議定書の内容は、分郷ごとにその村高に応じ割り当てられるものと、分郷したにもかかわらず、一村全体として分郷共通に賦課されるものとの両方があり、それらにつき述べられている。前者は本年貢の米銀の納入や山年貢・小物成・諸運上など、すべて支配領主ごとに割り当てられる。領主からの各種の賦課に対する諸入用は、両分郷の村高割に応じてきめられていることがわかる。後者については、郷年番・支配年番などは分郷以前の慣行に従い実施し、領主や地方役人の廻村に際し必要な人足はそれぞれの領主の所属の分郷から提供する。しかし、村方全体の普請は用水潅漑担当の両人が出役して勤務し、変死者や病死者の処置に対する諸入用は、すべて村全体の惣高割に賦課する。用水関係も分郷に関係なく井路司たる二人が勤務し、役料米も先規どおりに決定するなど、分郷と無関係に村全体で負担するとされる。結局、貢租や諸負担、領主ごとに相違する課役関係の諸入用は、分郷ごとに徴集する。しかし、支配をこえた村単位の普請・村全体の諸入用や、用水・旅行者の病死・変死など村落社会の共同体全体の経費は、分郷をこえて村全体で負担するというのであった。また、高札場の新設は、分郷の結果として一つの村落が、支配領主の相違する別々の村落となるので、まさしく新しい村落として新領主の支配を受ける方向で、つくられたのであろう。一方では、もとの高札場をそのまま残し掛札をかかげ使用したという。村から高札場新設に対する必要経費を、分郷の新村落分のみでなく、村落の惣高に割り当てる形式をとっていることが興味をひく。そして今後、同一の支配領主に戻るならば、両分郷から願い出てすべてにわたり取り調べるようにしたい、と結んでいる。分郷に伴う同一村落社会生活の不合理さや不便利さの現状を肯定しながらも、将来、単一領主による村落支配を希求していることが窺える。