技術的には、昭和三〇年(一九五五)にはポリエチレンが使われるようになり、ハウスは大型化し、四条畦となった。昭和三五年ごろから竹の骨材がパイプとなり、大型化は作業の姿勢、負担、効率を改善し、固定式は設置、移動の負担、経費を縮小した。固定式ハウスでは、被覆資材がポリエチレンやビニールに、骨格材として鉄パイプが導入された。資材費の削減、労働時間の節約、労働内容の改善が進んだ。
表133によれば、昭和三五年ごろ、加温ハウスでは一ヘクタール当たりの収穫量が無加温ハウスの約一・五倍、ナス一キロ当たりの粗収入が露地の約二・五倍になる。建設資材のほかに、加温設備費だけで一ヘクタール当たり一三万円かかり、燃料費、集約的な労働投入が必要であるから、利潤にこれほど大きな差はない。
種別 | 収穫量 | 金額 | 1ha当たり粗収入との比較 | 1kg当たり粗収入 |
---|---|---|---|---|
kg | 円 | % | 円 | |
加温ハウス | 13931 | 626232 | 405 | 45 |
ハウス | 9076 | 327215 | 212 | 36 |
トンネル | 9417 | 173211 | 112 | 18 |
露地 | 9033 | 154620 | 100 | 17 |
注)『富田林なすの歴史』より作成(筆者加筆)。
昭和三八年ごろ、ナス挿し接ぎ法が連作によるナス半枯病の多発を克服し、固定式の大型ハウスでの加温栽培を可能にした。ナスのハウス栽培では、水田除草剤のナスの肥大促進効果を偶然に発見したことから、独自に開発されたホルモン処理技術を地域内で確立した。また、水田であった場所にハウスを設置するから、土壌洗浄のために湛水させる工夫がなされたり、頻繁な土壌入れ替え=客土などにより固定式ハウス内での連作を可能にしたのである。これらはこの領域での富田林市の技術的先進性を示している。