今後の都市生活を考える時、我が国の人口の三分の一が住む郊外に、どのような地域構造を構想するかという点は非常に重要な問題である。しかも、これまで都市化は郊外の中心性を低下させ、通勤や買い物など大都市への依存度を高めてきたが、今後は産業の郊外化と高齢化の中で中心都市への依存関係は低下してゆくと考えられる。郊外を豊かで個性的な生活の場とするため、経済活動立地や生活中心の育成が重要なテーマである。このように今後の郊外の地域構造を考察する視点から、事業所の郊外化に伴い、その経済活動や従業者の生活行動が、事業所の立地した地域といかにかかわってゆくのかをここでは検討する。これは、大阪という中心都市の経済圏と郊外都市を中心とする経済圏、そしてまた、これらと郊外住民の生活空間との関係を明らかにする一助となろう。さらに、都市の中小工業には、直接生産に関係する地域的な生産連関をはじめ、諸サービスの連関、従業員の生活行動などの結合がある。このような結合関係は、工場の移転・郊外化によって、どのような形で郊外に植えつけうるのかという点でも、郊外化した事業所の経済活動、生活行動両面からの分析は必要である。これは、旧市街地で土地利用の混在が評価され機能の複合化が求められたように、郊外における機能複合化へのアプローチともなるものである。