衰退の原因

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『富田林市誌』は日本製のグラスボールが品質不良で、価格を下げても米国市場でヨーロッパ産との競合に敗れることを懸念している。需要の縮小、乱売によって利益率が低下するという市場環境の問題もあるが、下請け、内職における家族労働のダンピングに依存する体質が製品の質の向上を妨げ、従業者の高齢化、労働力不足、素玉の不足と価格高騰、工賃の上昇などが採算を悪化させていたという。

 工程の機械化や共同化は以上に挙げた衰退の傾向をとどめようとするものであったが、基本的にはプラスチックとの競合も含めてヨーロッパ産の高級品に押されたアメリカでの需要の減退と高度成長期に入った日本の労働市場での他産業への流出による労働力不足が最大の衰退要因であろう。それは産業構造の変化が伝統的な地場産業に壊滅的な影響を与えたものと理解できる。

写真179 ガラス吹き(『わたしたちの富田林市』第5版改訂版より転載)