衛都連賃上げ闘争

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昭和三三年(一九五八)からは、富田林市職の活動はさらに本格化していった。メーデーを出発点とし、夏季闘争、教員の勤務評定反対闘争、警職法(警察官職務執行法改正案)反対闘争、原水爆禁止富田林大会、秋季年末闘争などに積極的に取り組んだ。富田林市職は、かつての親睦会的組織から闘う労働組合へと、大きく変化を遂げていた。そして、これらの闘争経験が、翌年の大幅賃上げ獲得闘争の勝利へとつながっていった。

 三三年、衛都連は、衛都連全組合員を対象に賃金実態調査を行った。これが、その後府内衛星都市で次々と展開される衛都連賃上げ獲得闘争の出発点となった。この調査に基づき、衛都連は、賃金格差を是正すべく、新賃金要求(一八歳初任給九八〇〇円、その上に一歳ごとに一〇〇〇円ないし一二〇〇円の金額を上積み、四八歳賃金六万四八〇〇円)を定めた。これを受け、翌年には、衛都連傘下の単組の多くが、この新賃金要求を取り上げ、大幅賃上げを次々と獲得した。

 当時、組合員二〇七人を擁していた富田林市職においても、三四年一一月一八日から一九日にかけて、衛都連統一新賃金要求を掲げ、市長交渉を行った。交渉には、拡大闘争委員会が当たったが、全員廊下に座り込み待機の強固な態勢で、交渉に臨んだ。しかし、上辻市長が、「一人平均八五〇円アップ」と回答したため、一一月一九日午前一時五〇分交渉が決裂し、一度中断した後、一一月一九日午後六時すぎから衛都連に交渉を委任して団交を再開した。これに対し、市長は一五〇〇円の賃上げを提案したが、組合はこれに応じず、応援の堺・布施・八尾など各市職員組合を合わせ、約三〇〇人が深夜まで座り込んだ。理事者側は、一一月二〇日午前〇時四五分、さらにプラスアルファ(三〇〇円)と現業員に作業衣、地下足袋などを支給することを回答した。組合員はただちに闘争委員会を開いて協議した結果、市長提案を受け入れることを決定し、二〇日午前三時、一八〇〇円アップで妥結した。

写真136 団交で市長を追及する執行部と組合員 (富田林市職員労働組合『いしかわは流れる』から転載)

 しかし、一二月七日、市当局は、組合幹部との会見において、「賃上げにともなう赤字解消のための来年度からの再建計画が具体的に立てられない。自治庁の賃上げ問題に関する意向をなお見きわめる必要がある」などの理由で、「一二月定例市会には、賃上げにともなう給与条例改定案の上程を見合わす」と発言した。この対応に憤った富田林市職は、翌三五年二月一日、「約束通り確実にベ・ア(ベース・アップ)を支給するように」と、午後五時すぎから団交を始め、全組合員が市庁舎廊下に座り込んで気勢を上げた。その夜、上辻市長から「二月中旬までに議会に提案するよう努力する」との回答が出され、組合側は団交を打ち切って、座り込みを解いた。

 しかし、市当局は、またもべ・アの予算化を見送った。組合側は「実施が二転三転するのは、理事者の誠意がない」として、二月一五日から団体交渉を再開し、二割~四割休暇の実力行使を連日にわたって行った。

 三月二九日に開かれた市議会では、開会とともに組合員家族四二三人の署名請願が芦田和一議員の紹介で出され、これを採択するかでもめたため、予算審議に入れず、会期を年度いっぱいの三一日まで延ばすことになった。この日、議会傍聴席には休暇闘争を行った組合員や応援単組の組合員など約五〇人がつめかけ、議員の発言ごとに拍手とヤジがとぶという状況だった。請願文の内容は「市議会は一五〇〇万円の給与是正予算を減額しようとしているが、一方ではこれに見合うほどの前市長退職金を支払っているし、予算案をみても、市役所費や議会費に大きな食糧がふくまれているのはスジが通らない。理事者提案通り可決してほしい」というものであった。請願を回された総務委員会は、この採択でもめ続けたが、この間約一〇〇人の組合員が庁内でデモを行った。その後も組合側は、協定を守らせるため、休暇闘争などの実力行使を続けた。

 結局、三月三一日の市議会での審議の結果、三四・三五両年度追加予算案は、一人平均一五〇〇円に減額修正して可決された。これに対し、組合側は、この議決にはあくまで不満であり、理事者の無責任と市会審議の不明瞭さを追及していくため抗議するとした。

 組合と市議会が強く対立し、その板挟みとなった上辻市長は、入院先の病床から議長に進退伺いを出した。また、三〇日朝に職務命令を出したまま姿をかくしていた芝本助役も、居所が連絡されただけで、三一日の夕方まで姿を見せなかった。市理事者と職制を失った市役所は、一日中空白状態となった。この日、組合側は朝から五割休暇を決行、前日の徹夜座り込みに続いて衛都連などの応援三〇〇人を交えて庁内や玄関前に座り込んだ。

 その後、富田林市職は、四月八日の拡大闘争委員会で、三四年度分の給与是正は、議会の議決どおり一人平均一五〇〇円をただちに支給し、三五年度分については、さらに市長の誠意を求めて、一人平均一八〇〇円の妥結額が完全にもらえるよう交渉することを決めた。

 また、富田林市議会は、四月一四日の全員協議会において、さきに上辻市長から小山議長宛てに出されていた進退伺いの処理について協議したが、あらためて退職届を求めないことにした。