国民健康保険事業の開始

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国民皆保険政策に基づく国民健康保険法は昭和三三年(一九五八)一二月に公布され、三四年一月から施行された。日本に国民健康保険制度ができたのは昭和一三年であったが、この時には国民健康保険組合の任意設立・任意加入を原則としていた。戦後の昭和二三年に法律が改正されて市町村公営の国民健康保険事業が始まったが、これも任意の事業であり任意加入であった。

 富田林市が国民健康保険事業を開始したのは、昭和三六年四月一日であった。三三年公布の国民健康保険法では、法律施行の際に国民健康保険を行っていない市町村は、三六年四月一日までに国民健康保険事業を開始すればよいことになっていた。富田林市は三四年一月の法律施行時に国民健康保険を行っていなかったから、一年余の準備期間をもって国民健康保険事業を開始したのであった。

 昭和三五年の「富田林市事務報告」には、「国民健康保険実施に伴う基礎調査」を行ったとあり、三五年六月一日現在の調査票回収状況は九二・六%と記されている。この調査では、富田林市内の社会保険加入者数三一九八人、国民健康保険該当人数四三五四人となっている。なお、同事務報告によると三五年一〇月三一日に国民健康保険設立準備委員会の委員の委嘱があり、一一月一四日から一二月一七日まで四回の委員会を開き、一二月二四日小委員会、一二月二六日委員長から答申、一二月二七日に「知事に対し条例(案)の協議」と記されている。

 『富田林市市政だより』昭和三六年三月八日付第一一八号は、「国民健康保険 四月一日から始まる」の見出しで、「国保にはどんな人がはいるか」「国保はどのように使う?どうすれば国保で病気をみてもらえるか」「国保にはどんなトクがあるか」「保険料はどうか」などについて説明している。『富田林市市政だより』の五月二〇日付第一二〇号には「国民健康保険はなぜ強制適用されるか」、七月一五日付第一二二号には「国民健康保険手続案内」が掲載され、八月二五日付第一二三号は昭和三六年度の保険料の料率決定を報じ、所得割一〇〇分の一三五(市民税額一〇〇円につき一三五円)、資産割一〇〇分の一五(固定資産税額一〇〇円につき一五円)、均等割(被保険者一人につき四六五円)、平等割(一世帯につき七二〇円)と記している。『富田林市市政だより』三八年八月一六日付第一四五号には「国民健康保険の給付率引上げ」「十月から世帯主に七割(これまでは五割)」と報じ、同年度の保険料率は所得割一〇〇分の一二〇、資産割一〇〇分の二三、均等割六五〇円、平等割九八〇円と記している。

 表91は富田林市国民健康保険加入状況を示したものである。国民健康保険料収納率は、昭和三六・三七両年度とも六二%程度と低かったが、三八年度には七六%となり、三九年度に八〇%を超え、四一年度には九〇%を超えた。国民健康保険財政では、三六・三七両年度には赤字であったが、三八年に黒字となり、国庫支出金も年度を追って増加した(表92)。

表91 富田林市国民健康保険の加入状況
年度 総数 被保険者 加入割合
世帯数 人口 加入世帯数 被保険者数 世帯 被保険者
世帯 世帯
昭和36 8,043 39,031 4,374 15,940 54.4 40.8
37 8,897 41,705 4,231 15,024 47.6 36.0
38 9,623 44,631 4,224 14,555 43.9 32.6
39 11,031 48,838 4,458 15,226 40.4 31.2
40 11,527 50,540 4,556 15,569 39.5 30.8
41 12,059 51,746 4,866 16,130 40.4 31.2
42 13,485 53,625 4,909 16,188 36.4 30.2
43 17,957 60,426 5,017 16,364 27.9 27.1
44 21,811 72,411 5,333 17,181 24.5 23.7

注)『富田林市総合計画策定資料』Ⅱから作成。

表92 富田林市国民健康保険財政の年度別決算状況

単位:千円

年度 歳入の部 歳出の部
保険料 国庫補助金 府補助金 その他 総務費 保険給付費 その他
昭和36 11,524 10,812 2,746 412 25,494 6,054 20,235 541 26,830
37 15,675 16,349 2,782 420 35,227 7,457 28,563 2,404 38,424
38 26,629 22,904 2,590 337 52,460 8,524 37,385 4,620 50,529
39 29,157 28,389 3,080 2,148 62,774 9,646 51,185 600 61,431
40 35,771 44,802 2,516 2,097 85,186 11,882 63,649 654 76,185
41 31,669 44,685 2,392 9,467 88,213 12,577 74,709 737 88,023
42 45,054 57,704 2,447 916 106,121 11,612 94,565 906 107,082
43 50,855 90,880 2,691 1,511 145,938 12,072 141,322 2,372 155,766
44 68,022 114,395 3,359 2,376 188,152 15,141 173,002 11,331 199,474
45 92,736 140,144 5,181 22,065 260,127 20,804 222,280 15,052 258,135

注)「富田林市国民健康保険事業特別会計決算書」から作成。

 なお、医療保険制度とならんで大切な福祉政策として、国民年金制度が昭和三四年に施行された。この制度は、当初、無拠出の福祉年金だけであったが、三六年四月から保険料の徴収が開始され、拠出制年金が比重を高め、国民皆年金体制が確立された。