階層構成

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富田村の屋敷地の高は八石三斗二升八合であったが、それ以外にも、村民が新堂村内部に保有する田畑の高があった。いま、文政一一年(一八二七)の「明細帳」(近世Iの二)により、新堂村の村高一七二七石六斗三升の本村・枝村(富田村)間の分布状態を見ると、表49のとおりである。高を戸数で割った単純平均値では、本村と枝村との間には、ほぼ一〇分の一に近い極端な格差のあったことがわかる。また、表50に富田村保有の田畑高の推移を示すことにする。保有高が一〇〇石を超えることはなかったようであるが、天明五年(一七八五)の五五石余から文政八年の九三石余まで年次的変動はかなり大きい(新堂竹田家文書「宗門改帳」、以下同じ)。なお、他村への出作高については知ることができない。

表49 新堂村村高の分布〔文政11年(1828)〕
区分 戸数 平均
石  石 
本村 1,436.101 323 4.446
枝村 89.666 171 0.524
入作 201.683
合計 1,727.630 494 3.089

注)近世Ⅰの2により作成。

表50 富田村保有の田畑高
年次 村高
宝暦12(1762) 57.665
明和2(1765) 62.815
安永4(1775) 68.580
天明5(1785) 55.454
寛政7(1795) 70.176
文化2(1805) 84.226
  12(1815) 85.819
文政8(1825) 93.888
  11(1828) 81.339
天保5(1834) 78.757
  13(1842) 69.649
  14(1843) 76.326

注)新堂竹田家文書「宗門改帳」「明細帳」により作成。

 近世中期以降の貨幣経済の進展は、富田村の内部においても、大きな階層格差を生み出していた。表51によると、明和三年(一七六六)には、田畑・家屋敷を持つ者と、田畑はあるが借家住まいをしている「高持借家」からなる高持層が無高層を上回っていたが、それからほぼ四半世紀が経過した寛政年間(一七八九~一八〇〇)以降には、両者の比率が逆転し、時代が下るにつれて、高持層は減少し、無高層は増加の一途をたどるという傾向が明確化している。村内では無高でも、他村に出作地を保有していたり、活発な商業活動を営んでいた可能性はあるが、一般的に無高層はきびしい生活状況を強いられていた。したがって、飢饉や疫病流行などのときには、彼らが最も大きな打撃を受けたと考えられる。天保一三年(一八四二)に「無高借家」が大幅に減じているのは、そのことを物語っている。

表51 階層分化
年次 高・家屋敷持 高持借家 無高家持 無高借家 合計
明和3(1766) 85 3 46 134
寛政8(1796) 62 2 1 77 142
文化8(1811) 68 2 1 81 152
  13(1816) 51 7 97 155
文政8(1825) 48 7 112 167
天保13(1842) 32 89 121

注)新堂竹田家文書「宗門改帳」により作成。

 次に表52は、階層構成を持高別に示したものである。おおまかな年次的傾向は、いま述べたとおりだが、寛延元年(一七四八)および明和二年には、ほとんどが一石未満に集中しているものの、高持層が全体の三分の二近くを占めている。その後、戸数の絶対的増加もあるが、一石未満の零細な高持層の無高への没落が続出して、無高層が過半を超えるようになり、文久三年(一八六三)には八割弱にまで増加している。その一方では、一部の高持層の上昇転化も進展し、享和元年(一八〇一)から一〇石以上の高持が現れるようになる。そして、階層分化が進んだ幕末には、上層と下層との対極分化が明らかになっている。

表52 持高別階層構成の推移
区分 寛延1 明和2 天明3 享和1 文政3 天保13 文久3
(1748) (1765) (1783) (1801) (1820) (1842) (1863)
10石以上 1 (1.9) 3 (1.9) 2 (1.7) 2 (1.3)
5~10石 2 (1.5) 3 (2.2) 3 (2.3) 3 (2.0) 4 (2.5) 3 (2.5) 2 (1.3)
1~5石 9 (6.9) 15 (11.3) 14 (10.7) 16 (10.7) 6 (3.7) 9 (7.3) 11 (7.3)
1石未満 74 (56.5) 73 (54.9) 49 (37.4) 54 (36.0) 37 (23.1) 18 (14.9) 17 (11.2)
無高 46 (35.1) 42 (31.6) 65 (49.6) 76 (50.6) 110 (68.8) 89 (73.6) 120 (78.9)
合計 131 (100.0) 133 (100.0) 131 (100.0) 150 (100.0) 160 (100.0) 121 (100.0) 152 (100.0)

注)表51に同じ。