アジア地域セーフコミュニティ国際会議(平成24年11月28日)アジア地域セーフコミュニティ国際会議(平成24年11月28日)
 前2項で見てきたように、事件・事故や災害はいつ起きるか予測しがたい。だがそれ故に不測の事態に備え、予め様々な対策を講じていくことが被害を最小限に食い止めることにつながる。同様に高齢者や障害者、あるいは子どもたちも含め、すべての区民が健康で安全・安心に暮らしていくために、医療や保健衛生、福祉、教育、さらに環境など各政策分野においても「予防」という観点に立った取り組みが広がっている。特に高度成長から低成長へ、大量生産・大量消費から循環型社会へと時代が遷り、さらに予測を超えて少子高齢化が急速に進展する中で「予防」の意義は益々高まってきている。
 そうした観点に立った取り組みは区においてもそれぞれの政策分野で展開されているが、それら多分野にわたる取り組みをさらに横断的につなぎ、地域の様々な主体と協働して持続可能な安全・安心まちづくりの仕組みを築いていくことがセーフコミュニティ活動である。
 本項では、区制施行80周年にあたる平成24(2012)年にセーフコミュニティの国際認証を取得するまでの取り組み経緯をたどるとともに、さらに認証取得を新たな出発点としてどのような取り組みが展開されていったかをたどっていく。

セーフコミュニティ取組宣言-世界基準の安全・安心まちづくり

 これまでも繰り返し述べてきたように、平成11(1999)年に誕生した高野区政の最大の課題は危機的状況にあった区財政の再建であった。だが行財政改革を強力に推し進めていく一方、そのために都市としての魅力や活力が失われることのないよう、「文化」をまちづくりの中心に据え、文化創造都市づくりを展開してきた。そして区財政の構造改革と区民との協働による文化創造都市づくりの成果が漸く現れてきた平成20年代以降、区は行財政改革プランに替わり区の未来を切り拓いていく未来戦略推進プランを打ち出した。
 この未来戦略推進プランでは豊島区がめざす姿として「文化と品格を誇れる価値あるまち」を掲げ、「文化」「健康」「都市再生」「環境」の4つの政策を重点政策に位置づけ、これらの政策を戦略的に展開することにより新たな価値と活力を生み出し、区民生活の基盤である「福祉」「子育て・教育」「防災・治安」「コミュニティ」等の基本政策を押し上げていく政策展開の好循環が描かれた。そして文化創造都市づくりに続き、平成20(2008)年度を「環境都市づくり元年」に位置づけ、40年後にCO2排出量70%削減を目標とする低炭素社会実現に向けた取り組みや、一人あたり公園面積が23区最小である中でのグリーンとしま再生プロジェクト「いのちの森」の植樹など、日本一の高密都市ならではの挑戦的な政策展開を図っていった。また平成12(2000)年度の介護保険制度開始以来、年々増加し続ける介護保険関連事業経費を抑制するため、介護予防をはじめ認知症対策、がん対策、生活習慣病対策等の「生涯健康都市づくり」を進めていった。
 こうした戦略的な都市政策を展開していくなか、平成22(2010)年度の最重点政策に位置づけられたのが「安全・安心都市づくり」であった。「住みたいまち・訪れたいまち」として選ばれる都市になるためには、暮らし続けたい、訪れてみたいと思われるよう、都市に対する「信頼」を醸成していくことが求められ、その「信頼」の土台になるものこそ「安全・安心」に他ならなかった。このため安全・安心都市づくりは、それまでの文化創造都市づくり、環境都市づくり、生涯健康都市づくり等の取り組みの集大成として防災・治安はもとより、福祉、健康、子育て・教育、コミュニティ等の区民生活を支える諸分野を包括する「安心戦略」の柱に位置づけられた。その安全・安心都市づくりの核となる施策が世界保健機関(WHO)の推奨するセーフコミュニティの国際認証取得で、区制施行80周年にあたる平成24(2012)年の認証取得が目標に掲げられた。区制施行70周年を契機に始まった文化創造都市から80周年の安全安心創造都市へと、周年事業を単なる祝賀行事に止めるのではなく、豊島区の目指す都市像へのステップアップを図る契機にしようとするものであった。
 セーフコミュニティとは、予防に重点を置きつつ、「安全」と「健康」の質を高めるまちづくり活動である。1970年代にスウェーデン西部、人口約 3 万人のファルショッピングというまちで「セーフコミュニティ」のモデルとなる外傷予防の取り組みが始まり、1989年9月にスウェーデンのストックホルムで開催された「第1回世界事故・外傷予防会議」において「セーフコミュニティのためのマニフェスト」がまとめられ、その中で「全ての人は平等に健康と安全の権利を有する」ことが宣言された。この「セーフコミュニティ」という考え方が世界保健機関(WHO)の基本的な方針に合致していたことから、会議を主催したカロリンスカ研究所(医科大学)との協働により同年12月に「WHO地域の安全向上のための協働センター」(以下「WHO協働センター」)が設立された。以後、同センターが主体となり、セーフコミュニティの普及活動が進められるとともに認証制度が開始された。また地域性を活かした取り組みを展開するためアメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの各地域単位に「セーフコミュニティ支援センター」が、さらに認証機関として「セーフコミュニティ認証センター」が設置され、2009年末時点で世界177の都市が認証を受けていた(※1)。
 この認証制度は「けがや事故・暴力などは偶然の結果ではなく、原因を究明することで予防できる」という考え方に基づき、「科学的分析に基づく予防プログラム」と「部門横断的な連携・協働による活動」を組み合わせることで、住民の意識や行動に変化を促し、けがや事故、暴力等の発生を地域全体で抑制しようとする活動を認証する制度であり、認証を受けるにはWHO協働センターが示す以下の6つの指標を具体化する取り組み内容を申請し、セーフコミュニティ認証センターによる審査を受ける必要があった。
【セーフコミュニティ認証のための6つの指標】
  • 1.コミュニティにおいて、安全・安心に関連する垣根を越えた組織が設置され、それらの協働のための施設がある
  • 2.全ての性別、年齢、環境、状況をカバーする長期にわたる継続的なプログラムを実施する
  • 3.子どもや高齢者など、ハイリスクグループに焦点を当てたプログラムを実施する
  • 4.傷害が発生する頻度とその原因を記録するプログラムがある
  • 5.プログラム、プロセス、そして変化による影響をアセスメントするための評価基準がある
  • 6.国内及び国際的なセーフコミュニティネットワークへ継続的に参加する
 これらの指標からも分かるとおり、認証の基準となるのは活動の成果ではなく、活動を継続的に展開していくためのプログラムや組織が整えられているかどうかであった。またこの認証は永続的なものではなく、その後の取り組み状況を検証し、5年ごとに再認証の手続きが必要とされた。このため区は区制施行80周年記念としてこの国際基準の認証取得をひとつの到達点に定めるとともに、それを契機として地域との協働による安全・安心まちづくりの持続可能な仕組みを築いていくことをめざしたのである。
 平成22(2010)年2月22日、区は町会や商店街、防犯・安全活動団体、福祉関係団体、PTA・青少年育成団体等の各地域活動団体代表者ら100名とともに「セーフコミュニティ取組宣言」を行った。またその場で認証取得に向け「オールとしま」で取り組んでいくこと、そのための組織として「セーフコミュニティ推進協議会」を設置することが確認された(※2)。
 取組宣言全文を以下に記す。
【豊島区セーフコミュニティ取組宣言】
豊島区は「セーフコミュニティ」の認証取得に取り組みます
豊島区では、町会やボランティア団体等による地域の見守り、繁華街の治安対策、学校の安全対策、交通安全、さらには介護予防や生活習慣病予防など、住民による活発な地域活動が展開され、暮らしの安全と健康を守ってきました。
「セーフコミュニティ」は、「けがや事故等は偶然の結果ではなく、予防できる」との理念のもと、科学的な原因究明に基づき、部門横断的な連携・協働を広げながら地域社会の安全の質を向上させる世界基準のまちづくりであり、まさに豊島区が目指す姿であります。
急速に高齢化が進むなか、けがや事故、犯罪や暴力、自殺、虐待など、乳幼児から高齢者に至るまで、安全と健康をコミュニティの力で守る仕組みを根付かせ、次の世代に引き継いでいくことは、区民共通の願いです。
豊島区は、2012年に区制施行80周年を迎えます。
これまで10年間のまちづくりの集大成として、その節目の年に向けて、日本一の高密都市ならではの“安全文化”の姿をつくりあげるため、WHO(世界保健機関)セーフコミュニティ協働センターが提唱する「セーフコミュニティ」の認証取得に取り組むことを、ここに宣言します。
 この宣言文冒頭にもある通り、それまでも繁華街池袋周辺での環境浄化活動をはじめ、区内各地での防犯パトロールや落書き消去活動、防災訓練、交通安全運動など様々な安全・安心活動が地域の中で展開されてきた。そうした活動の積み重ねにより、区内の刑法犯認知件数や交通事故発生件数はこの10年間で着実に減少していた。だがその一方で、高齢者や子どもの事故の多様化、虐待やDV、自殺等の増加、感染症対策、さらには社会的なモラルの低下など、暮らしの安全・安心をめぐる課題は複雑化していた。平成19(2007)年8月に実施した18歳以上の区民5,000人を対象とする意識調査では、「区政の中で特に力を入れて欲しいこと」の設問(複数回答)に対し、高齢者福祉の充実(45.5%)に次いで治安対策(43.0%)、モラル低下等による迷惑行為の防止(37.9%)、防災対策(34.9%)等の安全・安心対策が依然として上位に挙げられていた。また「地域活動の中で重要と思うもの」の設問に対しても防犯パトロールや環境浄化活動(69.2%)が最も多く、防災訓練や災害時の弱者対策(51.9%)、交通安全運動や放置自転車対策(43.5%)が上位に挙げられる一方、そうした地域活動への参加は「たまに参加したことがある」(20.6%)を含めても実際に参加している人は3割に満たず、問題意識や参加意欲はあっても実際の参加につながっていない現状が見られた(※3)。
 こうした状況に対し、セーフコミュニティはそれまで展開されてきた様々な安全・安心活動を活かしつつ、さらに工夫を加えて効果を高めていくとともに、多様化・複雑化する課題への横断的な連携を生み出し、さらに人々の地域活動への参加を広げていくことによりコミュニティの絆を再生していく活動と言えた。
 だが全国1位の高密都市である上に、人口流動性も年間2万人以上が転出入で入れ替わる高さで、さらに単独世帯が全世帯の6割を占め、コミュニティの希薄化が懸念される豊島区のような都市にとって、セーフコミュニティの国際基準を満たすことは容易なことではなかった。平成22(2010)年区議会第1回定例会の開会にあたり、区長も所信表明の中で認証取得に向けた決意を次のように述べている(※4)。
-これまでも様々な取り組みを行ってきましたが、個別の事象に対策を講じるだけでは限界があると考えております。そのためには、安全・安心都市づくりに係る様々な施策を、部局を超えて横断的に編成して、これまでの集大成としての安全・安心都市を実現してまいりたいと考えております。認証基準に合致するためには、すべての施策を安全・安心の視点で見つめ直し、施策相互間の効果的融合を図るばかりでなく、何よりも区民の皆さん、区内のあらゆる主体と緊密な連携をとりながら、セーフコミュニティの実現に向けた体制を構築する必要があります。地域コミュニティの活性化が課題となる中、WHOの定める基準に達することは大きなハードルであることは間違いありません。しかし、地域の絆、地域の力を回復するとともに、区が安全で安心して暮らし訪れることができる街であることを内外にアピールするため、セーフコミュニティの認証取得に取り組んでまいります。
 取組宣言後、区は「オールとしま」の推進体制づくりに向けて各地域活動団体をはじめ、区内企業や大学、警察・消防等の関係機関に働きかけるとともに、この新たな取り組みを区広報紙やホームページを通じ、広く区民に周知していった。また平成22(2010)年度当初予算に新規事業としてセーフコミュニティ認証取得事業約940万円を計上し、同年度の組織改正で秘書課を区長室に改組し、区長直属の組織として「セーフコミュニティ担当課長」(23年度「セーフコミュニティ推進室」に改組)を新設した(※5)。
 平成22(2010)年3 月 11日、区の取組宣言を受け、WHO協働センターは豊島区をセーフコミュニティ認証準備段階都市として正式に登録した。国内では20(2008)年3月に京都府亀岡市、翌21(2009)年8月に青森県十和田市がそれぞれ認証を取得し、神奈川県厚木市や長野県箕輪町も既に認証準備段階都市として取り組みを開始していたが、都内では豊島区が初の登録となった(※6)。
 こうして、セーフコミュニティの国際認証に向けた挑戦は第一歩を踏み出したのである。
セーフコミュニティ取組宣言

認証取得に向けた体制づくり-「オールとしま」方式の推進協議会

 平成22(2010)年5月20日、認証のための【指標1】「安全・安心に関連する垣根を越えた組織」にあたる「セーフコミュニティ推進協議会」(以下「推進協議会」)の第1回会議が開催された。
 区長自らが会長に就き、防犯・防災・交通安全等関係団体をはじめ、町会連合会、区民ひろば運営協議会、商工関係団体、福祉・医療・保健関係団体、PTA・青少年育成関係団体、としまNPO推進協議会、区内6大学等の区内76団体の各代表及び公募区民の80名の区民委員に、警察・消防等区内官公庁代表9名及び区長を含めた区職員19名(部長級職員)を加えた延べ108名の委員で構成された。なおこれら委員は、平成12(2000)年の生活安全条例施行に伴い設置された生活安全協議会の委員に、より広範な安全・安心に関する関係団体代表を加えて選出されたものであり、この日の推進協議会も生活安全協議会との合同開催という形が取られた。第1回会議の開催にあたり区長は「100人委員会ともいえるこの協議会がこれからのセーフコミュニティ活動の推進母体となることを期待する。本日お集まりの皆さんが、それぞれの立場から、セーフコミュニティを日頃の活動に取り入れていってほしい」と述べ、「オールとしま」での取り組みを求めた。
 またこれら委員のほか、安全・安心まちづくりやセーフコミュニティ活動について助言する役割を担う専門委員として、衞藤隆氏(日本医師会学校保健委員会委員長・日本健康教育学会理事長・社団法人日本小児保健協会会長・日本セーフティプロモーション学会理事長)、石附弘氏(財団法人国際交通安全学会専務理事・警察政策学会理事・日本セーフティプロモーション理事)、白石陽子氏(アジア・セーフコミュニティ認証センター公認コーディネーター)の3名が選任された。第1回に続く7月27日の第2回推進協議会では、これら3名の専門委員と認証取得を目前とする厚木市の担当者を招き、セーフコミュニティ活動の現状や経緯を聴く学習会形式で開催された(※7)。
 一方、区はこの推進協議会の設置に先立ち、平成22(2010)年2月に庁内推進組織として区長を本部長とする「セーフコミュニティ推進本部」を立ち上げた。そして区の主催事業のほか、他官公庁や民間団体との共催事業、さらに他官公庁及び民間団体それぞれの主催事業も含め、既に取り組まれているセーフコミュニティに関する活動・事業について全庁調査を実施した。これは認証のための6つの指標の【指標2】「全ての性別、年齢、環境、状況をカバーする長期にわたる継続的なプログラム」に該当するもので、既存の取り組みを活かしつつ、さらに効果的な展開を図っていこうとするものであった。この調査により抽出された347件の事業は13の分野別にまとめられ、その内訳は犯罪暴力の予防122件(21.4%)が最も多く、次いで子どもの安全97件(17.0%)、家庭内の安全94件(16.5%)、高齢者の安全69件(12.1%)など身近な暮らしの中の取り組みが上位に挙がっていた。また分野別集計の合計件数は571件にのぼり、多くの事業が複数の分野にまたがっていることからも分野横断的な連携の必要性が窺えた(※8)。
 また【指標6】の「国内及び国際的なセーフコミュニティネットワークへ継続的に参加する」ことの一環として、3月23~26日の4日間、韓国水原市で開催された第19回世界セーフコミュニティ会議に職員2名を派遣した。さらに職員研修として、セーフコミュニティに関するテーマを選び、部ごとに編成されたチームでポスターを作成するポスターセッションを実施し、セーフコミュニティの考え方を職員の中に浸透させていった(※9)。
 こうして認証取得に向けた体制づくりや継続的なプログラムの抽出を経て、区は次の段階として【指標3】の「子どもや高齢者など、ハイリスクグループに焦点を当てたプログラム」を構成する重点課題の検討に着手した。まずは事故やけが等の発生状況に関する統計データ等の分析や、子ども・高齢者など対象別の区民アンケート調査を実施し、その「地域診断」結果に基づいて重点課題を絞り込んでいった。分析・調査の概要及び主な結果を以下に概略する(※10)。
  • 1. 不慮の事故・自殺のデータ分析(人口動態統計)
  • ・平成17~21(2005~2009)年の5年間の不慮の事故による区内死亡者、自殺者ともに年平均60人前後で、人口10万人あたりの不慮の事故による死亡者数は全国平均よりも低い水準で推移している一方、都平均より高く、自殺による死亡者数は年によって変動が見られるものの総じて全国・都の平均を上回って増加傾向にある。
  • ・不慮の事故による死亡の原因別では転倒・転落が最も多く、次いで溺死、窒息となっており、高齢になるほど死亡数が増加している
  • ・自殺による死亡の年齢別では20歳代後半~30歳代前半と50歳代後半にピークが見られ、20歳代前半を除きいずれの年代でも女性より男性の方が多い
  • ・疾病も含めた年齢別死因順位の1位は15~39歳で自殺であるのに対し、40~89歳は悪性新生物(がん)、90歳以上は心疾患で疾病による死亡割合が高くなっている
  • 2. 救急搬送・犯罪・交通事故に関するデータ分析(救急搬送データ・警察統計)
  • ・平成20(2008)年中の豊島・池袋各消防署管内救急搬送人数16,054人のうち外傷 によるものは4,724人。うち2,851人が一般負傷で最も多く、交通事故1,201人、加害278人と続く。人口1万人あたりの年代別発生率では高齢者や乳幼児が比較的高く、特に高齢者は転倒によるけがの割合が高く、年齢があがるにつれ重症化する傾向が見られる
  • ・区内刑法犯認知件数は平成15(2003)年度の11,589件をピークに減少に転じ、21(2009)年度には約3割減の7,855件にまで減っているが、人口10万人あたりの件数では都・全国平均を依然として上回っており、地区別では東池袋・西池袋・南池袋の池袋駅周辺繁華街に集中している(全体の46%)
  • ・区内交通事故発生件数も平成13(2001)年度の1,885件をピークに減少に転じ、21(2009)年度には958件とほぼ半減しているが、救急搬送に至った事故はほとんどの年齢層で自転車乗車中の事故で、その割合が高まっている
  • 3. 公共施設における事故・けがに関するデータ 分析
  • ・区庁舎ほか文化施設、生涯学習施設、体育施設、小中学校、保育園等の区施設で19~21(2007~2009)年度の3年間に発生した事故・けがを調査
  • ・3年間の事故発生総件数は1,216件にのぼり、うち572件が保育園、次いで児童館・子どもスキップ232件、小中学校130件と子ども関連施設が上位を占めている
  • ・保育園でのけがの部位別では顔や歯、目など頭部のけがが7割以上を占めている
  • 4. 区民アンケート調査
  • ① 区民意識調査
  • ・22(2010)年6月実施の「協働のまちづくりに関する区民意識調査」の中でけがや事故の経験等について設問、調査対象:無作為抽出による18歳以上の区民 5,000人、有効回答2,040人(回答率40.8%)
  • ・過去1年間にけがによる入院は1.8%、通院は9.2%で計11%(約9人に1人)、70歳以上ではその割合が14.1%(約7人に1人)と高くなっている
  • ・けがにまでは至らなかったヒヤリ体験は13.5%にのぼり、1 人の死亡に対し入院は約 70 倍、通院は約 350 倍、その背景には約 500 倍もの「ヒヤリ体験」があることが推計される
  • ② 高齢者のけが・事故
  • ・22(2010)年5月~23(2011)年2月に「一人暮らし高齢者等実態調査」に合わせてアンケート調査票を配布、調査対象:65歳以上の一人暮らし高齢者世帯及び高齢者のみ世帯35,303人、有効回答12,108人(回答率34.3%)
  • ・6人に1人(17.1%)が1年以内に自宅内で転倒し、そのうち10人中7人がねんざ・打撲(30.8%)、すり傷・切り傷(23.5%)、骨折・ひび(18.8%)等のけがを負っており、転倒場所は居間(25%)が最も多く、次いで階段(15.7%)、寝室(14.1%)となっている。
  • ・外出中のけがは14人に1人と自宅内より少ないが、半数以上が歩行中の事故によるもので、その原因は「穴、凸凹、傾斜」(24%)、「階段・段差」(22.8%)、「自転車との接触」(17.3%)となっている。
  • ③ 子どものけが・事故
  • ・22(2010)年12月実施、調査対象:区立保育園児2,367人の保護者、有効回答1,773人(回答率74.9%)/区立小学校2・4・6年生2,057人の保護者、有効回答1,165人(56.6%)/区立中学校2年生徒895人、有効回答379人(42.3%)
  • ・保育園児の 10.3%が保育園以外の場所で入院・通院を要するけがをしており、発生場所は住宅内(58.6%)、原因は転倒・転落(48.5%)が最も多い
  • ・入院・通院を要するけがの経験は小学生で15%、中学生は16.5%で発生場所はいずれも学校が最も多く、次にスポーツ関連施設となっている
  • ④ 障害者のけが・事故
  • ・22(2010)年11~12月実施、調査対象:身体障害者 2,000 人、有効回答 1,017人(回答率50.8%)/知的障害者 500 人、有効回答 279人(55.8%)/精神障害者 500 人、有効回答 167人(33.4%)/難病患者 723 人、有効回答 444 人(61.4%)
  • ・障害者のけがの経験率は18歳以上の区民平均11.0%よりも高くなっており、特に視覚障害者は34.9%と一般区民の 3 倍になる
  • 5.その他のデータ分析
  • ・65歳以上の一人暮らし高齢者の孤独死(自宅における不自然死)は10(1998)年の48人から21(2009)年には89人へと倍近く増加しており、人口10万人あたりの死亡者数は都平均を上回っている
  • ・高齢者の虐待相談件数:18(2006)年度319件から21(2009)年度795件と3年間で約2.5倍増
  • ・児童虐待の相談・通告件数:13(2001)年度121件から21(2009)年度560件と8年間で約4.6倍増
  • ・DV 相談件数:18(2006)年度43件から22(2010)年度180件と5 年間で 4.2 倍増
  • ・がん検診受診率:20(2008)年度の胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮がんの受診率の平均は5.4%で23区平均11.6%・全国平均15.6%を大きく下回る
  • ・地震災害による被害想定:マグニチュード 7クラスの大地震が発生した際の被害は死者 77人、負傷者 4,602 人が想定され、死因については23 区全体と比べ建物被害や落下・ブロック塀の影響が大きく、地震火災による影響は小さいと想定される

※7 豊島区セーフコミュニティ推進協議会設置要綱
生活安全協議会・セーフコミュニティ推進協議会委員名簿(第1回セーフコミュニティ推進協議会資料)
生活安全協議会との合同開催について(H220426第3回セーフコミュニティ推進本部資料)
WHO(世界保健機関)によるセーフコミュニティの認証取得に向けて(H220520第1回セーフコミュニティ推進協議会資料)
H220520プレスリリース
H220727プレスリリース
具体事例に学ぶセーフコミュニティ(H220727第2回セーフコミュニティ推進協議会資料)

※8 セーフコミュニティ推進本部の設置について(H220218第1回セーフコミュニティ推進本部資料)
セーフコミュニティに関する全庁調査結果(H220520第1回セーフコミュニティ推進協議会資料)

※9 第19回セーフコミュニティ世界会議への参加について(H220318第2回セーフコミュニティ推進本部資料)
豊島区セーフコミュニティポスターセッション2010(H220727第2回セーフコミュニティ推進協議会資料)

※10 けが・事故等に関する調査の実施状況について(H220318第2回セーフコミュニティ推進本部資料)
セーフコミュニティデータ集【暫定版】(H220520第1回セーフコミュニティ推進協議会資料)
セーフコミュニティ認証に向けた基本方針(平成22年11月)

 これらの調査結果からは、全国的な傾向に重なるものも少なくないが、他都市に比べ高齢者の不慮の事故による死亡率や孤独死の割合が高いこと、交通事故の発生件数が減少している一方で自転車による事故の割合が高いこと、15~39歳の死因の第1位が自殺であり、また区民全体の自殺率も全国や都の平均を上回っていることなど、豊島区ならではの特徴が散見された。こうした地域診断を踏まえ、平成22(2010)年11月16日に開催された第3回推進協議会において10の重点テーマが決定されるとともに、「セーフコミュニティ認証に向けた基本方針」が取りまとめられた。
 この基本方針の核をなすのは認証のための6つの指標ごとに設定した取り組み方針であり、また取り組みを推進していくための組織体制を整えたことである。図表3-⑭はその取り組み方針を一覧化し、組織体制を図式化したものであるが、表中の【指標3】にあるように、地域診断を踏まえて設定された10の重点テーマごとに分野横断的な対策委員会を設置し、認証取得に向けた予防活動が開始されることになった(※11)。
図表3-14 セーフコミュニティ基本方針―6つの指標と取り組み方針
 このうち重点テーマ⑤の「学校の安全」については、朋有小学校をモデル校としてインターナショナルセーフスクール(以下「セーフスクール」)の国際認証取得をめざすことになった。このセーフスクールもWHO協働センターが推奨する学校に特化した認証制度で、認証を得る基準として以下の7つの指標が示されていた。国内では平成22(2010)年3月に大阪教育大学附属池田小学校、同年11月に厚木市立清水小学校が認証を取得しており、朋有小学校は全国で3番目の挑戦となるものであった。
【セーフスクール認証のための7つの指標】
  • 1.教師、生徒・学生、事務・技術スタッフ・保護者の協働を基盤に、安全・安心に関連する垣根を越えた組織が設置され、それらの協働のための施設がある
  • 2.セーフスクールの政策は、上記のセーフスクール推進組織と「セーフコミュニティ」に基づいた地域の推進協議会によって決定される
  • 3.長期かつ継続的に運営されるプログラムによって、両性・すべての年齢(学年)、環境、状況がカバーされている
  • 4.ハイリスクのグループ・環境および弱者グループを対象としたプログラムがある
  • 5.事故・暴力や自傷などによる外傷の原因の頻度・原因を記録するプログラムがある
  • 6.学校政策、プログラム、そのプロセス、変化による効果を評価する方法がある
  • 7.地域、国内・国際的なネットワークに継続的に参加する
 なおこの時点では重点テーマのひとつに「がんの早期発見」が挙げられているが、その背景にはがんの早期発見・早期治療により生存率が上がってきているにもかかわらず、区のがん検診受診率は5.24%と極めて低く、がんが死亡原因の30.8%、ほぼ3人に1人ががんで死亡している現状が見られた。このため区は「がん対策」を最重要課題に位置づけ、平成22(2010)年12月に「がん対策推進条例」を制定、翌23年3月には「がん対策推進計画」を策定し、がん検診の受診勧奨や受動喫煙対策等の施策を強力に推し進めていた(※12)。だがセーフコミュニティはけがや事故の予防を主な対象とすることから、基本方針策定後、「がんの早期発見」はセーフコミュニティの付加的なテーマとされ、また23(2011)年7月には「ドメスティック・バイオレンス(DV)の防止」が新たに重点テーマに加えられ、DVの防止対策委員会がスタートしている。その他のテーマ名についても、「一人暮らし高齢者の見守り」は「高齢者の安全」に、「子どものけが予防」は「子どものけが・事故予防」へとより包括的な名称に変更されている。
 またセーフコミュニティ認証のための【指標4】「傷害が発生する頻度とその原因を記録するプログラムがある」の取り組み方針として、平成22(2010)年度に実施した事故・けが等の分析・調査について23(2011)年度以降も継続的に収集していくこととし、これらのデータ・調査を分析するための「外傷サーベイランス委員会」が設置された。この委員会は保健所長・推進協議会専門委員・豊島区医師会・消防署・政策経営部長で構成され、科学的なデータ分析に基づき対策委員会に対して技術的な助言・指導を行うとともに、【指標5】「プログラム、プロセス、そして変化による影響をアセスメントするための評価基準がある」の評価システムについても検討していくことになった(※13)。
 さらに区は、子どもから高齢者まで誰もが利用でき、世代間交流の場となっている「地域区民ひろば」をセーフコミュニティの地域拠点(SCステーション)に位置づけた。平成22(2010)年度当時、区民ひろばは18小学校区(22施設)で展開されていたが、年間1万件以上の事業が実施され、利用者数は延べ65万人を超えていた。警察署による親子のための交通安全教室や民生委員による子育てサロン、保健所による出張育児相談、高齢者のための元気体操や介護予防講座、地域活動団体の連携による見守り地区連絡会など、既に安全・安心の横断的な取り組みが行われており、また地域住民らで組織される運営協議会による自主運営化も進められていた。地域コミュニティの新たな核となる区民ひろばを区民とセーフコミュニティの接点として活用し、セーフコミュニティに関する情報を提供していくとともに各重点テーマに関する実践的なプロモーション活動を展開し、区民の幅広い参加を促していこうとの狙いであった。また身近な生活圏や地域レベルでの課題を分析し、地域密着型の活動を展開していくため北池袋地区をモデル地区に指定し、同地区に試行的に設置されていた「北池袋モデル地域協議会」を地区レベルでの推進協議会に位置づけ、地図情報システム(GIS)を活用した安全・安心カルテづくり等に取り組んでいった(※14)。
 こうして基本方針の策定以降、翌平成23(2011)年6月に予定されるセーフコミュニティ認証センターからの審査員派遣(事前審査)、同年末の認証申請書の提出、さらに24(2012)年1月の現地審査(本審査)をそれぞれ活動のマイルストーンに定め、セーフコミュニティ活動を本格化させていった。また「みんなでつくるセーフコミュニティとしま」をキャッチフレーズに区広報紙にシリーズ記事を掲載するほか、22(2010)年6月3日に帝京平成大学との共催により「セーフコミュニティ」をテーマとする「としまコミュニティ大学」公開講座を開催、さらに10月7日には「地域安全運動豊島区民大会」を開催し、認証取得に向けた機運を醸成していった(※15)。
 またこの基本方針の中で、区はセーフコミュニティに取り組む意義として「高密都市だからこそ重要な『安全』と『コミュニティ』」、「豊かな地域力に支えられた『安心』を高める」、「世界基準で評価することで改善につなげる」、「まちのイメージアップにつなげる」、「医療・介護等の費用削減につなげる」の5項目を挙げているが、こうしたセーフコミュニティ活動に国も関心を寄せるようになっていた。平成22(2010)年度版の「厚生白書」の中で全国の死因5位に挙がる「不慮の事故」について、一定の配慮があれば防ぎえたものも多いと思われるとし、セーフコミュニティの可能性について言及している。以下にその一部を引用する。
-「セーフコミュニティ」の認証を受けることが、「絶対的な安全・安心」を認証されるものではない。むしろ「部門横断的な取組み」「住民参加」「科学的な評価」等のしくみづくりができていることを認証するものであり、認証を受けて初めてスタートするものと言える。 認証を受けていくプロセスで形成された様々な活動や官民で共有される地域社会への意識は、地域に取り貴重な無形の財産になる。それを大切にし、認証を受けた後で継続的に活かしていくことで、すべての人々にとって暮らしやすい街づくりにつながっていく。こうした動きは、同様な地域における面的な取組みを指向した、援護や支援が必要な様々な人々を対象とした施策とも共鳴するものであり、人口構造の変化や様々な社会経済動向の変化の中で、我が国が活力ある未来を築くのに必要な様々なヒントを提起していると思われる。
 この厚生白書でも述べられている通り、豊島区がセーフコミュニティの認証取得に取り組むことは、それまでの認証都市の取り組みを継承しつつも、新たな都市型モデルを提起することと言え、また日本一の高密都市だからこその日本一安全・安心なまちづくりへの挑戦を国内外に発信していくことでもあった。
第1回「セーフコミュニティ推進協議会」
みんなでつくるセーフコミュニティ「地域安全運動豊島区民大会2010」

認証取得に向けた取り組み-対策委員会と区民ひろば

 10の重点テーマごとに設置された各対策委員会は、まず平成23(2011)年6月のセーフコミュニティ認証センターによる事前審査での中間報告を目標に、予防プログラム等の検討をスタートさせた。
 この事前審査は認証取得に向けた2年がかりの取り組みのちょうど折り返し点にあたり、また海外からの審査委員が初めて区の活動を見る機会であり、そこでの評価が認証取得の可否を大きく左右することになることから、各対策委員会はほぼ毎月のように開催され、精力的な話し合いが重ねられた。また審査では特に継続的かつ科学的な手法が活用されているか、コミュニティを主体とする横断的な連携・協働の仕組みづくりがなされているかが問われるため、対策委員会のメンバーは住民組織・事業者・行政機関の各分野から幅広く選出された。さらに推進協議会の専門委員として前述した3名に加え、新たに市川政雄氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)を迎え、対策委員会への支援を求めた(※16)。
 図表3-⑮は各対策委員会の委員構成及び平成22~23(2010~2011)年度中の委員会開催状況等及び優先的に取り組むとされた予防対象をまとめたものである。ここに挙げられた予防対象は既に取り組まれていることが少なくなかったが、認証を取得するためには様々なデータ分析に基づき、より効果的な対策を講じていく必要があった。このため対策委員会での検討に並行し、23(2011)年度からそれまでの対策の見直しや新たな予防活動が展開された。
図表3-15 対策委員会の委員構成・開催状況等
 上記表中で優先的に取り組むとされた予防対象に関する活動が平成23(2011)年度以降、各対策委員会を中心にどのように展開されたかを、それまでの取り組み経緯も含め、以下、課題別に概略する(※17)。

○子どものけが・事故予防
 家庭内の子どものけが・事故の予防対策として、区は平成8(1996)年、池袋保健所内に全国初の子ども事故予防センター「Kidsafe」(キッズセーフ)を開設し、10(1998)年に同保健所が移転リニューアルした際には乳幼児が家庭内でどのような事故にあうかを具体的に見て学べるよう、玄関・居間・キッチン・浴室等を備えたモデルルームを設置した。以後、この施設を拠点に様々な啓発活動が実施されてきた(※18)。
 だが平成22(2010)年12月に実施した子どものけが・事故アンケート調査では、保育園児の 10.3%が保育園以外の場所で医療機関にかかるようなけがや事故を経験しており、その発生場所は住宅内が58.6%と約6割を占め、原因は転倒・転落の48.5%が最も多く、次いでやけど18.6%、挟まれ・接触・衝突が18.6%となっていた。その一方、お風呂の残り湯をしない、引き出しにストッパーを付ける、ベッドの柵は必ず上げる、階段や段差に柵を設置する等の家庭内での予防策についての実施率はいずれも5割に満たなかったが、そうした中でも子ども事故予防センターで情報を得たことがある保護者の方が情報を得たことがない保護者より実施率は高かった。また保育園や放課後施設でのけが・事故は横ばい状態が続いており、けがの部位別では顔面の受傷率70.8%が他の部位に比べて高く、受傷原因は子ども本人の行為によるものが56.6%を占めていた。
 これらのデータに基づき、子どものけが・事故予防対策委員会は子ども施設、特に保育園でのけが・事故とともに、家庭内での乳幼児のけが・事故を優先的な予防対象に位置づけ、その取り組みとして母子手帳サイズの啓発資料を作成し、乳幼児健診や区民ひろばで配布するほか、区ホームページに順路に沿って「Kidsafe」の施設見学を疑似体験できるページを掲載するなど、保護者等向け安全教育の啓発強化を図った。また子育て支援に関する知識や技術の習得機会を提供する「地域の子育て支援人材育成事業」を平成24(2012)年度から開始するにあたり、23(2011)年度には既に「子育てサロン」など地域で活動する民生・児童委員を対象に事前勉強会を開催した(※19)。
 一方、保育園等の子ども施設でのけが・事故の予防策としては、私立保育園も含めた区内全保育園でWHOの外傷サーベイランスガイドラインに準拠した統一フォーマットにより子どものけが・事故の発生状況を継続的に調査していくとともに、各施設職員による安全点検に基づき危険箇所等の修繕を順次行っていった。また子どもたちへの安全教育を進めていくため、対策委員会からの提案を受けて平成24(2012)年度に子どもたちの筋力や反射神経を高めて、転倒などによるけがを自ら防ぐ力を自然に養うセーフコミュニティダンス「あしたスキップ」を開発し、それをDVDにして各施設での普及を図っていった。この区独自のダンスは現在も保育園等で踊り継がれている(※20)。
Kidsafe「子どもの事故予防センター」
セーフコミュニティダンス「あしたスキップ」DVD
○高齢者の安全(一人暮らし高齢者の見守り対策委員会)
 不慮の事故による65歳以上高齢者の死亡原因の第1位は転倒であり、平成22年(2010)の救急搬送データでは高齢者の転倒による搬送件数は974件にのぼり、うち600件が室内での転倒であった。また22(2010)年度に実施した高齢者のけが・事故に関するアンケート調査でも高齢者の6人に1人が自宅内で転倒し、そのうち10人中7人がけがを負っている実態が明らかになった。その原因には加齢による身体機能の低下や住宅改修・バリアフリー化が遅れていることが挙げられた。一方、高齢者の虐待に関する相談件数は18(2006)年度の319件から22(2012)年度の1,232件へと過去5年間で約4倍も増加しており、そのうち9割の被虐待者に認知症の症状が認められた。また一人暮らし高齢者の孤独死も12(2000)年の50人から21(2009)年の89人へと年々増加傾向にあった。
 こうしたデータに基づき、一人暮らし高齢者の見守り対策委員会では「高齢者の転倒」と「高齢者の虐待」を優先的に取り組む予防対象とし、体育施設や区民ひろば等で転倒予防のためのプログラム「う~んと運動」を実施するとともに、住宅内で転倒リスクの高い場所等を洗い出し、高齢者自立支援住宅改修助成を活用し、手すりの設置や段差解消等のバリアフリー化を進めていった。またこうした取り組みを周知するため、平成24(2012)年度に「家庭内の転倒予防のしおり」を作成し、区民ひろば等で配布した(※21)。
 一方、高齢者の虐待の早期発見・早期解決につなげていくため、地域での見守り体制を強化するとともに、高齢者の虐待や認知症に対する理解を広げる取り組みを展開していった。区はそれまでも一人暮らし高齢者の見守り対策として、75歳以上の一人暮らし高齢者世帯等を地域の協力員が緩やかに見守る「見守りと支えあいのネットワーク事業」をはじめ、慢性疾患等の持病を抱える高齢者宅に消防庁への専用通報機器を設置する「緊急通報システム事業」や週3回の昼食弁当配布時に安否確認を併せて行う「配食サービス事業」を実施していた。平成23(2011)年度はこれら事業を拡充し、利用対象を65歳以上へと引き下げ利用要件を緩和したほか、配食サービスの利用回数増などが図られた(※22)。
 また平成22(2010)年度から65 歳以上の一人暮らし高齢者世帯等を対象とする実態調査を実施し、そのうち75歳以上の世帯については地域を担当する民生・児童委員が訪問調査を行い、支援の必要性や虐待、認知症の有無などを把握し、ハイリスク高齢者を地域包括支援センターにつなげる「一人暮らし高齢者等実態調査及びアウトリーチ事業」が開始された。この事業についても23(2011)年度にアウトリーチ事業を担当する専門職員を増員するとともに、暑い時期に職員が戸別訪問する場合などには、熱中症予防パンフレット等を配布して注意喚起を実施するようになり、24(2012)年度からは広報誌や区からのお知らせ等を配付するなかでも声かけを行うなど、コミュニケーションをとりながら安否の確認を行う「見守り訪問事業」も開始された。また地域の中で「新たな支え合い」の仕組みづくりを進めていくため、21(2019)年度からモデル事業としてコミュニティソーシャルワーカーの配置が開始され、23(2011)年度から本格実施に移行、翌24(2012)年度には地域包括支援センター3圏域の区民ひろばに各2名が配置され、以後、配置圏域の拡大が順次図られていった。さらにセーフコミュニティのモデル地区である池袋本町地区でNPO法人街づくりネットワークによる「高齢者等を対象とした買い物および日常生活支援」と「高齢者交流サロンの設置・運営」が24(2012)年2月から開始され、区はその立ち上げを支援するなど、地域主体の取り組みを後押ししていった(※23)。
 また認知症予防の取り組みについては、平成12(2000)年度から長崎地区で「痴呆にならない健康なまちづくり」モデル事業が開始され、余暇活動が認知症予防に効果的であることを検証する先駆的な取り組みが行われた。このモデル事業参加者らを中心に翌13(2001)年11月、「元気!ながさきの会」が設立され、同会代表が対策委員会のメンバーであったことから、同会を中心に余暇活動の一つとして太極拳等の運動プログラムが区民ひろば等で展開された。また平成12(2000)年4月の介護保険制度開始に伴い、介護予防や自立生活支援の取り組みを開始し、介護予防事業の一環として認知症予防教室や認知症サポーター養成講座等を実施してきた。さらに24(2012)年度に認知症の高齢者等の家族を対象とする介護力の向上や負担の軽減、また一般区民を対象として認知症に対する理解や関心を深めることを目的に認知症介護者等支援事業を拡充、26(2014)年度には認知症の早期診断・早期対応を総合的に支援するための認知症コーディネーターを配置するなど取り組みを進め、翌27年1月に策定された国の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に対応しつつ、豊島区版の認知症戦略を展開していった(※24)。
 また区は従来の敬老入浴事業を拡大し、平成23(2011)年12月22日の冬至の日に区内公衆浴場で全区民を対象とする無料の「ゆず湯」を実施した。これは廃業により年々減少し続ける公衆浴場の経営を支援するとともに、かつては地域の社交場であった銭湯で昔ながらの生活文化を継承し、さらに高齢者等の孤立防止につなげようとするものであった(※25)。
「家庭内転倒予防講座」(う~んと運動)」
家庭内転倒事故予防のしおり
認知症サポーター養成講座
区内公衆浴場で「ゆず湯」

※21 広報としま1505号(平成23年7月25日発行)
H230414プレスリリース
H250205プレスリリース

※22 地域高齢者等の見守りと支えあいネットワークづくりについて(H131129厚生委員会資料)
豊島区高齢者緊急通報システム事業の概要(H050930福祉衛生委員会資料)

※23 一人暮らし高齢者等実態調査及びアウトリーチ事業の実施について(H220225区民厚生委員会資料)
H220422プレスリリース
―人暮らし高齢者等アウトリーチ事業拡充による熱中症対策について(H230630区民厚生委員会資料)
平成24年度熱中症対策について(H240628区民厚生委員会資料)
見守り訪問事業について(H240927区民厚生委員会資料)
コミュニティソーシャルワーカーの配置について(H240628区民厚生委員会資料)
地域支え合い体制づくり支援事業の実施について(H231201区民厚生委員会資料)
H240126プレスリリース

※24 豊島区における痴呆予防プロジェクト(H120706厚生委員会資料)
H140314プレスリリース
H150217プレスリリース
H161022プレスリリース
「介護予防・生活支援事業」等について(H121005厚生委員会資料)
H180424プレスリリース
H180803プレスリリース
H190911プレスリリース
認知症介護者等支援事業の拡充について(H240927区民厚生委員会資料)
認知症早期診断・早期対応事業の実施について(H260626区民厚生委員会資料)
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)と豊島区の取り組みについて(H270219区民厚生委員会資料)
認知症戦略の取り組みについて(H270625区民厚生委員会資料)

※25 ゆず湯の実施について(H231201区民厚生委員会資料)
敬老入浴事業の拡大に合わせ全区民対象の「ゆず湯」を実施(H231216区長月例記者会見資料)
H231222プレスリリース

○障害者の安全
 平成18(2006)年4月の障害者自立支援法の施行に伴い、身体障害・知的障害・精神障害といった障害の種別にかかわらず、必要な支援が公平に受けられるよう、様々な障害者福祉サービスの利用が一元化された。またそれらサービスを計画的に提供していくため、各自治体に障害福祉計画の策定が義務づけられ、豊島区においても翌19(2007)年2月、19~20(2007~2008)年度の2年間を計画期間とする障害福祉計画が策定された。この計画では、相談支援・コミュニケーション支援・日常生活用具給付・移動支援等の既存サービスが新たに「地域生活支援事業」の枠組みに位置づけられ、サービスを利用する障害者の状況や地域の特性に応じて、必要な時に必要な情報やサービスが受けられるよう柔軟に提供していくことが求められた。また18(2006)年12月にはバリアフリー新法(高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が施行され、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、ハード面のバリアフリー化はもとより高齢者や障害者等に対する理解を促進する「こころのバリアフリー」も求められるようになった(※26)。
 区はそれまでも「福祉のまちづくり整備要項」に基づき、障害者用エレベーターや障害者用トイレ等のハード面のバリアフリー化を進めていたが、平成23(2011)年4月に「池袋駅地区バリアフリー基本構想」を策定し、障害者の利用の多い池袋駅周辺地区を重点地区に位置づけ、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化を集中的に進めていくとした。だが区内在住障害者数は増加傾向にあり、社会参加の機会も拡大している一方、同地区の点字ブロック敷設率は42.8%にとどまり、放置自転車数もピーク時の7分の1にまで減ってはいたものの、依然として歩道上には障害者の歩行の妨げになる自転車や看板、はみ出し商品等が数多く置かれていた。また19(2007)年10月に20歳以上の区民3,000人を対象に実施した「地域保健福祉計画改定のための区民意識・意向調査」(有効回答数1,421、回答率47.4%)では、69.5%が街中で困っている人を見かけたことがあると答えた一方で、22.7%は実際に声をかけることは出来ず、そのうち83.9%が介助や手助けの方法を知っていたら声をかけたと思うと回答しており、障害者が安心して外出し、気軽に支援を受けられる環境にはいまだ至っていない状況が見られた(※27)。
 こうした状況を踏まえ、平成22(2010)年11月に策定された「セーフコミュニティ認証に向けた基本方針」では、障害者の安全のための中心的な予防活動として①障害者への理解・支援を促進するための事業、②福祉のまちづくり事業(ハード面)、③障害者情報バリアフリー事業の3項目が挙げられた。だが基本方針策定からわずか2カ月後の23(2011)年1月16日に、区内在住の視覚障害者が目白駅ホームから転落し、電車にはねられて死亡するという痛ましい事故が起きた。この事故を重く見た区は、JR東日本に山手線各駅でのホームドア設置の早期実施を要請するとともに、区広報紙で「駅ホーム上で視覚障害者へのサポートの協力」を呼びかけた。この広報記事によれば視覚障害者の約半分がホームから線路への転落経験があり、年に一人ほどが電車にひかれて死亡しているという。こうした状況を踏まえれば、視覚障害者に対する声かけ等のサポートはもとより、転落防止のためのホームドアの設置は喫緊の課題であったが、JR東日本は22(2010)年に恵比寿、目黒の2駅で試行導入し、以後10年間を目途に山手線全駅での導入を検討中であるとの回答で、また国土交通省も1日当たりの利用客が 5千人以上の全国 2,800 駅を対象にホーム柵やホームドアの設置を鉄道事業者に呼びかけていたが、設置が完了している駅は2,800駅中わずか449駅にとどまっていた(※28)。
 また平成22(2010)年11~12月に区内障害者を対象に実施したアンケート調査でも、視覚障害者の外出時のけがの経験率は34.9%と他の障害者より2倍以上高く、その原因としては放置自転車や店舗等のはみ出し商品等の歩道上の障害物が24%、歩道上の段差によるものが24%とこのふたつでほぼ過半を占め、次いで自転車との接触18%、通行人との接触14%となっていた。こうしたことから障害者の安全対策委員会は視覚障害者の外出時のけが・事故を優先的な予防対象に位置づけ、視覚障害者を主な対象とする対策を展開していった。
 その対策の第1弾として、平成23(2011)年4月26日、区民ひろば朋有で障害者の安全対策委員会と区民ひろば朋有運営協議会及び社会福祉協議会との共催による「障害者サポート講座」が開催された。この講座は障害の種別や特徴、外出時に困ること、障害に応じた手助け方法などについて学ぶとともに、実際にアイマスクをつけた視覚障害者役と介助者役が2人1組で障害者の置かれている状況やサポートの実技を体験する内容で、この第1回に続き同年9月に第2回が開催され、24(2012)年度以降も各区民ひろばを会場に実施されるようになり、支援の裾野を広げていった。また23(2012)年11月21日には視覚障害者3名とこの講座の修了生が参加し、池袋駅西口周辺の街歩き調査が実施された。この調査は実際に視覚障害者と街歩きすることにより街中の危険箇所を確認するとともに、その調査結果を集計し、データとして地図上に落し込み、前述した「池袋駅地区バリアフリー基本構想」等に基づくハードの面でのバリアフリー化に反映していくことを目的とした。さらに25(2013)年には支援が必要な時に提示して周囲の人に助けを求めるための携帯用「ヘルプカード」を作成し、各障害者に配布した(※29)。
 一方、区は平成23(2011)年度からの新規事業として「視覚障害者外出支援事業」を開始した。この事業はボランティアを募り、区内各施設等への道案内の音声データを作成して区ホームページ上で公開するというもので、同年度中に区施設を中心に27か所の道案内データが公開された。また同事業は24(2012)年度以降も継続的に実施して案内施設数を増やしていったが、一方、24(2012)年10月24日にはNPO法人「ことばの道案内」が区と協働して「ソーラー式ICタグ付き点字ブロックによる道案内システム」を開発、西武池袋線椎名町駅南口と区立心身障害者福祉センターをつなぐ約350mの経路上8か所にICチップを埋設した点字ブロックを設置し、ICタグから取り込んだ音声データを携帯電話で聞きながら目的地まで誘導する使用試験を実施した(※30)。
障害者サポート講座
視覚障害者による街歩き調査
ソーラー式ICタグ付き点字ブロック
○自転車利用の安全
 区内の交通事故発生件数は平成 13(2001) 年の1,885 件をピークに年々減少傾向にあり、 22(2010) 年には 953 件と半減したのだが、その一方、自転車が関わる事故は 13 年に 628 件であったものが 22 年には444 件と、他の交通事故に比べ減少幅は3分の1程度にとどまっている。その結果、交通事故全体に占める自転車事故の割合は13年の 33.3%から22年には 46.6% と相対的に増加し、全体の半分近くを占めるようになっていた。特に自転車乗車中の事故件数は増加傾向にあり、22(2010)年中に救急搬送された交通事故受傷者のうち自転車乗車中の受傷者の割合を年代別で見ると、20~50歳代が30%台であるのに対し、5~14歳51.7%、15~19歳45.7%、60~64歳43.1%、65~74歳47.7%、75歳以上47.4%と子どもや高齢者の割合が高くなっている。また自転車事故の発生場所は交通量の多い幹線道路よりも生活道路の見通しが悪い交差点などでの事故が多く、全体の3分の2を占めていた。また安全不確認や一時停止違反、信号無視等の自転車側の違反による事故が23%となっており、さらに22(2010)年度に実施した駐輪場利用者アンケートでも、子どものヘルメット着用義務を知っている人の割合は約 4 割にとどまっていた。
 こうしたデータからも通学路等の交通安全環境の向上や危険個所の周知、自転車ル ールやマナー意識の向上が課題になっていることが窺えた。このため自転車の安全対策委員会は特に自転車乗車中の受傷割合が高い子どもと高齢者のけが・事故を優先的な予防対象に位置づけ、平成22(2010)年度には街頭キャンペーンを19回開催するほか、駅周辺の自転車の多い路上に巡回指導員を配置し、ルールやマナー遵守を呼びかけた。こうした対策委員会の取り組みに呼応し、区は24(2012)年度からの新規事業として「自転車ヘルメット普及啓発事業」をスタートさせ、自転車商協同組合豊島支部の区内加盟 18店舗でSGマーク(一般財団法人製品安全協会の安全基準適合認証マーク)付きの子ども用自転車ヘルメットを購入する際に、店頭で最高 2,000 円を差し引いた額で購入できるようにした。同時にモデル事業として開始した「親子自転車安全教室」を修了した保護者には、「親子自転車安全運転者証」とともに子ども用ヘルメットの購入助成としてプラス1,000円を上乗せする3,000円の割引券を配布し、ヘルメット着用率の向上を図った(※31)。
 また住民の意識や認識と実際に自転車事故が発生している場所との間にずれが見られたことから、地図情報システム(GIS)を活用した「交通安全気づきマップ」を作成するワークショップを開催し、できあがったマップを広く配布して、多くの住民に危険箇所を周知した。平成24(2012)年度にはセーフコミュニティモデル地区の北池袋とセーフスクール認証取得に取り組む朋有小学校周辺の2地域で実施、以後、区民ひろば等で作成地域の拡大を図っていった。一方、区も通学路等の生活道路において、注意喚起のための路面表示やスクールゾーン表示、カーブミラーや交通案内標識等の設置・改修を進めていった。さらに24(2012)年9月1日から、こうした安全活動の取り組みを制度化するために、自転車利用者の遵守事項15項目及び13歳未満の子どもを自転車に乗車させる際のヘルメットの着用に関する保護責任者の努力義務が盛り込まれた「自転車の安全利用に関する条例」を施行した。なお同条例は令和元年に一部改正され、自転車事故による被害者の救済と加害者の負担軽減を図るため、自転車損害保険等への加入が義務化されている(※32)。
子どもの自転車ヘルメット購入費補助
親子自転車安全利用教室
○繁華街の安全
 区内の刑法犯認知件数は平成15(2003)年の11,589件をピークに減少に転じ、22(2010)年には7,162件と大幅に減少していたが、それでもなお23 区中8番目の多さであった。特に池袋駅周辺半径概ね1km以内の東池袋1・3丁目、南池袋1・2丁目、西池袋1・3丁目及び池袋2丁目の繁華街地域での犯罪発生件数は区内全域の約半分にあたる46.0%、うち暴行・傷害事件は63.2%を占めるなど、区の総面積のわずか1割に過ぎないこの地域に犯罪の発生が集中していた。また同地域での暴行・傷害事件の発生場所は駅が34.8%と最も多く、次いで路上28.0%、列車内5.5%となっており、発生時間帯は朝の通勤時間帯と夕方から深夜が多く、通勤時の混雑や飲酒トラブルなどが主な原因になっていた。22(2010)年6月に実施した「協働のまちづくりに関する区民意識調査」で生活の中の不安の変化について質問したところ、「客引きやキャッチセールス等による繁華街の環境の不安」はあまり変わらないという回答が54.2%、改善方向15.3%で、これに対し悪化方向は21.6%、また「落書きやポイ捨てなどによるまちの環境の不安」はあまり変わらないが51.12%、改善方向18.83%に対し、悪化方向は23.16%と、いずれも悪化の方向にあるとの回答の方が多かった。また警察に寄せられた「客引き110 番」の苦情業種別では、性風俗11.2%、キャバクラ10.9%、居酒屋10.5%、カラオケボックス9.8%、ホストクラブ5.8%となっており、これらの中には違法行為も含まれていた。
 こうしたデータに基づき、繁華街の安全対策委員会は犯罪・暴力によるけがを優先的に取り組む予防対象に位置づけ、環境浄化パトロールのほか、防犯カメラの設置、落書き防止対策、ガム・たばこポイ捨て対策等の予防活動を展開していった。これら活動の平成22(2010)年度実績は環境浄化パトロール73回・同参加者延べ1,458人、防犯カメラの設置累計数635台(街頭カメラ131・鉄道事業者カメラ504)、落書き消去活動8回・同参加者延べ282人、ガム・ポイ捨て除去活動2回・同参加者延べ325人にのぼった。
 本節第1項でも述べた通り、池袋駅周辺の繁華街ではそれまでも池袋西地区環境浄化推進委員会、池袋西口駅前環境浄化推進委員会、池袋東地区環境浄化推進委員会の3つの環境浄化推進委員会を中心に長年にわたって環境浄化パトロールが続けられてきた。そして区はこれら環境浄化活動団体への支援や生活安全協議会の設置、共同住宅や不特定多数の者が利用する店舗・ホテル等の建築主に防犯カメラ等防犯設備の設置に関する管轄警察署との事前協議を義務づける生活安全条例を平成12(2000)年11月に施行して以降、18(2006)年3月に風俗案内所に関する規制、20(2008)年12月には暴力団排除を促進するための条例改正を行い、また環境浄化推進委員会と区職員による合同パトロールを実施するなど繁華街での犯罪・暴力行為の防止強化を図ってきた。だが悪質な客引き行為等は止むことなく、パトロール隊が過ぎ去った後からまた違法行為が繰り返されるという「いたちごっこ」が続いていた。
 このため対策委員会からの提案を受け、平成23(2011)年12月に生活安全条例をさらに改正し、重点地区内での悪質な客引きや路上スカウト行為に対する区長の指導権限の一部を各環境浄化推進委員会に委託した。この改正はそれまでの住民だけのパトロールでは注意の声掛けしかできず、なかなか解決につながらないもどかしさを感じていた地元の切実な声を反映したものであった。翌24(2012)年4月の同条例施行以降、環境浄化推進委員会からの推薦を受けて「環境浄化指定指導員」に指定された地元住民と新たに「環境浄化指導員」に任命された区職員との合同パトロールが実施されるようになり、これらの取り組みが27(2015)年3月の「客引き行為等の防止に関する条例」制定へとつながっていったのである(※33)。
 さらに区はこの生活安全条例の改正と同時に暴力団排除条例を制定し、繁華街での犯罪の温床となっている暴力団根絶に向け、「地域安全運動豊島区民大会」や「安全・安心街づくり豊島区民決起大会」を開催し、両条例の普及啓発を図った。また周辺環境の悪化が犯罪を引き起こす引き金にならないよう、落書き消去活動の一環として、有害環境が懸念されていた池袋駅北口東武東上線沿い140mのブロック塀をペンキで塗り替える 「美しい街池袋 11・6 大作戦」を実施した。地域住民や少年野球チームの子どもたちも参加して行われたペンキ塗りの後、区民から募集した観光写真パネルを飾り、平成23(2011)年11月23日、殺伐としていたブロック塀は「池袋北口路上美術館」に生まれ変わった(※34)。
美しい街池袋11・6大作戦
池袋北口路上美術館オープン
○学校の安全(セーフスクール:朋有小学校)
 セーフコミュニティと同様にWHO協働センターが推奨するセーフスクールの認証取得をめざすことになった朋有小学校は池袋駅から約1km東に位置し、サンシャイン60をはじめとする高層ビルに囲まれ、またJR山手線、地下鉄、都電荒川線や首都高速道路、春日通りなど主要交通網が集中する「高密都市としま」を象徴する環境の中にあった。また平成15(2003)年に旧時習小学校と旧大塚台小学校との統合により開校した小学校で、それに伴い学区域が広域化し、しかも池袋駅周辺の繁華街に隣接していることから、児童がけがや事故に遭遇する危険性が高い環境にあった。このような状況を踏まえ、セーフスクール認証の取組を契機に児童の危険予測回避能力の育成や地域・保護者と連携した子どもの見守り体制の充実を図ろうとの目的で、22(2010)年11月にインターナショナルセーフスクール取組宣言が行われ、翌23(2011)年2月に学校の安全対策委員会(地域対策委員会)を設置、4月の新学期には児童による取組宣言が行われた。
 またその推進体制としてこの対策委員会の下に、町会、民生・児童委員、青少年育成委員、PTA、学校・教育委員会及び区職員で構成される「地域部会」と同校校長・副校長及び教職員で構成される「カリキュラム部会」、児童らが主体的に活動する「児童部会」が設けられた。さらに平成19(2007)年6月に同校に近接する旧巣鴨向原交番を拠点に発足した地域防犯活動組織「巣鴨向原地域安全センター協議会」もPTAとともに児童らの活動を支援した(※35)。
 区立全小・中学校で起こった事故は、平成21(2009)年度では55件発生しているが、うち32件が学校内で起きており、そのほか登下校中3件及び学校生活以外で起きた交通事故20件の計23件が発生、うち13件は自転車による事故だった。また朋有小学校内での軽微なものを含むけが(保健室データ)の発生状況は18(2006)年度の975件から23(2011)年度には倍近い1,869件と年々増加傾向にあり、そのうち通院を要するけが(災害共済給付対象)は年度によってばらつきがあるものの、平均して1年間に20件程度起きていた。月別のけがの発生状況では毎年6月が最も多く、23(2011)年6月の1か月間に起きたけがは278件にのぼり、そのうち24%が授業間の中休み、22%が昼休みと休み時間中のけがが多いものの、授業中のけがも18%あり、場所別では教室40.6%、校庭39.9%とほぼ同じ割合で発生していた。一方、同校児童の学校外での交通事故は21~23(2009~2011)年度の3年間に3件起きていたが、いずれも自転車乗車中の事故で23(2011)年度に学校が行った調査によれば児童のヘルメット着用率は1年生の45%が最高で、学年が上がるにつれ低くなり、6年生ではわずか3%にとどまっていた。
 こうしたデータに基づき、対策委員会は「学校内でのけが」と学校外での「自転車による交通事故」を特に優先的な予防対象に位置づけ、それぞれの部会ごとに予防活動を展開していった。
 このうち地域部会は自転車の安全対策のところでも述べた「交通安全気づきマップ」の作成に取り組むとともに、地域住民に対し、児童への声かけなど見守り活動への参加を呼びかけ、平成22(2010)年度には活動登録者が累計482人に及んだ。また教職員らによるカリキュラム部会は児童の発達段階に応じて体系的に安全教育を行っていくための指導計画(安全学習カリキュラム)を作成し、安全に関する授業を実施する中でそのカリキュラムの改善・充実を図っていった。さらに同校PTAも学校との共催で「自転車安全教室」を開催し、一定の技術習得が認められる児童に「自転車運転免許証」を発行する取り組みを進め、22(2010)年度は児童482人が参加、うち251人に免許証が発行された。また全保護者に児童のヘルメット着用を呼びかけ、着用率の向上を図っていった。
 こうした学校と地域、PTAとが連携した活動とともに、朋有小学校のセーフスクール認証取得に向けた取り組みの中でも特筆すべきは児童主体の児童会活動が展開されたことであった。4年生以上の学級代表24名で構成されるセーフスクール委員会を中心に、保健委員会、代表委員会のほか運動・掲示・飼育栽培・図書・集会・放送・環境・給食の8つのテーマ別委員会が設けられ、それぞれの役割分担のもとで様々な活動が行われた。セーフスクール委員会は自ら作成したアンケートによる全児童意識調査や校内パトロールで発見した危険箇所のマップ作成等、校内のけがに関する様々なデータを基に話し合い、全校朝会等で課題や活動の目標を問題提起していった。また保健委員会は保健室に来室したけがの発生場所を学年別にシールで貼り付けた「けがのヒヤリマップ」の作成や月1回のセーフニュースの発行、代表委員会はセーフスクール集会等の企画運営や東日本大震災募金活動や登校時のあいさつ運動を実施、また8つのテーマ別委員会もそれぞれセーフスクール活動を全校児童に広げていく役割を担った。こうした活動を展開する中で平成23(2011)年7月、セーフスクール委員会の提案により「心ひとつに安心できる朋有小にしよう!」という児童会活動のスローガンが作成され、保護者とともに10mの横断幕に描いて全児童集会で発表、またセーフスクール活動を応援するキャラクターとして児童が演じる「セーフマン」が誕生した。こうした児童らによる様々なアイデアを活かした活動が学校・保護者・地域を巻込み、一体となった活動へとつながっていったのである(※36)。
児童主体の委員会活動(スローガンの横断幕)
けがのヒヤリマップ
自転車安全教室
○地震災害の防止
 30 年以内に 70%以上の確率で発生すると予測される首都直下地震は、豊島区においても建物倒壊2,541 棟、火災焼失4,642棟、死者 77人、負傷者4,602 人など甚大な被害が想定された。住宅地を中心に幅員4m未満の狭あい道路が多く、木造密集市街地が区域の4割を占めるなど地震災害に対する脆弱性を抱え、平成22(2010)年6月に実施した区民意識調査では安全・安心のために優先して取り組んで欲しい施策として43%が「震災時の避難、救援体制など街全体としての災害への備え」、32.6%が「建物の耐火・耐震化や狭い路地の解消など災害に強いまちづくり」を挙げていた。切迫する大地震を前に狭あい道路や木造密集市街地の解消はもとより、逃げ遅れて死傷する恐れのある災害時要援護者の避難支援体制の整備が区の喫緊の課題となっていた。
 このためセーフコミュニティの重点課題のひとつに「地震災害の防止」を掲げ、平成22(2010)年11月に策定した「セーフコミュニティ認証に向けた基本方針」では①木造密集市街地の解消と建築物の不燃化、②民間建築物の耐震化と建物倒壊の防止、③狭あい道路整備、さらに災害時要援護者のための④町会による個別支援プラン作成の4項目が中心的な予防活動として挙げられ、翌23(2011)年1月31日に第1回地震災害の防止対策委員会が開催され、具体的な防止対策についての検討が開始された。
 だがその直後の平成23(2011)年3月11日に東日本大震災が発生し、区はそれまでに想定していなかった様々な課題に直面することになった。この間の経緯については前項で詳しく述べたのでここでは触れないが、こうした状況の変化を受け、対策委員会は予防活動を「住民参加による防災まちづくり」と「住民による防災活動」に切り分け、前者については「建物や塀の倒壊及び延焼火災による死傷」、後者については「地震発生直後における死傷」及び「避難時における死傷」をそれぞれ優先的に取り組む予防対象に位置づけた。防災まちづくりは主にハード面の改善を図る事業として行政機関により実施されるものではあるが、東日本大震災の発生によりさらなる加速化が求められた。一方、住民による防災活動については、それまでも地域防災組織である町会や消防団の育成支援、また災害時要援護者等に対する支援等を通じ、震災発生に備えて地域防災力の向上を図る取り組みが行われていたが、震災発生時の初動対応のさらなる強化が求められた。
 平成23(2011)年9月、区は東日本大震災発生以降に講じられてきた緊急対策を踏まえ、同年度後半に取り組む対策を「震災対策の強化をめざした当面の方針」としてまとめた。この方針の中で、セーフコミュニティ活動を総合的な震災対策の構築に向けた取り組みと有機的に連結させ、幅広い区民や事業者の参画によって実効性のある震災対策の確立を目指していくとの方針が示された(※37)。
 前述した首都直下地震による被害想定の負傷者4,602人のうち重傷者は579人にのぼることが見込まれ、その50%にあたる289人は屋内収容物(家具等の転倒)が受傷原因であることが想定され、また区内29 か所で同時に出火し、消防署では対応しきれず火災が広がる危険性も想定された。こうした被害想定に基づき、従来からの一般家庭向け防災用品のあっせんに加え、平成23(2011)年度からは高齢者など自力では家具転倒防止器具の設置が困難な世帯を対象に設置経費も含めて助成する事業が開始された。また住民による初期消火力の向上を図るため、地域防災組織である区内全町会に配備していた従来の消火用ポンプ(D級ポンプ)に加え、より操作が簡単な簡易水道消火装置の設置が同じく開始された。
 さらに平成24(2012)年3月、「総合的な震災対策の推進に向けた基本方針」及び「帰宅困難者対策計画」が策定され、セーフコミュニティと連動した地域防災力の強化や帰宅困難者対策の刷新が謳われた。前項でも述べた通り、24(2012)年度以降、これら方針・計画に基づき災害時要援護者の名簿について従来の手挙げ方式から原則として拒否の意思表示がない限り名簿に搭載する方式へと変更され、震災時の応急避難体制の強化が図られていった。また16 万5,000人にのぼる滞留者の発生が予想される池袋駅周辺の帰宅困難者対策において区がイニシアチブを取っていく立場になったことなど、東日本大震災を契機に区の防災対策のあり方は大きく変化していくことになったのである(※38)。

○児童虐待の防止
 豊島区では児童虐待について先駆的に取り組み、平成12(2000)年7月に区関係課職員のほか警察、都児童相談センター、民生・児童委員、人権擁護委員、家庭裁判所調査官、私立幼稚園・保育園長等から構成される「子ども虐待防止連絡会議」(虐待防止ネットワーク)を設置、またこの連絡会議の下に個別の対応が求められる案件について調査・援助活動を行う「ケース検討会議」を設け、関係機関との連携を深めながら児童虐待の早期発見・早期対応に努めてきた。また子どもやその家族と日常的に関わりを持つ地域の関係機関向けの「子ども虐待防止対応マニュアル」や一般区民向け啓発リーフレット、児童虐待防止ビデオ等を作成し、児童虐待に対する理解を広げていった(※39)。
 平成16(2004)年4月には東部子ども家庭支援センターを「先駆型子ども家庭支援センター」に移行し、専任の虐待対策ワーカーを配置して相談窓口体制の強化を図るとともに、児童虐待の予防的事業や支援活動などを通じて子育てに悩む親や子どもをバックアップしていった。なお翌17(2005)年4月の児童福祉法一部改正により児童相談に関する体制の充実を図るため「要保護児童対策地域協議会」の設置が規定されたことを受け、先行実施していた「子ども虐待防止連絡会議」をこの地域協議会に位置づけ、東部子ども家庭支援センターがその調整を担った(※40)。
 さらに平成18(2006)年4月に子どもの権利に関する条例を施行し、同条例の中で子どもが安心して生きる権利として「心身を傷つけられないこと」を明記するとともに、区の責務として児童虐待防止に関する体制の整備等を定めた。この当時、マルトリートメント(大人からの不適切な関わり、児童虐待)に関する相談・通告件数が急増し、20(2008)年度は539件と過去最高を記録していた。このため東部子ども支援センターは同年度からセンター内に相談室を開設し、子どもの心理に精通した臨床心理士による専門相談を開始した。さらに子どもの権利に関する条例に基づき、22(2010)年1月に子どもの権利擁護委員として弁護士と臨床心理士の2名を委嘱、同センターに配置した(※41)。
 こうした取り組みが展開される一方、関係機関から子ども家庭支援センターに寄せられる児童虐待に関する相談・通報件数は、平成13(2001)年度の121件から 8年後の21 (2009)年度には4.6倍の560 件へと年々増加傾向にあった。21 (2009)年度における相談・通報の経路は子育て支援課窓口経由が 110 件と最も多く、次いで保育園 77 件、小学校 63 件、保健所 54 件となっていた。対象児童の年齢は0~3歳が107件(19%)、3~6歳が113件(20%)で就学前児童は計220件、また小学生も220件(39%)となっており、就学前児童と小学生を合わせて約8割に達していた。22(2010)年度相談・通報は533件で前年度よりやや減少してはいたものの、0~17歳の児童人口に対する相談発生率6.5%は23 区平均の2.2%を大きく上回っていた。同年度の児童虐待発生状況を種類別にみると、養育困難が99件で最も多く、次いで身体的虐待44件、心理的虐待28件、ネグレクト27件となっていた。また児童虐待につながる要因では親の育児能力不足が35%で最も多く、次いで親の病気16%、両親等の関係不安定15%となっていた。核家族化や地域コミュニティの希薄化に伴い子育てが孤立し、養育困難等の支援が必要な家庭が増加しており、20年10~11月に実施した子どもプラン改定のための区民意識・意向調査でも0~5歳の就学前児童保護者(有効回答数666)の半数以上の53.2%が子育てに関する支援(サービスや情報の提供等)を望んでいた。
 これらのデータに基づき、児童虐待の防止対策委員会はこれまでの取り組みを継続しつつ、さらなる児童虐待防止対策の強化を図っていった。
 子ども虐待防止ネットワーク事業として「子ども虐待防止連絡会議」を引き続き運営していくとともに、個別の相談・通告に対しケース検討会議を開催し、子どもの権利擁護委員の専門的な助言を得ながら要支援家庭の見守りと支援を行っていった。ケース検討会議の開催実績は平成22(2010)年度289回、23(2011)年度は212回に及んだ。また東部家庭支援センターは 子育て支援施設や子育て支援サービスの利用が困難な家庭を対象とする子育て訪問相談事業を22 (2010)年度から開始、翌23 年4月に専任職員を3名から4名に増員するとともに西部子ども家庭支援センターにおいても事業を実施し、機動的な対応が取れるよう図った。これにより22(2010)年度に218件だった訪問回数は23年度には1,053件にまで拡充された。さらに23(2011)年度からの新規事業として、「1歳のバースデイ訪問相談」を開始した。この事業は保健所の乳児健診から1歳半健診までの中間の時期にあたる1歳の誕生日に、在宅で子育てを行っている家庭に絵本のプレゼントを持参して誕生日を祝うとともに相談を行う事業で、自我の芽生えとともに子育ての困難度が増す1歳児の子育て家庭への支援を目的とした。このほか「親の子育て力向上支援事業」として子どもの発達や養育に関して不安感を抱いている親同士がグループで意見交換し、問題解決につなげていく「ノーバディズパーフェクトプログラム」や「ペアレントトレーニング」等のプログラムを実施、また児童虐待防止キャンペーンや講演会等を開催し児童虐待に対する区民の理解を広げていった(※42)。
 一方、保健所も生後 4 か月までの乳児のいる家庭を保健師や助産師が全戸訪問する「こんにちは赤ちゃん事業」を実施し、疾病の早期発見や産後のうつ傾向にある母親を支援、必要な子育て情報を提供するとともに要支援家庭の早期発見・早期対応へとつなげていった。平成22(2010)年度の訪問件数は1,592件、23(2011)年度は1,653件にのぼっている。
児童虐待防止キャンペーン
ウェルカム赤ちゃん事業
○DVの防止
 第1章第2節第4項で述べた通り、区は平成4(1992)年に男女平等推進センター(エポック10)を開設し、14(2002)年2月に男女共同参画都市宣言、15(2003)年には男女共同参画推進条例を制定するなど、男女共同参画社会の実現に向けた先駆的な取り組みを展開してきた。そして昭和63(1988)年に策定された「豊島区婦人行動計画-としま150プラン」を第1次行動計画とし、平成13(2001)年には第2次行動計画にあたる「としま男女共同参画推進プラン」を策定し、総合的・計画的な施策展開を図ってきた。この第2次行動計画の計画期間が23(2011)年度で終了するのに伴い、また19(2007)年の配偶者暴力防止法の改正により「市町村における配偶者暴力行動計画策定」が努力義務とされたことから、23(2011)年12月、第3次行動計画と配偶者等暴力防止基本計画とを一体化した「としま男女共同参画推進プラン」(以下「第3次推進プラン」)が策定された。さらに「セーフコミュニティ認証に向けた基本方針」がまとめられた22(2010)年11月時点ではDVの防止はセーフコミュニティの重点課題には含まれていなかったが、23(2011)年6月に男女共同参画推進会議から第3次推進プランの「中間のまとめ」が報告されたことを受けて新たな重点課題に加えられ、翌7月に「配偶者等による暴力問題相談機関連絡会議」の専門部会がそのままセーフコミュニティの「DVの防止対策委員会」に位置づけられた(※43)。
 配偶者等からの暴力いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)が国内で社会問題化したのは1990年代以降であるが、平成13(2001)年に配偶者暴力防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)が制定され、豊島区においても16(2004)年7月、「ドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等の被害者保護の支援に関する住民基本台帳事務取扱要綱」が施行され、DVやストーカー行為の被害者に関する住民基本台帳の閲覧や住民票、戸籍附票等の写しの交付について、加害者からの請求やなりすましによる請求を拒否する規定が設けられた。また子育て支援課の女性相談窓口で配偶者の暴力から逃げてきた被害者を一時保護し、安定した生活が送れるよう支援する取り組みも行われていた。だがほとんどのDVは家庭内の密室で行われているため問題が顕在化しにくく、また配偶者間の問題に他者が介入すべきでないといった考え方もあって被害者の救済は十分とは言いがたい状況に置かれていた(※44)。
 平成21(2009)年8月に区内在住の満 20 歳以上男女各 750 名ずつを対象に実施した「男女共同参画社会に関する住民意識調査」(有効回答率39.4%)では、女性の21.9%が配偶者等から暴力的行為を受けたことがあると回答しており、男性の12.9%を大きく上回った。男女合わせた全体では約5人に1人の18.3%が受けたことがあると回答しており、同様の調査を行った17(2005)年の14.3%より増えていた。また男女平等推進センターでのDV相談件数は18(2006)年度の43件から22(2010)年度の180件へとわずか5年で4倍以上増えている一方、意識調査では「パートナーに暴力を受けた際に相談したか」との質問に対し、「相談した」は34.3%にとどまり、「相談したかったが相談しなかった」14.8%と「相談しようと思わなかった」46.3%を合わせると6割以上が相談していないという結果だった。23(2011)年に実施した区内医療機関への調査でも、診察でDVが疑われる際に困ったこととして、「本人の同意がなく警察へ通報できなかった」32.9%、「患者がDVだと思っていない」が28.2%で被害者自身も含めて社会全体としてDVに対する認識が低く、DV被害の潜在化・重度化が懸念された。また内閣府の2008年調査では20代の女性の21.3%が交際相手から何らかの暴力を受けていることが明らかになり、配偶者に限らず恋人間でのDV、いわゆる「デートDV」が課題となっていたことから、22年12月、中高生センター・ジャンプ東池袋で「デートDV予防座談会」を開催し、DVは交際中の男女間にも起きる身近な問題であり、ひとりで悩まず相談機関を利用するよう呼びかけた(※45)。
 こうしたデータや実態を背景に、第3次推進プランでは重点課題の第一に「女性に対するあらゆる暴力の根絶」が掲げられ、平成24~28(2012~2016)年度まで5年間の計画期間に取り組んでいく施策として、①被害の未然防止と啓発の促進、②早期相談・早期発見体制の充実、③被害者保護体制の充実・整備、④被害者の自立支援、⑤職務関係者に対する研修・啓発、⑥配偶者等暴力防止施策の充実の6項目が挙げられた。このプランに基づき、24(2012)年度からの新規事業として「DV及びデートDV防止対策事業」が開始された。11 月 25 日の国連「女性に対する暴力撤廃国際日」に因んで毎年 11 月 12~25 日の 2 週間、運動のシンボルであるパープルリボンを身につけ様々な啓発活動を展開する「女性に対する暴力をなくす運動」をはじめ、特に若年層を対象とするデートDV相談カードの活用や区立中学校での「デートDV予防教室」等の啓発事業が実施された。また職務関係者研修やDV被害者支援マニュアルの作成、配偶者等による暴力相談実態調査など支援体制強化の取り組みも行われた。そして翌25(2013)年12月、「配偶者暴力相談支援センター」が開設された。同支援センターは従来の相談対応や一時保護支援に加え、通報・保護命令への関与や被害者が健康保険の組合員被扶養者から外れる手続き等を可能とするDV証明書の発行などの新たな権限が付与され、庁内外の関係機関と連携し迅速かつ的確な被害者支援を担うことになる。なお当初、同支援センターは男女平等推進センターに開設されたが、27(2015)年5月には女性相談窓口である子育て支援課も同支援センターに指定されている(※46)。
中高生の「デートDV予防座談会」
パープルリボン
○自殺・うつ病の予防
 平成10年代以降、全国の自殺による死亡者数は 3 万人を超える状況が続き、自殺予防対策は国を挙げて取り組む喫緊の課題とされ、18(2006)年に自殺対策基本法が制定された。また医療機関に受診している全国のうつ病等の気分障害患者数は平成8(1996)年に43.3万人だったものが20(2008)年には104.1万人と12年間で2.4倍に増加しており、19(2007)年中に起きた自殺の原因はうつ病の18.3%が最も高く、うつ病の早期発見・早期治療の推進は自殺予防の点からも重要な課題となっていた。
 豊島区においても自殺による死亡率は国・都と同様に高い水準にあり、平成17~21(2005~2009) 年の 5 年間の累計で15~39歳代の死因の1位は自殺が占めていた。また19(2007)年7月に区内在住20~79歳の区民5,000人を対象に実施した区民健康意識調査(回収率40.6%)では、「最近ストレスを感じている」という人の割合は76.5%で14(2002)年の前回調査時68.5%より増えている一方、「意識的にストレスを解消する工夫をしている」は52.7%、「適度な睡眠が取れている」は75.8%でいずれも前回調査時の59.7%、80.6%を下回っていたが、それにもかかわらず専門医に相談する人の割合は4.2%にすぎなかった。さらに20~30歳代は自殺者が多いだけでなく自殺未遂者も多く、22(2010)年の救急搬送データでは自損行為による救急搬送数は20歳代の46人が最も多く、次いで30歳代の25人となっており、また自殺者の 17% に未遂歴があることから、自殺を繰り返す可能性が懸念された(※47)。
  こうしたデータに基づき、自殺・うつ病の予防対策委員会は毎年度9月・3月の自殺対策強化月間に自殺や精神障害に対する誤解や偏見をなくすための普及啓発活動を展開し、相談窓口の周知を図るとともに、ストレスチェックシート等を活用して専門的な相談につなげていった。またうつ病の未治療者・治療中断者など医療機関の受診に抵抗のある患者やその家族からの相談を受ける精神保健相談をはじめ、高齢者の「閉じこもりうつハイリスク者」への支援、自殺未遂で病院に搬送された患者の退院後の継続治療支援等の強化を図っていった。特に自殺割合の高い20~30歳代を対象にメンタルヘルスセルフマネジメントに関するパンフレットやメッセージカードをコンビニエンスストア等で配布、さらに自殺の低年齢化に伴い10代も含めた若年層へと支援を広げていった(※48)。
 一方、いつもと違う様子に気づき、専門相談機関につないでいく人材の育成を図るため、平成21(2009)年度に民生・児童委員及び区職員等を対象とする「ゲートキーパー養成講座」を実施し、それ以降も環境衛生協会(理美容・クリーニング)や薬剤師、介護保険事業従事者、大学院生など受講対象を順次拡大し、27(2015)年度からは各区民ひろばで一般区民向けの講座を実施していった。また24(2012)年12月に区職員プロジェクトチームによる「自殺予防対応マニュアル」が作成され、ゲートキーパー養成講座や職員研修等に活用された。さらに27(2015)年11月にはゲートキーパーのネットワーク化をめざすフォーラムが開催されている(※49)。
 そして自殺問題の連鎖を断つこうした取り組みの積み重ねが、平成31(2019)年3月の「自殺対策計画」の策定へとつながっていったのである(※50)。
「自殺予防対策マニュアル(窓口編)」作成
ゲートキーパー養成講座
 以上、10の重点課題別に取り組み経緯を概観してきたが、当初は重点課題のひとつに挙げられ、後にセーフコミュニティの付加的テーマに位置づけられた「がんの早期発見」についてもこの間に取り組みが進められた。
 前述したように区の平成20(2008)年度のがん検診受診率は5.4%と極めて低く、その向上は喫緊の課題とされた。このためがん対策を最重要課題に位置づけ、22(2010)年12月にがん対策推進条例を制定、23(2011)年3月にはがん対策推進計画を策定し、受診率の向上をめざして様々な受診勧奨の取り組みが展開された。そうしたなか、区教育委員会はがんに関する教育の独自教材を開発し、24(2012)年度から区立小中学校全校でこの教材を活用した授業が開始された。また翌25(2013)年度からは医療費が高額となる保険適用外の先進医療について、区内金融機関と連携した専用ローンの設定と、区がその利子相当額を補助する「がん先進医療利子補給事業」を開始し、がん患者の経済的負担の軽減を図った。さらに30(2018)年6月には「子どものための禁煙外来治療費助成」を開始、同年10月には区内公園を全面禁煙化するなど受動喫煙防止対策を推進した(※51)。
 一方、こうした課題別の対策委員会による取り組みに並行し、セーフコミュニティの地域拠点に位置づけられた区民ひろばにおいても様々な取り組みが展開された。各対策委員会による実践的な活動の場として、前述した家庭内の転倒予防プログラム「うーんと運動」や障害者サポート講座を実施するほか、安全・安心情報掲示板を設置し、セーフコミュニティに関する様々な情報を発信していった。
 また区民ひろば独自のセーフプロモーション活動として、子育て世代を対象に紙芝居を用いて子どもの安全力向上のポイントを分かりやすく伝えると同時に、親子で楽しみながら事故・防犯について学べる体験型プログラム「としま安全キャラバン隊」やワークショップ形式による「安全・安心マップ」づくり、「児童虐待防止セミナー」・「うつ病予防セミナー」・「災害予防セミナー」など様々な学習プログラムが展開された。さらに平成24(2012)年度から新たな取り組みとして、緊急時の行動判断に役立つ「救急安心カード」の作成サービスも開始された。これは希望者の氏名や生年月日、顔写真が印刷されたカードに自分で住所やかかりつけ医療機関、病歴、緊急連絡先等を書き込み、緊急搬送時や災害時の迅速な対応につなげることを目的とするものであった(※52)。
 こうした区民ひろばのセーフプロモーション活動とデータ分析に基づく課題別対策委員会の取り組みは、認証取得に向けて新しいエネルギーを供給し続ける「二つの心臓」に喩えられた。第2章第1節第3項で述べたように、区民ひろばは行財政改革の一環としての公共施設の再構築の中から誕生したものではあったが、セーフコミュニティの地域拠点に位置づけられたことによりその存在意義は高まり、また区民ひろばというコミュニティの拠点施設があったからこそセーフコミュニティの考え方が地域に定着していったと言える。平成23(2011)年12月に18歳以上の一般区民7,000人及び区内の区立・私立保育園通園児の保護者(子育て世帯)3,000 人を対象に実施したセーフコミュニティに関する区民意識調査では約4 割の区民がセーフコミュニティ活動を認知しており、前年2月の取組宣言から2年足らずの間に「セーフコミュニティ」という耳慣れない言葉が区民の中に徐々に浸透していることが窺えた。また区民ひろばに関する認知度についても7割以上がその存在を認知しており、実際に利用したことがある人は約3割にとどまっていたが、子育て世帯では5割以上が利用していた。だがその一方、セーフコミュニティ活動の重点テーマに関する安心感の変化についての質問には、「以前より良くなっている」と回答した割合は「がんの早期発見」の27.4%が最も多く、「障害者等が安心して外出できるバリアフリー」19.0%、「池袋駅周辺の繁華街の環境」14.9%以外はいずれも10%に満たない状況であった。セーフコミュニティ活動による成果を引き出すには、さらなる取り組みの積み重ねと継続的な検証が求められた(※53)。
 こうした「二つの心臓」によるセーフコミュニティ活動の展開に加え、区はセーフコミュニティ推進事業として、平成22(2010)年度からGIS(地理情報システム)を活用し、交通事故や消防水利、水害ハザードマップ、救援センター等の情報を共有する「としま安全・安心地図情報システム」の構築に着手した。その一環として、23(2011)年9月、区内に設置されているAED(自動体外式除細動器)を調査し、同意を得られた私立学校や店舗などの民間施設も含め区内全334か所の設置情報を網羅した「AEDマップ」を区ホームページで公開した。このマップには各施設内での設置位置や使用可能時間帯、小児用パッドの有無等の情報も掲載されており、定期的にデータの追加・更新を行っていくことにより緊急時にすぐ活用できるようにした。さらに翌24(2012)年4月には最新342か所の設置位置を印刷した「AEDマップ」を作成し、区役所窓口等で配布した(※54)。
 また平成24(2012)年2月7日、区は池袋・巣鴨・目白の3警察署と「豊島区『セーフコミュニティ』事業の推進に関する基本合意書」を締結した。区内3警察署とはそれまでも繁華街の治安対策等で緊密な連携を図っていたが、この基本合意書には①犯罪抑止対策及び有害環境浄化活動の推進のほか、②子ども・女性が被害に遭わないための対策の推進、③災害に強い街づくりの推進、④暴力団排除対策の推進、⑤交通事故防止対策の推進、⑥テロを許さない街づくりの推進、⑦相互連携の強化の7項目が盛り込まれており、安全・安心まちづくりのための包括的な相互連携を図っていくものであった(※55)。
 こうしてセーフコミュニティ活動を進めていく中で、区民はもとより、民間団体や関係機関との組織横断的な連携が広がっていったのである。
区民ひろば「としま安全キャラバン隊」
区民ひろば「安全・安心マップ」づくり
区民ひろば「救急安心カード」発行
区内3警察署と「セーフコミュニティ事業の推進に関する基本合意書」締結

セーフコミュニティ国際認証取得-持続可能な安全・安心まちづくり

 平成23(2011)年6月10・11日の2日間、セーフコミュニティ認証センターから派遣された趙埈佖(チョウ・ジュンピル)、王書梅(ワン・シュウメイ)、李貞我(イ・チョンア)3氏の審査員を迎え、事前審査が行われた。この審査は区の取り組み状況を視察し、申請に向けての改善点など指摘・指導を行うことを目的としていた。
 初日の10日は、区庁舎での外傷サーベイランス委員会の説明からスタートし、サンシャインシティ展望台、区民ひろば池袋本町、朋有小学校、池袋保健所、区民ひろば西池袋の各施設を回り、夜は池袋駅西口の環境浄化パトロールに参加するという1日がかりの視察となった。各施設では対策委員会によるプレゼンが行われ、区民委員を中心にそれまでの約6か月にわたる活動の中間報告がなされた。2日目の11日は区民ひろば上池袋からスタートし、同ひろば開催の「広げよう!セーフコミュニティの輪in区民ひろば」を見学、午後は勤労福祉会館に移動し審査員による講評が行われた。講評では対策委員会に対するいくつかの改善点が指摘されたが、全体を通してセーフコミュニティの理念を正しく理解し、「6つの指標」に基づいた活動を進めていることや大都市ならではの地震災害や繁華街など、豊島区固有の課題に取り組んでいること、さらにけが・事故に関するデータの調査・収集、科学的な原因分析がしっかり行われていることが評価され、特に区民ひろばをセーフコミュニティと関連づけていくことは大都市モデルとなる特徴的な取り組みであると高く評価された(※56)。
 なおこの事前審査に合わせ、2月11日に「としま安全・安心フェスタ2011」が開催された。このフェスタは高野区長が大会長を、推進協議会の専門委員であり日本市民安全学会会長でもある石附弘氏が実行委員長を務め、第8回日本市民安全学会豊島大会として開催されたものであった。鈴木隆雄国立長寿医療研究センター所長による基調講演に続き、「長寿社会における安全・安心の創造」「生活道路における安全・安心の創造」「子どもと学校における安全・安心の創造」の3つの分科会とワークショップ「セーフコミュニティの効果的推進とサーベイランス」が開かれ、全国各地の様々な活動事例が発表された(※57)。
セーフコミュニティ事前審査
(広げよう!セーフコミュニティの輪in区民ひろば)
セーフコミュニティ事前審査
(0611としま安全・安心フェスタ2011)
 事前調査での改善の指摘を受け、各対策委員会は原因分析から課題設定、予防活動、そして評価指標へとつながるストーリーの流れをより明確かつ論理的なものへと精査していくとともに、新たにDV(ドメスティック・バイオレンス)を重点課題に加え、認証申請書の提出さらに本審査に向けた検討を重ねていった(※58)。
 そして事前審査から半年後の12月20日、正式な認証申請書をセーフコミュニティ認証センターに提出した。124ページに及ぶこの申請書では豊島区の概要、セーフコミュニティに取り組む意義、外傷による死亡・けがのデータ、地域診断に基づく課題設定、そしてセーフコミュニティの6つの指標に基づく取り組みなど、この1年間の検討及び活動成果が分かりやすく整理されており、さらに事前審査での指摘を反映し、その他のハイリスクグループとして低所得者やホームレス、外国籍区民への対策等も盛り込まれていた(※59)。
 こうして平成24(2012)年が明け、区制施行80周年の節目を迎えるとともに、セーフコミュニティ認証取得の取り組みは最終段階に入った。区は1月1日発行の広報としま新年号で「未来へのバトンを子どもたちに」と題し、セーフコミュニティの取り組みを改めてアピールするとともに、24(2012)年度当初予算にセーフコミュニティ関連新規拡充40事業経費として約4億6,000万円を計上した。また80周年記念事業とセーフコミュニティ事業を一体的に展開していくこととし、周年事業の目玉として24(2012)年11月に第 6 回アジア地域セーフコミュニティ会議を池袋で開催することを決定した。こうして認証取得に向けた大きなうねりを作り出していく一方、2月の本審査に向けた準備も着々と進められた(※60)。
 提出した認証申請書による書面審査に続き、平成24(2012)年2月2~4日の3日間、事前審査の際にも審査員だった趙埈佖(チョウ・ジュンピル)氏に加え、同じくセーフコミュニティ認証センターの白璐(パイ・ル)、Bo Henricson(ボゥ・ヘンリクソン)の2氏を迎え、いよいよ本審査(現地審査)が行われた。なおこの本審査は朋有小学校セーフスクールの事前審査も兼ねていた。3名の審査員は豊島区の取り組みについての総括的な説明や各対策委員会からの説明を受け、また10の重点課題別に実際の活動状況を見て回った。各対策委員会はこの日のために練り上げたプレゼン発表に加え、様々な活動を実際にデモンストレーションし、認証申請書の内容を目に見える形でアピールした(※61)。
 3日間の審査を終えた各審査員からは、ホームレスや移民など世界共通の社会的弱者についての記述がもう少しあってもよいのではないか、またデータ収集や評価方法等について活動を継続していく中で改善していくように等の個別的な指摘を受けた。だが取り組み全体については「世界のセーフコミュニティネットワークの一員として参加する十分な資格を有している」「特に大都市モデルとして世界に胸を張って示していける」「今までセーフコミュニティの認証取得に取り組んだ都市の中で一、二を争うトップレベル」との高い評価が得られ、さらに「これから取り組むコミュニティの道標となるよう、国内だけでなく世界に向けて豊島区の取り組みを白書にして紹介してほしい」「アジアの発展途上国にセーフコミュニティの輪を広げるため貢献してほしい」との期待の声もかけられた。正式な審査結果は後日通知されることになっていたが、こうした審査員講評を受け、認証取得に向けて大きな手応えが得られたのである(※62)。
セーフコミュニティ認証現地審査
セーフコミュニティ認証本審査(審査員講評)
 そして平成24(2012)年5月8日、本審査の審査員を務めた趙埈佖氏が区を再訪し、審査結果報告とともにセーフコミュニティ認証決定通知書が交付された。亀岡市、十和田市、厚木市、箕輪町に次ぐ国内5番目、都内では初の認証取得の決定であった。正式なセーフコミュニティメンバーとなるのは11月28日に開催される認証授与式を待つことになるが、この決定通知は2年間にわたる取り組みの一定の到達点と言えた。だが前述したようにセーフコミュニティの認証取得はゴールではなく、持続可能な取り組みとして活動を継続させていくスタート地点と言えた。このため同日、高野区長は以下の「セーフコミュニティ継続宣言」を発表した(※63)。
豊島区は、先人から引き継いだ誇るべき歴史と文化資源を持ち、明日への活力を生み出し続ける、私たちの故郷(ふるさと)です。
豊かな地域力に支えられた「安全・安心」を、次の世代に引き継いでいくことは、いまに生きる私たちが取り組むべき、究極的なまちづくりの目標です。
区制施行 80 周年という節目の年に、「セーフコミュニティ」の国際認証を取得することは、区政の歴史に新たなページを加える栄誉です。
私たちは、世界の「セーフコミュニティ」のメンバーとなることを誇りとし、認証を新たなスタートとして、長期的かつ持続的に「セーフコミュニティ」活動に取り組むことを、ここに宣言します。
 平成24(2012)年10月1日、昭和7(1932)年の豊島区誕生から80年の記念の日を迎え、東京芸術劇場で記念式典が開催された。「安全・安心な文化都市 としま」をキャッチフレーズに掲げ、70周年の時と同様に区民や民間団体との協働により様々な周年記念事業が展開されたが、そのシンボル事業のひとつとしてこの日の記念式典に合わせ、「笑顔のハートプロジェクト」が実施された。「笑顔」を媒介にセーフコミュニティの理念を幅広い区民に発信していくことを目的に子どもから高齢者まで 約1,000 人の笑顔を募集し、式典会場周辺や区施設等にパネル展示した。さらにその中から 約100 人の小学生の笑顔をプリントした傘を製作し、式典当日、みんなで一斉に開いて会場周辺を行進した(※64)。
 翌10月2日にはセーフコミュニティ認証取得都市の亀岡市、十和田市、厚木市、箕輪町の各首長と12月認証取得予定の小諸市長及び高野区長の6人が一堂に会し、「セーフコミュニティ・サミットinとしま」が開催された。同サミットは「テーマ別講座」「基調講演」「サミット会議」の 3 部構成で行われ、最後に6首長により全国に向けてセーフコミュニティの潮流をつくりあげていくことを誓い合う共同宣言が行われた(※65)。
  続いて11月28日、東京芸術劇場で開催された第6回アジア地域セーフコミュニティ会議開会式に合わせ、セーフコミュニティ認証式典が執り行われた。外傷管理プログラムを継続的に実施していくことに関する合意書に署名後、スウェーデンのカロリンスカ研究所(医科大学)名誉教授でWHO協働センター代表であるLeif Svanström(レイフ・スヴァンストローム)氏からセーフコミュニティの認証盾と旗が授与された。これにより、区は世界で296番目、全国で5番目の認証都市として正式にセーフコミュニティメンバーの一員になった。開会式の記念講演でスヴァンストローム氏は「セーフコミュニティは世界でもっとも広がり、また成果を収めている運動の一つです。約40年前にスウェーデンの小さな町で始まったこの活動は、現在では世界中の約100の国々、数千のコミュニティに広がっています。コミュニティや住民の事故・暴力、自傷などの無い生活を望む気持ちが、こうした成果の基盤です。それぞれの国やコミュニティの取り組みに関する交流のため、世界・地域会議が開催されてきました。なかでもアジア地域ではセーフコミュニティの質を確保する仕組みがしっかりしています。この会議に参加されている皆さんが、私たちと共に世界的な取り組みに参加されることを歓迎します」と区のメンバー入りを歓迎し、高野区長も「セーフコミュニティの一員に迎えられることは誇りであり、今後のさらなる安全・安心なまちづくりの原動力になる」と応えた(※66)。
 一方、10月の認証申請書提出及び現地審査を経て、国内3番目となる朋有小学校もセーフスクール認証取得が決定し、前日の27日に同校で認証式が行われた。翌日のセーフコミュニティ認証式典では児童たちがその成果を発表、セーフコミュニティとセーフスクールの二つの国際認証の同時取得という快挙を喜び合った(※67)。
 またその日の会議終了後に開かれたアジア会議歓迎祝賀会で、区は台北市文山区とセーフコミュニティ友好都市協定を締結した。台北市文山区もセーフコミュニティの認証を受けており、平成23(2011)年4月にセーフコミュニティプログラム移動セミナー及びセーフコミュニティ発展会議に参加するため豊島区関係者が同区を視察、また24(2012)年9 月には同区関係者が豊島区を訪れ、セーフコミュニティを介した交流を進めてきたことから友好都市協定の締結に至ったものである(※68)。
 さらにサンシャインシティに会場を移し、29・30日に行われたアジア地域セーフコミュニティ会議の分科会・セミナーには海外22か国約160名、国内他都市約100名が参加した。11のテーマ別分科会では国内外の研究者・活動家約100名が発表し、豊島区からも対策委員会のメンバーら12名、うち9名は実際に地域で活動している区民が発表者を務めた。セーフコミュニティの国際会議としては国内初の開催であり、またこうした大規模な国際会議の開催は区にとっても初めてであったが、外国語の堪能な職員らが総出で参加者たちのホスト役を務めた。また最終日の30日午後には会議を共催する箕輪町、小諸市へのトラベリングセミナーが実施された。こうして3日間にわたる国際会議を滞りなく完了させ、区は国際的なネットワークへのデビューを果たしたのである(※69)。
 翌平成25(2013)年3月、区はセーフコミュニティ活動を持続可能な仕組みとするため、前年11月に提出された自治推進委員会の答申に基づき、区の憲法とも言うべき自治の推進に関する基本条例を改正した。この改正条例では、前文とコミュニティを基盤とする活動の原則(第11条)の中に「安全・安心」という文言が加えられるとともに、新たにセーフコミュニティに関する条項(第22条)が追加され、「セーフコミュニティとは、地域の人と人との絆を広げながら、安全・安心と健康の質を高めていくまちづくりをいう」及び「区長等は、セーフコミュニティを通じて、将来に向けて参加と協働をより一層推進するものとする」と規定された。また区の役割(第12条)に「区長等は、地域区民ひろばをコミュニティを基盤とする活動の拠点として位置づけ、その充実に努めなければならない」という条項を加え、セーフコミュニティ及びその地域拠点としての区民ひろばを条例の中に位置づけた(※70)。
 さらに同年2月15日、区は区議会の全会一致による議決を経て、「虐待と暴力のないまちづくり宣言」を行った。この宣言はセーフコミュニティの重点課題である児童虐待、DVはもとより、高齢者や障害者に対する虐待、またいじめや体罰なども含め、子どもたちが身近な大人から暴力を学ぶことのないよう、また暴力が暴力を生む負の連鎖を断ち切っていくために、社会の最小単位である家庭から地域社会へと暴力根絶の気運を広げていくことを目的としていた(※71)。
 以下に宣言文全文を記す。
わたしたちは
すべての人が、大切な人との関係において
心からのやすらぎを得られるように
ここに「虐待と暴力のないまちづくり」を進めることを宣言します

子どもへの虐待、夫婦や恋人同士の間で起きる暴力、
高齢者・障害者への虐待は、
被害者の人権を著しく侵害し
心身に回復困難な傷をもたらします
暴力はいかなる理由があっても、決して許されるものではありません

子どもたちが
生まれて初めて知る家庭という小さな社会の中で
身近な大人から暴力を学ぶことのないよう
わたしたちは、家庭から、地域から
あらゆる暴力を根絶していきます

親密な間柄で起きる暴力や虐待に終止符を打つため
無関心という一番の暴力を捨て
区民一人ひとりができることを考え
セーフコミュニティ国際認証都市として
ともに安全・安心なまちづくりのために
取り組んでいきましょう
 この都市宣言により平成25(2013)年度以降、前述した配偶者暴力支援センターの整備や性犯罪被害者等のための総合支援モデル事業等のDV防止対策、また後に児童相談所の区移管につながる児童虐待防止対策の強化が図られていった(※72)。
 同様に他の重点課題についても5年後の再認証に向け、各対策委員会での活動が続けられた。毎年度、各対策委員会及び区民ひろばそれぞれの活動状況を推進協議会に報告し、短期的な成果指標55及び長期的な成果指標25に基づく状況の変化や予防対象に関する新たなデータの分析・検証を通じて対策の強化・改善を図り、またそれらの取り組みを年間活動レポートとしてWHO協働センターに提出するというサイクルで進められた。そうした中で「介護予防サロン」や「認知症カフェ」の開設、区民ひろばを活用した「ミニキッズセーフ」、障害者用「ヘルプカード」の作成、「交通事故情報」のメール配信、客引き行為等の防止に関する条例施行に伴う「繁華街警備隊」の導入、災害時要援護者名簿の地域共有、帝京平成大学大学院生との協働による「若者のいのちを守る」ハートプロジェクト等の新たな取り組みも展開されていった。また区民ひろばでのセーフプロモーション活動も運営協議会やNPO法人の様々なアイデアを活かしたプログラムが実施され、参加者数は年々増加し平成27(2015)年度には3万人を突破した(※73)。
 一方、セーフスクールについては3年ごとの再認証が求められることから、朋有小学校は平成27(2015)年度の再認証取得をめざし、児童の主体的な活動や学校・PTA・地域が一体となった取り組みが引き続き展開され、校内でけがの発生件数は23(2011)年度の1,869件から26(2014)年度には678件へと3年間で6割以上減少させる成果をあげていった。朋有小学校に続き26(2014)年4月に富士見台小学校がセーフスクールの取得宣言を行い、翌27(2015)年7月には仰高小学校と池袋本町小学校が揃って取組宣言を行った。また区教育委員会は同年7月8日に策定した「豊島区教育大綱」の中でセーフスクールの認証取得を全区立小中学校に拡大していく方針を打ち出した。これにより28(2016)年5月、池袋第一小学校と池袋中学校が取組宣言を行い、さらに高南小学校、清和小学校、さくら小学校、千川中学校がこれに続いていった(※74)。
 またこの間、朋有小学校と富士見台小学校は平成27(2015)年6月に事前審査、同年11月に現地審査をそれぞれ受け、子どもたちの主体性を生かした活動やデータに基づいたけが防止システム(朋有)、「三世代交通安全教室」などの世代間協働の取り組みや区民ひろばとの協働(富士見台)について高い評価を受け、朋有小学校の再認証、富士見台小学校の初認証が決定された。翌28(2016)年2月4日、区議会議場で両校合同の認証式と「セーフスクールサミット in 豊島」が開催され、翌5日には各校で認証式が執り行われた。このセーフスクールサミットには両校のほかセーフスクールに取り組んでいる厚木市、亀岡市、秩父市、松原市、浦和学院高等学校の5団体が参加し、それぞれの取り組みや成果発表を行った後、より一層安全・安心な学校を目指すとともに相互の連携をすすめていく共同宣言が読上げられた(※75)。
 この2校に続き、平成29(2017)年2月に仰高小学校と池袋本町小学校、30(2018)年2月に池袋第一小学校と池袋中学校、31(2019)年1月に高南小学校、令和2(2020)年1月に清和小学校、そしてコロナ禍を挟み令和4(2022)年2月にさくら小学校、千川中学校がそれぞれ認証を新規取得した。さらこの間に朋有小学校の再々認証、富士見台小学校、仰高小学校、池袋本町小学校、池袋第一小学校、池袋中学校の再認証取得の取り組みが並行して進められ、令和4(2022)年2月時点での認証取得校は小学校8校、中学校2校の計10校に達した(※76)。
 一方、セーフコミュニティの平成29(2017)年度再認証取得に向けた取り組みも着々と進められる一方、セーフコミュニティ認証のための6つの指標に新たに「根拠に基づく継続的な予防活動」が加えられた。このため認証申請書を作成するにあたり、認証取得後の主な取り組みをまとめるとともに、認証取得時と直近のデータの比較や経年変化、直近3年間の対策実施状況(活動指標)、5年間の成果指標等により成果(変化)を分かりやすく伝える工夫を施していった。こうして完成した認証申請書を提出し、29(2017)年11月に本審査(現地審査)が行われた。審査員からは「5 年間という期間にセーフコミュニティの指標を満たす実に多くのことを達成されている。特に 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向け外国籍の方が増えると思うので、ぜひ既に実施されている素晴らしい取り組みを様々な言語で発信していただきたい。豊島区の取り組みがさらに良いものとなり、世界のコミュニティと共有されることを期待しています」との高い評価が与えられた。そして翌30(2018)年2月1日に開催された再認証式典で正式に再認証が承認され、さらに再々認証に向けた新たな5年間がスタートした(※77)。
 なお、その後もセーフコミュニティ活動は継続的に取り組まれ、区制施行90周年にあたる令和4(2022)年8月に再々認証取得が内定され、11月1日の周年記念式典に合わせて認証式が開催されている(※78)。

 平成22(2009)年2月の取得宣言から13年、区制施行80周年にあたる24(2012)年11月の認証取得から10年が経過した。この間にこの活動に参加した人は何千、いや何万に及ぶことだろう。そして活動により事故・けがのリスクが減少したものも少なくないが、依然としてリスクが増加し続けているものもあるのが現状である。これほど高密な都市において事故・けがのリスクをゼロにすることは不可能に違いないが、もしセーフコミュニティ活動に取り組んでいなければ状況はもっと悲惨なものになっていただろう。何より「日本一安全・安心な都市」という壮大な目標に向けて、今もなお多くの人々がこの活動に参加し続けているということこそがセーフコミュニティがもたらした最大の成果と言えるだろう。平成24(2012)年2月に実施されたセーフコミュニティ認証センターによる本審査で審査員を務めたボゥ・ヘンリクソン氏は、審査後の講評の中で自身の座右の銘として「頭で考え、心で動く」という一文を紹介した。まさにセーフコミュニティとは科学的なデータ分析に基づいて課題を発見し、その解決にあたって行政・区民・民間団体等が心をひとつに力を合わせていく仕組みを築いていくことに他ならない。「日本一安全・安心な都市」への終わりのない挑戦はこれからも続いていくのである。
セーフコミュニティ国際認証取得が決定
セーフコミュニティ「笑顔のハート」プロジェクト
セーフコミュニティ・サミットinとしま
アジア地域セーフコミュニティ国際会議(認証式典)
朋有小学校インターナショナルセーフスクール認証取得
セーフスクールサミットin豊島
セーフコミュニティ再認証

※63 セーフコミュニティ認証の決定(H240508第9回セーフコミュニティ推進協議会資料)
H240508プレスリリース
セーフコミュニティ国際認証が決定しました!(広報としまH240521)
セーフコミュニティ継続宣言

※64 区制施行80周年記念事業について(H240322議員協議会資料)
豊島区制施行80周年記念誌
平成24年度セーフコミュニティ推進事業について(H240425第13回セーフコミュニティ推進本部資料)
H240816プレスリリース
H240927プレスリリース
H241001プレスリリース
広報としま1548号(平成24年10月1日発行)

※65 セーフコミュニティ・サミットinとしま抄録集(平成24年10月2日)
H241002プレスリリース

※66 いよいよ明後日から「アジア地域セーフコミュニティ会議」スタート!(H241126区長月例記者会見資料)
セーフコミュニティ合意書
H241128プレスリリース
広報としま1556号(平成24年12月21日発行)

※67 インターナショナルセーフスクール認証申請書
H241007プレスリリース
H241127プレスリリース

※68 豊島区・台北市文山区セーフコミュニティ友好都市協定

※69 6th Asian Regional Conference on Safe Communities in Toshima(第6回アジア地域セーフコミュニティ会議プログラムブック)

※70 自治の推進に関する基本条例の改正について(H250221総務委員会資料)

※71 「虐待と暴力のないまちづくり宣言」の実施について(H250111未来戦略創出会議資料)
「虐待と暴力のないまちづくり宣言」の実施について(H250215議員協議会資料)
虐待と暴力のないまちづくり宣言(平成25年2月15日)

※72 H251121プレスリリース
性犯罪被害者等のための総合支援モデル事業について(H261127総務委員会資料)
H270403プレスリリース
児童相談所のあり方に関する都区協議、検討状況について(H260513行財政改革調査特別委員会資料)
児童相談所の移管について(H280317議員協議会資料)
セーフコミュニティ児童虐待の防止対策委員会(H280118第16回セーフコミュニティ推進協議会資料)

※73 みんなでつくるセーフコミュニティとしま-5年後の再認証に向けて(H250617第11回セーフコミュニティ推進協議会資料)
平成26年度のテーマ「横断的な連携・協働」(H260602第13回セーフコミュニティ推進協議会資料)
各対策委員会・区民ひろばからの報告及び再認証に向けた改善(H260602第13回セーフコミュニティ推進協議会資料)
各対策委員会・区民ひろばからの報告及び再認証に向けた改善(H270706第15回セーフコミュニティ推進協議会資料)
各対策委員会・区民ひろばからの報告及び再認証に向けた改善(H280616第17回セーフコミュニティ推進協議会資料)
10項目の重点課題「成果指標の状況」(H260602第13回セーフコミュニティ推進協議会資料)
10項目の重点課題「成果指標の状況」(H270706第15回セーフコミュニティ推進協議会資料)
10項目の重点課題「成果指標の状況」(H280616第17回セーフコミュニティ推進協議会資料)
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポート2012-2013
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポートの概要(H251209第12回セーフコミュニティ推進協議会資料)
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポート2014
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポート2015
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポート2016
広報としま1589号(平成25年11月21日発行)
広報としま1625号(平成26年11月21日発行)

※74 H260423プレスリリース
インターナショナルセーフスクールについて(H270626子ども文教委員会資料)
H270708プレスリリース
平成28年度インターナショナルセーフスクールの認証取得に向けた取組ついて(H280704子ども文教委員会資料)
インターナショナルセーフスクール認証取得について(H300226子ども文教委員会資料)

※75 H271118プレスリリース
インターナショナルセーフスクール認証取得・現地審査の結果について(H271127子ども文教委員会資料)
H280204プレスリリース

※76 インターナショナルセーフスクール現地審査について(H281205子ども文教委員会資料)
H290210プレスリリース
インターナショナルセーフスクール認証取得について(H310225子ども文教委員会資料)
学校・通学路等の安全対策について(R010701子ども文教委員会資料)
インターナショナルセーフスクールの認証・再認証取得について(R020225・R020930子ども文教委員会資料)
インターナショナルセーフスクールの認証・再認証取得について(R040222子ども文教委員会資料)

※77 セーフコミュニティ再認証申請書(案)の概要(H290629第19回セーフコミュニティ推進協議会資料)
国際セーフコミュニティ認証センター再認証申請書(H290629第19回セーフコミュニティ推進協議会資料)
H291108プレスリリース
H300201プレスリリース

※78 セーフコミュニティの今後の取組みについて(H300614第21回セーフコミュニティ推進協議会資料)
今年度のセーフコミュニティの活動について(R010712第23回セーフコミュニティ推進協議会資料)
セーフコミュニティ年間活動レポート2018
セーフコミュニティ年間活動レポート2019
セーフコミュニティ年間活動レポート2020
豊島区セーフコミュニティ年間活動レポート2021
R040802プレスリリース