宮前山古墳材石の特色

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宮前山古墳の概要については次節の遺跡各説の項に譲るが、石棺式石室として蓋石、四周の側石、底石の六枚の切石を組合せて構築し、墓壙の周壁に丸石をあたかも竪穴式石室状に積み上げていた。ただしこの石積みは護壁で、天井石を欠いていた(考古四〇~四二)。南側は扉石を立て、外側に丸石の護壁がめぐらされていたらしいことからすると、羨道のない構造である。また蓋石の上面は長軸の方向に一段と高い台状の突起を作り出していて、縄掛突起は存在しない。室内にはピンク色を呈する赤色顔料が少量床面に堆積していた他、副葬品とみられる遺物はなく、遺骨として歯冠部を一片検出したにすぎない。ただし扉石の外側から須恵質の長頸壺が一個出土した。なお材石は、南河内地域に多い二上山産の白石と称する凝灰岩ではなく、兵庫県南部の播磨に産する高室石に、ほぼ間違いないと考えている。石材の問題については、後で改めて取り上げたいが、播磨産の石材がはるばる運ばれてきているのはきわめて珍しい。