衛生行政の重大化

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本来、地方自治体は、住民の生活を守るためにいろいろと努力することをその主な目的としている。住民生活に密着した行政を行おうとすると、歳出額の中で教育・衛生・社会福祉などの消費的経費が大きな割合を占めるようになる。ところが、これらの住民生活と密着した経費のうち、国の負担する部分が少ないために、地方自治体は四苦八苦する。財政的に苦しいからといって、住民のための仕事を少しでも怠ると、市民生活にただちに破綻をきたし、それはたちまちにして地方自治体の理事者を苦境に追い込む。高度経済成長政策が中央政府によって強力に推進される中で、地方自治体は住民の生活と健康を守るために苦闘しなければならなかった。

 ここで、富田林市の各年度一般会計歳出決算額のうち、衛生費の占める割合の推移をみると、表94のとおりである。衛生費は昭和四〇年代初期と後期に土木費と拮抗する額を示している。ここに衛生行政の重大化が示されている。

表94 一般会計歳出額中に占める衛生費・教育費・土木費と構成比の推移
年度 歳出決算額 衛生費 教育費 土木費
千円 千円 千円 千円
昭和39 803,338 38,542 4.8 87,061 10.8 651,180 8.1
40 936,012 53,595 5.7 186,545 19.9 90,435 9.7
41 1,286,061 111,259 8.7 163,893 12.7 217,649 16.9
42 1,406,647 203,096 14.4 251,710 17.9 197,731 14.1
43 1,585,604 171,296 10.8 310,674 19.6 278,457 17.6
44 2,963,726 154,128 5.2 595,775 20.1 476,743 16.1
45 3,486,783 201,254 5.8 890,562 25.5 740,251 21.2
46 4,555,342 231,532 5.1 1,361,346 29.9 869,163 19.1
47 4,870,135 303,347 6.2 1,283,721 26.4 906,229 18.6
48 6,169,145 685,909 11.1 1,539,068 25.0 735,306 11.9
49 9,460,728 655,733 6.9 2,069,518 21.9 1,298,727 13.7

注)「富田林市歳入歳出決算書」から作成。

 このように膨張した衛生費の中で、清掃費が占める割合はきわめて高い。ごみやし尿の処理のための費用が、市の歳出の大きな部分を占めたのであった(表95)。それでも、ごみやし尿の問題はなかなか解決しなかった。

表95 富田林市の清掃費歳出額の推移
年度 清掃費
千円
昭和39 28,580 (74.2)
40 43,307 (80.8)
41 63,150 (56.8)
42 71,768 (35.3)
43 87,751 (51.2)
44 114,121 (74.0)
45 145,642 (72.4)
46 183,869 (79.4)
47 254,758 (84.0)
48 298,661 (43.5)
49 396,368 (60.4)

注1)「富田林市歳入歳出決算書」から作成。
 2)( )内は衛生費中に占める比率。

 富田林市を中心とした広域行政でごみの終末処理を行うために南河内清掃施設組合が設立されたのは昭和四二年(一九六七)一〇月、富田林市の甘南備に第一清掃工場が完成したのは三年後の四五年一〇月、ここまでは西岡潔市長の時代であった。五〇年八月、内田次郎が市長となり、清掃施設組合の管理者を引き継いだがごみ問題はもつれにもつれた。

 昭和五三年九月、河内長野市内の第二清掃工場建設が紛糾を繰り返して、二二年後の平成一二年(二〇〇〇)に至ってようやく完成したという事実がごみ問題のむずかしさを物語っている。松原市のように、昭和四七年に清掃工場の計画決定を得ながら、三〇年の歳月を経て、いまなお反対闘争が強く、建設のめどが全くつかない例が近くにある。