古墳石材の供給地

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さてここで、後期から終末期にかけての古墳の石室・石棺に用いた材石について、若干ふれておくことにしよう。この時期になると再び古墳に石材を使う例が増加し、巨大な構築物や精巧な加工によって人目をひく場合が多い。副葬品が減少する傾向と対照的に、顕著な石の構造物が現れる現象は、時期的な風潮としても無視しがたい。

 その上、加工に適した石材を選択するためか、時間の推移とともに用材の変化もかなり明瞭にたどることができる。その理由としては、需要の増加に応じて石材の供給地が次第に拡大した結果と考えられ易いが、どうも事実は供給圏をめぐって豪族が支配した政治的情勢が影響しているらしい。石材の採取と加工が、石工と呼ばれる特殊な技能をもった工人集団の労力に依存するところが多い以上、加工に適した石材とはいいながら、その供給には一定のルートと範囲が枠組をなしていたことは、当然考えられるであろう。我われが古墳を見るときに最初に抱く素朴な興味としてだけでなく、専門的にも石材の供給地を明らかにするのは、加工技術と同様に重要な研究のテーマとなる。