「農林業センサス」は昭和五五年(一九八〇)についてのみハウスでの作物別栽培面積を調査している。この段階では、駒ヶ谷村と磯長村などでブドウのハウス面積を倍増させたが、南河内地方ではブドウの七四八九アールを除いた残りの六四六六アールの七二%までがナスを栽培し、ナスの裏作であるキュウリが一五%、イチゴも同じ割合であった。旧富田林町では八二%、石川村では九二%、白木村では九七%までナスで、ナスに特化し、南河内地方全体の栽培面積の四五%を超える旧富田林町が中核であった。
昭和五五年には、旧富田林町で、露地栽培によるナスの収穫面積は五〇〇アール、販売農家は六〇戸が記録されているが、ハウスでの収穫面積は約二一〇〇アールで、ナス収穫面積合計の八〇%に達する。
大阪府全体のナスの栽培ではハウスが約六五〇〇アールで、ナスの合計栽培面積に占める率は三七%にすぎない。南河内地方では、ハウスのナスは四七〇〇アール、五二%で、ハウスがナスに特化しているのは明らかである。
南河内地方が大阪府全体に占める比率は露地のナスが三八%、ハウスのナスが七二%を超え、露地とハウスを合わせると五〇%以上を栽培するが、とりわけ旧富田林町のハウスでのナス栽培は独占的である。
旧東条村はハウスの比率は高いが全体の規模が小さいために、特に目立つあり方ではない。
ハウスでのナスの栽培は、旧富田林町域の一部と現河南町域、旧赤阪村の限られた範囲内に集中し、特に河南町域で露地栽培では合計一〇〇〇アール、ハウスで一一八四アールのナスを栽培している。旧石川村はハウス栽培の比率が旧富田林町に匹敵する八〇%に達するハウス栽培ナスの特化地域である。ハウス経営農家一戸当たりのハウスでのナス栽培面積は富田林町が約一・二アール、石川村が約一・九アールで富田林町を上まわる。
全ハウス面積に作物が占める比率は南河内地方ではナスが三三%強、ブドウが五四%を占めるが、ナスがハウス作付面積の八二%を占める富田林町のハウスでは、表作としてはナス専作というべきである。裏作としてはキュウリが多い。
旧東条村のハウスではナスは六〇%にとどまり、富田林町では〇であるイチゴが二四%を占めるので、ややタイプが異なるといえる。ハウス内のイチゴは東条村のほかに高向(たこう)村(現河内長野市)と古市町で多い。