昭和二一年(一九四六)四月一〇日に、戦後初の衆議院議員総選挙が行われた。この総選挙は、総司令部の民主化指令に基づく改革の重要な節目となった。前年末の第八九回臨時帝国議会には、総選挙を実施するための前提となる衆議院議員選挙法改正案が提出され、一二月一七日に改正された同法が公布された。その主な改正点は、女性に参政権を与えたこと、選挙権年齢を二〇歳以上、被選挙権年齢を二五歳以上に引き下げたこと、大選挙区・制限連記制を採用したことであった。改正衆議院議員選挙法が公布された翌日、一二月一八日に衆議院は解散され、一九日の閣議では総選挙を二一年一月二一日か二二日に実施する方針が決定された。ところが、閣議決定の翌日一二月二〇日に、総司令部は総選挙をしばらく延期するよう指令し、年明けの一月四日に、軍国主義者の公職追放と超国家主義団体の解散を指令した。公職追放令は、予想を超えて徹底的なものであった。選挙準備中の旧議員の大半が該当し、幣原内閣は改造を余儀なくされた。こうして旧時代の日本の指導層に大打撃を与えたのち、新生日本の門出にふさわしい民主的で自由な戦後初の総選挙が実施されたのである。
全国で展開された選挙運動は、自由を得た解放感と政治情勢の流動性から、雑然とした活気に包まれた。届け出た政党数は三六三にのぼり、そのうち二六七の党派が候補者をたてた。総議席数四六六に対して立候補者は二七七〇人という、わが国総選挙史上空前の乱立状態が出現した。その内訳は前議員四四人、元議員一〇〇人に対して、新人候補は二六二六人、しかもこのうちには八一人の女性が含まれていた。それは新しい時代相を、見事に反映した総選挙だったのである。
大選挙区制が採用されたこの第二二回総選挙(四月一〇日執行)では、大阪府は第一区(大阪市内、定数七人、二人連記)と第二区(大阪市を除く府内全域、定数一一人、三人連記)の二つの選挙区に分けられた。選挙運動員数に制限がなく、演説会・ポスター・ビラ・個別訪問もまったく自由で、選挙規制が大幅にゆるめられたので、にぎやかな選挙運動が展開された。立候補者の多くは、当時の国民の切なる願いであった主食三合配給の実現を公約し、天皇制の是非を論じた。富田林市域の町村を含む大阪第二区には六〇人が立候補し、日本社会党三、日本自由党二、日本進歩党二、諸派二、無所属二の当選が決まった。
全国での結果は、再選挙となった二議席を含めて、自由党一四一、進歩党九四、社会党九三、日本協同党一四、共産党五、諸派三八、無所属八一であり、日本社会党がかなり大幅に進出したこと、日本共産党が初めて合法政党として議席を持ったこと、新たに参政権を得た女性の中からいっきょに三九人という多数の当選者を出したことが注目された。また、軍国主義者の公職追放の結果、新人が全議席の八割を占めた。しかし保守政党および保守系の当選者が圧倒的に多く、保守勢力の根強さを示した。
この総選挙での富田林市域における、上位得票者一一人の得票数を記したのが表82である。これを見ると、富田林町出身の田中万逸が、他の候補を寄せ付けない圧倒的な強さを示していたことがわかる。それとともに、市域における当時ののどかな自然そのままの保守的体質をあらわした得票結果だったことがうかがえる。なお、田中万逸は、大正五年(一九一六)三月に第一二回総選挙(大正四年三月)の補欠で衆議院議員となったあと、昭和二八年四月の第二六回衆議院議員選挙までに総選挙で一二回当選し、補欠を含めて三〇年四か月衆議院議員をつとめた。昭和二二年二月には、第一次吉田茂内閣の国務大臣となった。
富田林町 | 東条村 | ||||
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氏名 | 党派 | 得票数 | 氏名 | 党派 | 得票数 |
※田中万逸 | 進歩党 | 6,689 | ※田中万逸 | 進歩党 | 515 |
※喜多楢治郎 | 無所属 | 2,621 | ※喜多楢治郎 | 無所属 | 376 |
井出計三 | 自由党 | 2,418 | 井出計三 | 自由党 | 254 |
松原喜之次 | 社会党 | 1,926 | 松原喜之次 | 社会党 | 184 |
藪本竹次 | 無所属 | 1,854 | 藪本竹次 | 無所属 | 155 |
※本多花子 | 諸派 | 1,118 | ※本多花子 | 諸派 | 119 |
※小西寅松 | 諸派 | 1,085 | ※左藤義詮 | 自由党 | 116 |
※左藤義詮 | 自由党 | 1,044 | ※松永仏骨 | 自由党 | 72 |
※松永仏骨 | 自由党 | 832 | 久保田鶴松 | 社会党 | 52 |
※井上良二 | 社会党 | 675 | 鈴木愛之助 | 諸派 | 47 |
平島良一 | 諸派 | 578 | ※叶凸 | 社会党 | 41 |
※寺田栄吉 | 進歩党 | 41 |
注)※印を付したのは当選者。