碧玉製紡錘車

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つぎに碧玉製紡錘車は真名井古墳の粘土槨外面の南壁中央に、ちょうど粘土面に貼り付けたような状態で、鎗先として使われたとみられる鉄製の剣身状利器をはさんで三個が遺存していた(196)。碧玉という緑色をした美麗な石材を円板形に加工してよく研磨したもので、直径は五・九~三・九センチある。最も大きなものは表面に三段の刳型(くりかた)をもち、中心に直径四ミリの円孔を穿っている。二番目に大きなものは二段の刳型をもち、最も小さなものは一段の刳型しかもっていない(197)。

196 真名井古墳の紡錘車、鉄鏃・短剣出土状態実測図(側面図)
197 真名井古墳出土の1.(画文帯神獣鏡?)鏡片 2.碧玉岩製管玉 3~5.碧玉岩製紡錘車

 この形状の石製品は綜麻(へそ)石と呼ばれたことがあり、紡錘車の名称は糸を紡ぐ際に糸巻棒の先端にさして、その回転により糸に縒(よ)りをかける部品に似ているところから生じている。紡錘車は弥生時代に土製・石製・骨製品が広く用いられ、古墳時代後期に至るまで少しずつ形態が変化しつつ流行した。しかしその中にあって碧玉製品が形状や大きさの上でよく似ているからといって、紡糸のための実用的な道具とするには疑問がある。