従業者の生活行動

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次に、中小企業団地の従業者が企業の移転に伴い、生活面においてどのように富田林地域との結びつきを有するようになったか、上記の調査結果をもとに検討する。表104は回答のあった九八企業二三二一人の従業者について、居住地を見たものである。富田林中小企業団地への進出事業所の従業者(正社員)では、約三割が富田林市内に住むことがわかる。しかも、これは富田林中小企業団地への移転に伴う変化であり、表105に示す移転前における従業者の主要居住地の分布とは大きく異なる。富田林へ移転する以前には、企業所在地の中心であった大阪市や府下東部に居住していた従業者が多かったことがわかる。それが現在は、これら旧居住地と富田林市ならびにその周辺という構成に変化している。

表104 従業者(正社員)の居住地
居住地 (%)
富田林市 29.1
大阪市 9.7
羽曳野市 9.4
八尾・柏原・東大阪市 9.2
松原・藤井寺市 8.4
堺市 8.2
表105 移転前の従業者(正社員)の主要居住地
居住地 (%)
大阪市 31.7
八尾・柏原・東大阪市 17.9
堺市 11.4
富田林市 4.9

 なお、移転に伴う生活面における問題点として、遠距離通勤化も見られる。たとえば守口・寝屋川・枚方など北河内方面からは、五つの企業の五三人が富田林まで通勤しているが、その通勤先の事業所は大阪市内・府下より富田林に移転している。ただし北河内方面から移転した企業は少ない。また、北大阪からは五企業の二九人が通勤するが、これらの企業は大阪市内よりの移転で、もともと大阪市や北大阪に住む従業者が多かった。通勤手段としては、表106のように、四割が自家用車通勤で、次に自転車・バイク、鉄道の順となる。鉄道利用者の便のため、送迎バスを所有・運行していると回答した企業も二一あり、次に扱う移転に伴う通勤対策としても位置づけられている。また、自家用車通動者のための駐車場もかなり整備されているが、全社員分はない(表107)。

表106 従業者の通勤手段
通勤手段 (%)
自家用車 40.1
自転車・バイク 31.0
鉄道 20.7
送迎バス 10.3

注)送迎バスには、鉄道との併用が含まれる。

表107 各事業所の駐車場収容台数
収容台数 (%)
1~9台 32.3
10~19台 33.3
20~39台 13.8
40台以上 5.8
不明 14.7

 上記のように、富田林中小企業団地への移転は、各企業の従業者の生活にとっても大きな変化をしいており、その負担にたいし諸対策が行われている。具体的には、移転に伴う通勤・住宅対策として、通勤への対策が七三件、住宅への対策は二七件の回答があった。その内容は、通勤対策では通勤費増額を六四企業、送迎バス運行を九企業があげている。また、通勤の遠距離化を避けるため、住宅への対策として転居補助が一五企業、社宅・寮の移転が七企業で行われている。その他、居住地を考慮した従業員の移動を行ったという回答も五企業からあり、通勤時間が長くなったので、勤務時間を短縮したという回答も二つの企業から示された。通勤費増額以外は件数が少なく、生活面はまだ重視されているとはいいがたいが、さまざまな方策が出されてはいる。

 郊外への企業移転に伴い展開する経済効果・職住の結合としてパート・アルバイトの雇用がある。これについて見ると、雇用数五人未満の事業所が約七割を占め、二〇人未満の事業所が九割を超える。大量のパート・アルバイトを雇用し生産工程の主力をなしていると思われるのは、食料品製造の事業所であり、ほかに金属や機械製造などの事業所で、パート・アルバイトの社員数が多い。パート・アルバイトで居住地についての回答があった総数は七一六人と多くはないが、そのうち五一二人(七一・五%)が富田林市内居住者であり、富田林という地域内での結合関係を構成する(表108)。通勤手段は、自転車・バイクで通勤する人と徒歩通勤者を合わせると半分を超える(表109)。正社員に比べ短時間の勤務でもあり、市内でも近隣よりの通勤が多いことが確認される。しかし、なかには金剛や藤井寺から送迎バスを運行していると回答した企業もあり、周辺の住宅地との結びつきも見られる。これは、後述の富田林中小企業団地進出の効果として、パートの労働力確保をあげた企業が見られたこととも共通する特徴といえよう。

表108 パート・アルバイトの居住地
居住地 (%)
富田林市 71.5
羽曳野市 9.8
太子・河南町・千早赤阪村 7.0
表109 パート・アルバイトの通勤手段
手段 (%)
自転車・バイク 48.4
自家用車 24.6
鉄道 13.1
送迎バス 9.9
徒歩 7.4