理由は、同一の鋳型を用いて次々に鋳造していったためか、一つの原鏡をもとにしてなんらかの方法で同じ型の鏡を鋳造したことによるわけであるが、前者の立場をとれば「同笵鏡」となり、後者の見解にしたがえば「同型鏡」ということになる。この問題については、あとでもう少し詳しく触れることにしよう。