石川郡の式内社

840 ~ 841

石川郡の式内社九社は、いずれも小社であるが、咸古神社には他の小社と異なる扱いがされた。祈年祭の奉幣にあたって、小社の与えられる通例の品数に加えて、鍬一口と靫一口が与えられた。『延喜式』の「四時祭式」によれば、このような処遇を受ける小社は、畿内小社の祭神四三三座のうち、六五座に限られている。石川郡のうちでも咸古神社は、とくに重要視されていることがわかる。

 咸古神社はじめ九社は、『延喜式』編纂時の延長五年(九二七)には確実に存在した由緒ある神社だから、その祭神や所在地については疑う余地がないかにみえる。ところが大部分の神社の祭神ははっきりしないし、所在地についても疑問の余地のあるものがある。以下各神社について、それらを考えてみたい。