甕形須恵器の蔵骨器

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この蔵骨器は、一九六七年八月、板持3号墳発掘調査中、検出されたものである。出土地点は、3号墳の後方部墳丘の南斜面中央にあたる基底部で、表土下二〇センチ、地山を直径二〇センチの円形に、約一〇センチ掘り込んで、蔵骨器が埋置されていた。

 蔵骨器は、復原口径一二センチ、胴径二四・三センチ、器高二五・八センチを測る須恵器甕と、口径一五・六センチ、器高五・四センチ、高台径九・六センチ、高台高〇・五センチを測る須恵器杯とからなる(456)。杯の口を下にして、蓋に転用している。甕体部外面には、一辺〇・四センチの格子叩き、内面には、径七センチ前後の同心円、および円弧叩きが施されている。マキアゲ、ミズビキ手法により成形され、焼成は甘く軟質で、黄褐色を呈する。一方、杯は、マキアゲ、ミズビキ手法により成形され、胎土は密で焼成良好、堅緻、青灰色を呈する。甕内には、焼骨が多くみられ、掘方内には炭灰が充満していた。蔵骨器の形態から、奈良時代後期頃の所産と考えられる。なお調査者は、位置、出土状況から、南方丘陵下に望まれる佐備郷と関連のある被葬者を考えている様である。(中村浩)

456 板持3号墳封土中出土の蔵骨器実測図