このヲガンジ池は奥のもう一つの池とあわせて奥行き四〇〇メートルの細長い谷に位置しているので、本瓦窯のほかにさらにいくつかの瓦窯を持っていることが予想されたので、調査の期間を通じて精査を加えた。それによると北側には現状では他の瓦窯の存在を認めないが、本瓦窯のちょうど南側に池を介して相対する北向き斜面の裾にも、わずかながら赤変した瓦片の散布があった。地形的にも同形の窯を営むのに適しているので、同じ谷には少なくとももう一基の瓦窯が存在していた可能性がある。ただ残念なことにこの地点は池の余水吐けのコンクリート排水溝によって覆われているので、瓦片の散布以上のことは確認できない。なお瓦片の特徴から見て、調査した瓦窯の時期と共通するようである。おそらく寺地の北西にあたる谷口の傾斜を利用してこれらの瓦窯は営まれたもので、当時は谷底にささやかな細流をもつ程度の環境をなしていたのであろう。