寺内町の景観は多くの歴史的建造物とこれを配列する町割りによって特徴づけられている。いわゆる七筋八町が町割りの形態を表現している。南北=筋、東西=町と呼んできたが、その大部分は近世の姿をとどめている。東高野街道と富田林街道が市中で交わる形で、御坊=興正寺別院を中心に、重要文化財に指定された旧杉山家住宅をはじめとする数多くの近世町屋家屋が残存している。これらの伝統的建造物群の重要性については、特に昭和三五年(一九六〇)ごろ以降関心が高まって、建造物に関する調査報告(林野全孝「富田林の町と町家の建築的変遷」など)がなされ、富田林寺内町をまもる会などによる保全運動も起こり(「富田林・寺内町保全構想」)、昭和五〇年には、『富田林寺内町』が富田林市教育委員会によって刊行された。行政の動きも活発となって、その歴史的価値の啓蒙活動の一環として「富田林寺内町地区町並み保全要綱」が策定され、一方で昭和六二年までに重文・旧杉山家住宅の解体修理・復元工事が完成し、寺内町内部の整備が進んだ(図9)。保全運動にかかわらず、寺内町の内外を問わず、改変された建造物も多いが、町割りと数多く残る伝統的建造物が貴重な歴史的景観を伝えている。