昭和四八年(一九七三)一二月一日、富田林市は五年前の指導要綱を廃止して、新しく「開発指導要綱」を施行した。その第一条には、目的が次のように記されていた。
この要綱は、開発行為にともなう公共公益施設等の整備に関する負担基準を定めることにより、無秩序な開発行為を防止し、今後本市内で行なわれる開発行為がすべて富田林市総合基本構想の理念に基づき「緑と太陽にめぐまれた明るく住み良い」住宅地等に形成されることを厳しく要請し、もつて本市全体の均衡ある健全な発展に寄与することを目的とする。
指導要綱の適用範囲は、開発面積が三〇〇平方メートル以上、三階建て以上または高さ一〇メートル以上の建物、住宅戸数が二戸以上の規模を開発する者に適用。ただし、農業を営む者が五年以上所有している農地に賃貸住宅などを建てるときは、一〇〇〇平方メートル以上、一〇戸以上の規模で適用。
健康で文化的な都市生活や機能的な都市活動を確保するため、交通安全の確保、文化財の保護、公害防止、日照・電波障害の排除などを定めた。
開発者は、良い居住環境を保つため、現状の樹林や池などの自然的素材を生かすこと。また、敷地面積の一〇%を生け垣、植栽用地として確保すること。
住宅敷地の面積の基準は、一戸建て住宅で第一種住居専用地域では一五〇平方メートル、第二種住居専用地域では一〇〇平方メートル、その他の地域では八〇平方メートル。
アパート・共同住宅では、一戸当たり〇・五台の駐車場を設置する。
開発者は、入居者の通勤・通学の交通の便を図るため、開発区域内外でのバス運行路線、バス停留所の設置など、関係機関と事前に協議し、その対策を定める。
開発者は、その区域周辺住民の意見を十分尊重し、開発計画の説明会を通じて必要な調整を図る。
道路、上・下水道、公共空地、学校、清掃施設、集会所などの整備・設置は、開発者が費用を負担し施行する。
全文四五条、精緻(せいち)をきわめた指導要綱は、宅地開発による人口急増で市の財政運営が圧迫され、交通戦争やごみ戦争が発生し、自然環境の破壊などの不利益が生じるようになった社会状況から生まれた。なかでも宅地化の波が押し寄せて、地価の異常な高騰を招き、限られた財政投資の効率を著しく低下させ、良好な市街地の形成に必要な公共用地の確保に大きな支障をきたし、そのため、公共施設の整備が後追いになるのを防止すべく、制定されたのである。