生産の分散と集中

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南河内地方における事例市町村ごとの水稲、野菜、果樹の作物類別ごとの耕地面積にたいする作付比率を見ると、この地方の農業の推移について、今まで述べたことが要約されている(表126)。

表126 作物類別の耕地面積にたいする比率の推移

単位:%

水稲 ムギ類
昭和25年 昭和35年 昭和45年 昭和55年 昭和25年 昭和35年 昭和45年 昭和55年
大阪府 77 79 76 64 39 22 2
南河内地方 77 75 68 60 50 33
富田林町 84 85 86 74 55 39 0
東条村 65 66 45 39 36 30 0
長野町 68 65 71 52 44 30 0
駒ケ谷村 42 41 31 27 27 17 0
大草村 35 48 46 41 48 33 0
赤阪村 68 59 44 27 35 33 2
平尾村 74 78 80 63 55 46 0
野菜類 果樹類
昭和25年 昭和35年 昭和45年 昭和55年 昭和25年 昭和35年 昭和45年 昭和55年
大阪府 18 26 19 18 4 8 10 12
南河内地方 13 15 12 11 7 12 18 19
富田林町 10 14 17 15 1 3 3 3
東条村 7 5 4 4 18 30 52 54
長野町 7 9 5 8 7 26 21 25
駒ケ谷村 8 6 16 2 47 58 64 34
大草村 54 84 38 44 0 0 0 3
赤阪村 10 11 4 5 23 36 52 61
平尾村 8 20 5 2 0 1 0 0

注1)各年次『世界農林業センサス』より作成。
 2)表中*マークは皆無、0は0.5未満を示す。

 水稲の比率の昭和四五年(一九七〇)までの不均等な低下と昭和五五年段階の一律の低下、ムギ類の消滅、野菜類の昭和三五年を頂点としたその後の低下と大草村以外では旧富田林町の例外的な高さ、果樹類の一般的な伸張と昭和五五年の駒ヶ谷村での縮小などが注目される。

 南河内地方の旧町村別に、標準偏差によって作物類別の分布の偏りを検討すると、水稲で小さく、果樹類ではもっとも大きい。各類別間の比較を客観的にするために、標準偏差をその集団の平均で除した数値を示す(表127)。

表127 作物類別分布の偏り
昭和25年 昭和35年 昭和45年 昭和55年
水稲 0.27 0.18 0.30 0.29
野菜 0.67 0.86 0.73 0.72
果樹 0.72 1.46 1.23 1.25

注)各年次『世界農林業センサス』より作成(前頁本文参照)。

 この数値が小さければ、その作物群の作付比率に地域の差が小さいことを意味し、どこでも偏り小さく栽培されていることを意味する。逆に大きければ、作付に地域差が大きく、大きい割合で作付する地域とあまりあるいはまったく作付しない地域の差があることを意味する。

 水稲が時代を通じて、どこでも偏りなく栽培されているのにたいし、果樹類は栽培する地域としない地域の対照がはっきりしており、野菜類は両者の中間の集中度を示している。昭和二五年は野菜類、果樹類とも最低の数値であったのが、昭和三五年に最大になっているのは、野菜なり果樹なりを専門的に作付する商業的な農業が一時的に広がったことを意味している。