村の財政

157 ~ 163

東条村と錦郡村の歳出の概要は、表28・29のとおりである。決算書の臨時費・負担のうち、土木・教育・衛生に関するものは、それぞれの費目に加算し、金額の少ない費目は省略してある。歳出合計には、省略した費目も含まれているが、繰越金は加算していないので、歳入合計とは一致しない。

表28 東条村の歳出
年度 役場費 土木費 教育費
22 375.423 42.2 192.100 21.6 244.633 27.5
23 513.333 42.9 232.950 19.5 295.229 24.7
24 492.311 36.0 530.725 38.9 285.755 20.9
25 464.507 21.3 684.851 31.3 977.432 44.7
26 479.097 28.4 770.019 45.7 362.621 21.5
27 500.649 32.2 530.613 34.1 397.434 25.5
28 535.685 39.1 266.004 19.4 397.193 29.0
29 962.186 43.7 525.046 23.9 523.574 23.8
30 664.306 23.9 1104.686 39.7 774.654 27.8
31 701.125 39.5 206.258 11.6 640.044 36.1
32 759.361 30.3 748.472 29.8 702.267 28.0
33 640.530 31.2 313.609 15.3 853.607 41.6
34 710.568 18.9 614.312 16.4 768.734 20.5
35 750.760 25.7 166.217 5.7 780.113 26.7
36 783.311 26.8 1101.082 37.7 811.052 27.8
37 778.344 30.0 1048.839 40.4 624.313 24.0
38 743.298 22.8 1557.222 47.7 601.076 18.4
39 729.486 24.4 1264.293 42.3 853.681 28.6
40 829.128 32.8 500.230 19.8 971.826 38.4
衛生費 諸税及負担 村公債費 合計
8.470 1.0 19.339 2.2 889.965
21.338 1.8 8.773 0.7 55.260 4.6 1197.511
9.560 0.7 9.681 0.7 1365.782
8.970 0.4 6.849 0.3 2185.763
15.365 0.9 5.939 0.4 1686.114
58.610 3.8 15.488 1.0 1555.668
126.620 9.2 5.880 0.4 1370.412
31.810 1.4 12.513 0.6 101.080 4.6 2199.473
34.245 1.2 16.909 0.6 128.926 4.6 2783.306
27.646 1.6 40.171 2.3 127.772 7.2 1775.418
31.850 1.3 50.049 2.0 2507.811
30.486 1.5 163.401 8.0 2052.952
1525.986 40.6 64.848 1.7 3755.462
61.496 2.1 86.417 3.0 1,032.604 35.3 2926.899
63.996 2.2 123.049 4.2 2922.565
52.928 2.0 29.670 1.1 2596.133
290.330 8.9 26.514 0.8 3262.220
63.822 2.1 37.354 1.3 2985.616
70.198 2.8 59.492 2.4 2530.729

注)富田林市所蔵文書 東条村「村会議案議決議事録綴」の各年度決算書より作成。

表29 錦郡村の歳出
年度 役場費 土木費 教育費 衛生費
22 323.699 82.0 45.106 11.4 10.500 2.7
23 421.114 94.5 10.620 2.4
24 431.377 94.3 10.000 2.2
25 417.674 93.0 15.430 3.4
26 434.892 94.7 10.060 2.2
27 421.488 88.8 14.422 3.0 31.495 6.6
28 436.298 78.4 5.421 1.0 105.620 19.0
29 450.133 42.2 197.835 18.5 344.281 32.2 12.100 1.1
30 514.506 36.8 420.739 30.1 395.592 28.3 18.472 1.3
31 605.504 44.9 202.824 15.0 441.203 32.7 18.872 1.4
32 643.535 32.3 314.648 15.8 466.028 23.4 56.636 2.8
33 712.824 27.9 800.099 31.3 650.478 25.4 16.950 0.7
34 748.237 21.7 1,762.962 51.2 546.375 15.9 9.500 0.3
35 797.995 21.9 1,470.643 40.3 773.659 21.2 9.000 0.2
36 815.768 14.9 1,556.441 28.5 2,545.336 46.6 15.650 0.3
37 741.551 39.4 188.527 10.0 403.018 21.4 15.250 0.8
38 673.103 36.8 152.216 8.3 518.451 28.3 35.175 1.9
39 697.762 38.7 170.663 9.5 710.959 39.4 13.000 0.7
40 774.639 29.7 570.992 21.9 666.771 25.5 16.020 0.6
諸税及負担 基本財産積立金(基本財産蓄積金) 借入金償還費 合計
14.589 3.7 394.949
10.394 2.3 445.458
11.363 2.5 457.340
8.216 1.8 448.880
8.408 1.8 459.360
0.000 0.0 474.605
0.000 0.0 2.240 0.4 556.779
13.041 1.2 31.200 2.9 1,067.815
17.199 1.2 10.241 0.7 1,398.198
38.971 2.9 16.680 1.2 1,348.794
428.101 21.5 15.240 0.8 1,990.730
359.071 14.0 2,559.232
266.690 7.7 21.000 0.6 24.921 0.7 3,445.685
200.471 5.5 299.000 8.2 3,646.568
380.486 7.0 54.223 1.0 56.700 1.0 5,462.108
49.543 2.6 457.600 24.3 1,881.939
128.434 7.0 308.100 16.8 1,829.029
140.288 7.8 35.000 1.9 1,803.982
485.306 18.6 50.000 1.9 2,612.598

注)富田林市所蔵文書 錦郡村「議事書類綴」の各年度決算書より作成。

 東条村の歳出の中心は、役場費・土木費・教育費で、平均すれば役場費・土木費が各二九%、教育費が二八%、合わせると支出の八六%に達する。土木費に対しては地方税補助金が下げ渡されており、明治三〇年代になると土木費の六〇%を超えることがある。二四年度・二六年度・三〇年度・三七~三九年度などのように、佐備街道・廿山街道の修理工事で土木費が増大した年は地方税補助金も多く、二六年度・三七~三九年度は臨時費として計上されている。したがって、実質上、歳出の中心をなすのは役場費と教育費であったといえる。ところが、錦郡村では土木費・教育費が少なく、役場費の占める割合が圧倒的に高くなっている。特に教育費は、負担金の項目にある富田林村外六ヶ村組合の富田林高等小学校費を教育費とみなしたもので、決算書には教育費の費目すらない。これは、錦郡村では、土木費・教育費などが村費ではなく大字(旧村)の費用で賄われていたからである。錦郡村会には、村の予算・決算と共に、各大字の予算・決算が報告されており、村の予算・決算書にみられない土木費・教育費が計上されている。その費用も大字ごとに地価割・戸別割で賦課され、地方税補助や寄付金の徴収も行われていた。大字錦郡・錦郡新田・伏山の大字費を合わせると、その決算額は、日清戦争以前は村の決算額の八〇%を超えていた。したがって、錦郡村の財政をみるためには、大字の財政を合わせてみる必要がある。村の歳出決算額と大字の歳出決算額の主要な項目を合計したのが、表30である。役場費は平均すると二〇・五%になり、支出の中で占める比率は、むしろ低く、教育費が三五・四%弱、土木費が三二・八%で東条村より高くなっている。

表30 錦郡村の歳出合計
年度 役場費 土木費 教育費 支出合計
22 323.699 37.2 189.690 21.8 249.109 28.6 871.142
23 421.114 45.5 157.302 17.0 221.500 23.9 925.146
24 431.377 43.9 194.963 19.9 235.659 24.0 982.109
25 417.674 44.6 173.528 18.5 223.487 23.8 937.532
26 434.892 39.8 168.257 15.4 304.409 27.9 1091.798
27 421.488 39.6 176.628 16.6 311.068 29.2 1064.423
28 436.298 38.5 175.323 15.5 309.508 27.3 1132.891
29 450.133 21.9 601.473 29.3 810.309 39.4 2054.588
30 514.506 23.1 841.478 37.8 791.184 35.5 2226.515
31 605.504 28.7 405.578 19.2 882.406 41.8 2112.785
32 643.535 21.6 718.286 24.1 932.056 31.3 2980.916
33 712.824 17.0 1676.598 40.0 1300.956 31.0 4190.735
34 748.237 12.6 3569.132 60.2 1092.750 18.4 5928.060
35 797.995 13.1 3002.426 49.3 1547.318 25.4 6087.994
36 815.768 8.2 3376.937 33.8 5090.672 51.0 9990.923
37 741.551 24.3 397.054 13.0 806.034 26.4 3053.182
38 673.103 23.0 324.432 11.1 1036.902 35.4 2928.622
39 697.762 24.8 361.326 12.9 1421.918 50.6 2809.941
40 774.639 18.6 1161.984 28.0 1131.242 27.2 4153.825

注)錦郡村「議事書類綴」の各年度決算書より作成。

 役場費の大部分は人件費で、表31にみられるように、東条村では約七三%を超え、錦郡村では八〇%に達する。そのうち、名誉職の報酬は、日清戦争以前には東条村で役場費の三〇%、錦郡村では三六%余を占めていた。二九年度東条村の役場費が多くなっているのは、役場の増築・修理によるものである。そのため、基本財産積立金一二三円四二銭を流用し、三二年度歳出予算に同額を基本財産積立金として計上している。さらに、二二六円五八銭月利八朱の負債を起こしており、三〇・三一年度の公債費支出は、その返済のためである。

表31 東条村・錦郡村の人件費
年度 役場費 人件費 給料 報酬
東条村
22 375.423 282.293 75.2 152.983 40.7 108.810 29.0
23 513.333 398.965 77.7 191.665 37.3 156.000 30.4
24 492.311 394.535 80.1 186.000 37.8 156.000 31.7
25 464.507 364.516 78.5 172.700 37.2 151.966 32.7
26 479.097 379.090 79.1 173.970 36.3 157.500 32.9
27 500.649 392.767 78.5 191.809 38.3 159.790 31.9
28 535.685 410.341 76.6 193.051 36.0 162.500 30.3
29 962.186 447.442 46.5 200.366 20.8 167.736 17.4
30 664.306 476.833 71.8 237.485 35.7 120.480 18.1
31 701.125 479.930 68.5 294.000 41.9 103.000 14.7
32 759.361 572.073 75.3 297.360 39.2 111.683 14.7
33 640.530 468.007 73.1 272.927 42.6 115.000 18.0
34 710.568 527.400 74.2 312.000 43.9 130.000 18.3
35 750.760 563.720 75.1 336.000 44.8 142.000 18.9
36 783.311 587.600 75.0 348.000 44.4 141.000 18.0
37 778.344 632.502 81.3 350.984 45.1 130.598 16.8
38 743.298 574.606 77.3 352.724 47.5 125.322 16.9
39 729.486 568.908 78.0 355.482 48.7 135.936 18.6
40 829.128 609.663 73.5 392.000 47.3 147.993 17.8
錦郡村 22 323.699 265.790 82.1 139.300 43.0 120.010 37.1
23 421.114 343.180 81.5 179.040 42.5 152.750 36.3
24 431.377 356.900 82.7 184.500 42.8 154.000 35.7
25 417.674 356.410 85.3 180.000 43.1 154.000 36.9
26 434.892 349.480 80.4 171.000 39.3 154.000 35.4
27 421.488 344.660 81.8 156.750 37.2 154.000 36.5
28 436.298 358.220 82.1 174.000 39.9 160.000 36.7
29 450.133 360.900 80.2 174.000 38.7 160.000 35.5
30 514.506 417.387 81.1 207.077 40.2 160.000 31.1
31 605.504 487.169 80.5 277.200 45.8 160.999 26.6
32 643.535 513.240 79.8 300.000 46.6 156.000 24.2
33 712.824 552.230 77.5 310.800 43.6 174.000 24.4
34 748.237 624.910 83.5 358.800 48.0 194.400 26.0
35 797.995 668.997 83.8 365.157 45.8 194.400 24.4
36 815.768 644.710 79.0 337.200 41.3 205.200 25.2
37 741.551 610.819 82.4 302.929 40.9 210.000 28.3
38 673.103 554.065 82.3 276.320 41.1 114.000 16.9
39 697.762 581.189 83.3 296.400 42.5 120.000 17.2
40 774.639 607.052 78.4 274.222 35.4 125.161 16.2

注1)比率はすべて役場費に対するものである。
 2)東条村「村会議案議決議事録綴」、錦郡村「議事書類綴」より作成。

 教育費は、大部分が教員の給与である。東条村の二八年度決算の教育費のうち、富田林村外六ヶ村組合の負担金になっている富田林高等小学校の費用を除いた三五二円三九銭一厘が有備尋常小学校の費用であるが、教員給料は二三三円六銭六厘で、六六・一%を占めている。しかも、教員定員三人のところを二人とし、代用教員と思われる雇員に授業を担当させていたので、その雇人料五四円二五銭を加えると、実際の教員給与は八一・五%に達する。当時、東条村の学齢児童は三〇五人で就学児童は一九五人、就学率は約六四%であったが、就学率の上昇によって教員定員を四人にする必要が生じており、校舎も不足していた。また不就学の多くは女子であったので、小学校に裁縫科を設置する計画を立て、予備費を流用して机・腰掛などの購入に着手していた。さらに、父兄の要望を入れて学齢に達しない幼童一五人の保育も引き受けており、より多額の教育費を必要としていた(東条村「村会報告綴」)。錦郡尋常小学校と富田林高等小学校は村組合によって運営されていて詳細は不明であるが、よく似た事情にあったものと思われる。表28にみられるように、東条村の二五年度の教育費が突出して多くなっているのは、有備尋常小学校の校舎新築のためであるが、それを賄うために多額の寄付金を募っている。三三年度の教育費が東条・錦郡両村とも多くなっているのは、富田林高等小学校の校舎新築のため、富田林町外六ヶ村組合の負担金が増加したからである。衛生費は、それほど大きな比率を占めないが、錦郡村の二八年度、東条村の三四年度が増大しているのは、避病院建築のためである。この費用は寄付金と起債で賄われている。