大古墳の内容

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個々の大王陵の内部構造や副葬品はまだわからないが、大王陵級の津堂城山古墳の内容は知られている。一九一二年に同墳後円部が村民の手で発掘された際に、中央にあった竪穴式石室の内部から長さ三・四メートル、幅一・五メートル、高さ一・九メートルの巨大な長持形石棺が出土した。この石棺はその後埋め戻されて後円部が陵墓参考地となったため、現在ではもう見ることはできない。しかし古市古墳群の前半の時期に属する規模の大きい前方後円墳は、大王陵級のものをはじめとして、こうした長持形石棺を埋納している可能性が強い(209)。

209 藤井寺市津堂城山古墳の後円部から出土した巨大な長持形石棺

 すでに古く盗掘された形跡があったので、当初の副葬品がそのまま保存されていなかったとはいえ、石棺の内外から神獣鏡四面、盤竜鏡二面のほか、破片などを合わせると九面分の鏡と、硬玉製勾玉・碧玉製管玉・硬玉製棗玉・車輪石・剣形石製品・刀子形石製模造品・鏃形石製品・銅製櫛・金銅製弓筈(ゆはず)・銅製矢筈(やはず)・巴形(ともえがた)銅器・環頭大刀・素環頭剣・刀剣・銅鏃・鉄鏃の品目の多様な出土品があった。いちいちの遺物について解説することは本書では差し控えるが、盗掘墳でもなおこれだけの出土品が得られた事実は、本来この古墳に副葬された品物が、いかに豊富なものであったかを想像させるであろう。