鷲尾隊の通行・宿泊は、村にとって経済的にも大きな負担となった。「御勅使鷲尾様御通行人足賃銭割方帳」(富田林杉田家文書)によると、動員された人足は到着時に三三人、出発時に二五五人、追出が一五人、合計三〇三人であった。鷲尾隊からは、一人二五〇文、合計七五貫七五〇文の賃銭が支給されたが、実際に人足を雇い入れるには、一人当り銭二貫、総計六〇六貫が必要であった。そのため、差額の五三〇貫二五〇文を通路に当たる富田林村から出戸村までの一八か村が分担することになった。一村当りの割当額は、二九貫四五八文で、一両を八貫八〇〇文として金に換算すると、金三両一分一朱と銭三〇八文であった。徴収は、一月一九日から行われたが、それまでの間、杉山・仲村・葛原・田守・杉本・杉田といった村内名望家からの一時借入金をもって賄った。
鷲尾隊宿泊に要した費用も、村の負担になった。「鷲尾侍従様御泊諸入用勘定帳」(富田林杉田家文書)によると、その明細は、表1のとおりである。宿泊当日の夕飯と翌日の朝飯の費用は銭三九五貫目で、金に換算すると三九両二分になる。弁当代・下廻り中飯代、鷲尾に供したと思われる刺身・タイ・ブリなどの費用、炭・竹の皮・草履・草鞋(わらじ)代などを合わせると、銀一貫一四五匁になる。これを金に換算すると四両二分一朱、銀四匁三分八厘になり、夕飯朝飯を合わせると四四両一朱余にのぼった。
用途 | 数量 | 銀 | 銭 |
---|---|---|---|
貫 | 貫 | ||
朝夕膳部 | 790人前 | 395 | |
弁当 | 270人前 | 0.8100 | |
下廻り中飯 | 10人前 | 0.0360 | |
肴 | 1鉢 | 0.0200 | |
作り身 | 1鉢 | 0.0600 | |
たい | 1枚 | 0.0200 | |
ぶりいり付 | 0.0150 | ||
炭 | 6本 | 0.0750 | |
竹の皮 | 500匁 | 0.0200 | |
草履・草鞋 | 0.0720 | ||
たたみ | 0.0085 | ||
さらし | 0.0085 | ||
合計 | 1.1450 | 395 |
注)富田林杉田家文書「鷲尾侍従様御泊諸入用勘定帳」より作成。