各種須恵器の特色

421 ~ 423

正式の報告書が調査を担当した大阪市立博物館の調査関係者からまだ公表されていないので、個々の遺物に対しての詳細な解説は後日に譲るとして、簡単な解説だけを付け加えておくことにしよう。

 高杯は長脚をもち三方に一段の細長い透しを設けていて、杯部は外方に開き、蓋をもたない。杯腹部に一段があり下方にヘラ描き斜線文が施されている。裾部が大きく開く型式である(341)。

341 田中1号墳出土の高杯(右)、𤭯(中)、壺(左)

 𤭯は二種あり、小型の球形の体部に大きく開いた口頸部を付けた型式と比較的大きな体部に太い口頸部を付けた型式とがある。前者には幅の広い口縁部がめぐらされ、外面にカキメ跡が著しい。また口頸部と胴部の中央とに櫛描き列点文を有している。口縁部と頸部との境に明瞭な段をなす突帯があり、頸部にも二段、胴部にも上下にそれぞれ段を設けている。後者は幅の狭い口縁が外方に開いていて、頸部との間に一段を設けるほかは体部にも段がない。胴部の中央に穿たれた円孔は大きい。

 壺は球形の体部に比較的短い口頸部を付けたもので、口縁は大きく外反し端部を外に折り曲げて丸くおさめている。底部は丸底である。

 蓋には二種あり、多くは天井部が高く膨らみ中央に扁平なボタン状のつまみを有している。天井部と口縁部とを分ける突出部の段はほとんどなく、凹線がめぐらされている。つまみの上縁はかるくへこんでいる。他の一つは後述する装飾付壺にともなうものとみられ、天井部の膨らまない上部中央に小さな壺型のつまみを兼ねた装飾が付いている。口縁部内面に反りをもち、反りは高く口縁部よりも下方に突出している(342)。小型の壺は肩部の角ばった胴部に外方に開く高い直口縁を設けたものである。装飾付壺は頸部から肩部にかけての一部分の残欠にすぎないが、肩部に接して蓋の上面に取り付けられていたのと同型同大の小型壺を付着させている。おそらく五個ないし六個の小型壺をもつものであったであろう。本体の壺は長くて外開きの口頸をもち、球形の胴部をなしていたらしいからおそらく装飾壺と同様な器形をなすものであったであろう。

342 1号墳出土の須恵器蓋

 馬具についても簡単にふれておこう。辻金具(343)は小さな半球形の本体から四方に突出した脚をもつ通有の型式である。杏葉は円形の上部と菱形の下部からなるいわゆる扁円剣菱形をなすもので、いま小片を残すにすぎないが周縁に飾鋲を並べて打っている。その他雲珠の破片とみられる脚部、轡の喰にあたるかと思われる破片などがある(344)。

343 1号墳出土の辻金具、杏葉
344 1号墳出土の雲珠片、轡片