町村では、「町村制」の規定(六五・七四条)に従って、条例を定め常設委員を設置するところが多かった。東条村では、条例第一号として常設土木衛生委員を設置している。定員三人、任期は二年で、村会において村内公民中選挙権を有する者から選挙することになっていた。任務は村長の政務を補助することで、村会で議決した工事の執行、用悪水・衛生に関する事務の執行、村会に付す土木に関する議案や土木に関する事件報告書の下調べなどを担当し、そのために使丁三人を雇用することができた。報酬は年総額一〇円で、大字佐備担当委員五円、大字甘南備(かんなび)担当委員三円三三銭、大字龍泉(りゅうせん)担当委員一円六七銭に分配されることになっていた。明治二二年度は九か月分として七円五六銭が予算計上されたが、二三年度からは二四円に引き上げられ、その後も若干の変化があったが、二九年度から条例の規定に戻されている(東条村「村会議案議決議事録綴」)。錦郡村でも条例第四号として常設土木委員設置を定めている。定員は五人、任期は三年で、選出方法は東条村と同じである。任務も衛生に関するものを除けば、東条村と同様である。報酬は年総額一〇円で、大字錦郡担当委員七円、大字錦郡新田担当委員・大字伏山担当委員各一円五〇銭で、大字錦郡担当委員は三人いたものと思われる(錦郡村「議事書類綴」)。新堂村を除く市域各村の予算書にみられる常設委員の人数と報酬は表27のとおりである。ほとんどの村が常設委員を設置しているが、富田林村は、予算書からみる限り設置されていなかったようである。錦郡村も三二年以後は予算書に報酬が計上されておらず、廃止されたものと思われる。委員は、大字ごとに分担が決まっていたようで、大字の数と委員数が一致するところが多く、人数の多いところは、規模の大きい大字の担当委員を複数にしていたようである。委員の報酬も、担当する大字の規模によって差異が設けられていた。委員は、東条・彼方村では土木衛生委員、廿山・錦郡村では土木委員となっており、土木関係の政務を分担することになっていたが、多分に大字の代表として機能していたものと思われる。新しい村が成立しても、旧村の自立性が強く、その代表者を村長直属の委員にして、新村の一体化を図る必要があったのである。東条村では、村会に条例案を提出するにあたって次のように説明している。
多数ノ公民ヲシテ本村ノ公益ノ為メ力ヲ竭(つく)ス事ヲ得セシメ自治ノ効用ヲ挙クルコトヲ得ベシ、何トナレハ委員ノ列ニ入リテ本村行政ニ参与シ之ニ依而自ラ実務ノ経験ヲ積ミ、能ク施政ノ難易ヲ了知スル事ヲ得ヘケレバナリ
富田林村に常設委員が置かれなかったのは、旧富田林・毛人谷村が早くから一体化しており、その必要がなかったからであろう。
喜志村 | 大伴村 | 東条村 | 廿山村 | 錦郡村 | 彼方村 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
担当 | 担当 | 担当 | 土木衛生 | 担当 | 土木 | 担当 | 土木 | 担当 | 土木 | ||
大字数 | 1 | 大字数 | 5 | 大字数 | 3 | 大字数 | 4 | 大字数 | 3 | 大字数 | 5 |
報酬金額 | 人数 | 報酬金額 | 人数 | 報酬金額 | 人数 | 報酬金額 | 人数 | 報酬金額 | 人数 | 報酬金額 | 人数 |
円 | 人 | 円 | 人 | 円 | 人 | 円 | 人 | 円 | 人 | 円 | 人 |
10.00 | 1 | 12.00 | 3 | 12.00 | 1 | 15.00 | 2 | 7.00 | 3 | 7.00 | 1 |
3.00 | 1 | 9.60 | 2 | 7.80 | 1 | 11.80 | 2 | 1.50 | 1 | 6.20 | 1 |
2.00 | 1 | 4.20 | 1 | 6.80 | 1 | 1.50 | 1 | 2.70 | 1 | ||
5.90 | 1 | 1.80 | 1 | ||||||||
1.10 | 1 | ||||||||||
15.00 | 3 | 55.20 | 5 | 24.00 | 3 | 66.30 | 6 | 10.00 | 5 | 18.80 | 5 |
注1)大伴村は明治37年度である。
2)各村の明治25年度歳入出予算書より作成。