さて二上山産の凝灰岩と関連して、もうひとつ重要な石材の産地である兵庫県の竜山と高室とを取り上げておくことにしよう。すでに指摘したように、市域内の宮前山古墳の石棺式石室に用いられた石材は、従来竜山石かとみられてきた。我われの肉眼的観察を主とする判断も、竜山石かもしくは北方の高室石のいずれかであった。もっとも河内南部の後期と終末期古墳の石棺に竜山石を用いた例は比較的少なくて、石川谷では太子町太子の磯長小学校裏手にある刳抜式の家形石棺程度にすぎず(276)、他に出土地は不明ながら狭山町の狭山池で池の樋に使用されていた五例がある。これに対して大和南部ではよく知られた桜井市の艸墓(くさはか)古墳、橿原市の菖蒲池(しょうぶいけ)古墳などの石棺に意外に多く竜山石が用いられ、山城地方では材質の判明した石棺材はことごとく竜山石からなるという。