第二期類の軒丸瓦は大別すると二種があって、一種は単弁蓮華文をもつ山田寺式と、他の一種は複弁蓮華文をもつ川原寺式で、いずれもそれぞれの形式名にふさわしい典型的な瓦当文を有する点で興味深い。すなわち前者は八弁の蓮弁内に子葉をもつ単弁蓮華文と、周辺に重圏縁をめぐらす細部の特色は、奈良県桜井市山田の山田寺所用の瓦当文とよく一致する。ただし山田寺例は重圏縁が四重であるのに対して新堂廃寺は三重で面径がやや小さい。たとえば山田寺からは一八・〇~一五・六センチの直径をもつ軒丸瓦を出土しているのに対して、新堂廃寺では一六・二~一五・七センチの大きさを占める。大阪府教育委員会の報告では弁周の縁取りが顕著でなく、弁央に稜線のないものと、弁周が顕著で稜線も明瞭なもの、および丸瓦部分との接合に技法の差があることなどから、同じ山田寺式の単弁蓮華文瓦に属するものがさらに細別できることを指摘している。
後者の川原寺式は八弁の蓮弁内に複子葉をもつ複弁蓮華文を、直径六・八センチの大きな中房の周囲に配したもので、蓮華文の彫りは深く、周辺には内傾した斜縁上に面違い鋸歯文をめぐらしている。直径一六・八センチ。府の報告では中房の蓮子の配列に(1+5+10)と(1+5+9)の相違をもつ二種があることを区別し、後者はやや小さく直径一四・五センチとしている。
第二期類の軒丸瓦にともなう軒平瓦はいずれも四重弧文で、山田寺式に比べて川原寺式の軒平瓦は弧線の彫りの浅いグループであろうと考えられている。顎端は深顎で幅は六センチある。平瓦部の裏面に格子目叩文を顕著にもつ軒平瓦が多い。
第二期類の棰先瓦は前述したように例のない楕円形の一〇弁からなる単弁蓮花文で、長径一六・八センチ、短径一二・五センチの大きさをもつ。砂粒を多く含み、黒色焼成の軟質品である(考古五八―2)(440・5)。