第二期類の軒丸瓦は奈良前期(白鳳)に属し、単弁蓮華文をもつ山田寺系式のものと、複弁蓮華文からなる川原寺系式とがある。両者は瓦当の文様が異なるだけでなく、胎土・焼成・技法の上でも差が認められるので、焼造時期に大きな隔たりがないとすると、二つの別の窯からの供給を考えたいところである。この段階ではヲガンジ池瓦窯の稼行も始まっていたとみられ、窯体の内外に遺存した格子目叩文をもつ大ぶりの瓦片が白鳳期にあたる。いまこれらの瓦片を両系式と比較してみると、瓦窯からは瓦当文をもつ軒丸瓦の資料は検出していないものの、いくつかの要素から川原寺系の瓦がこの瓦窯で焼造されたことが確実で、山田寺系の胎土をもつ瓦片は見当たらない。山田寺系の瓦は胎土がきわめて良質で、良好な焼成を示していて、川原寺系の瓦がもつ砂を混じた胎土と吸水性の大きい黄褐色を呈する低火度焼成と区別できる。