前節で示したように、近世仏教を特徴付けるものは、寺請制度であり、本末制度であり、教団仏教である。しかしその周縁部分には、必ずしもこの枠にはおさまりきらない仏教(宗教)者・組織が多数存在していた。ここではこれらを一括して民間宗教者・組織と呼んでおきたい。
近世中後期の南河内地域には、同じような活動形態を持った三つの民間宗教組織が存在していた。それらは決まった信者の家(宿(やど)と呼ばれる)に立ち寄り、そこで背中に背負ったセタ(笈(おい)のこと)を開帳しながら、西国三十三カ所巡礼を三三回行うことで満願になる行者を抱えた組織であった。そして満願(行(ぎょう)の成就)をすれば、その行(ぎょう)で体得した功徳を広く民衆に分け与えるという名目で二夜三日の供養が行われた。この組織の起源は中世末に遡るが、三組の活動は、支配形態に大きな変化を生じながらも、基本的に昭和二〇年代ごろまで続いた。しかしここでは、そのうち当該組織の活動が最も盛んであった近世における存在形態にしぼって叙述する。