昭和63年第1回区議会定例会招集あいさつ・所信表明(昭和63年2月25日)

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 本日、昭和六十三年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げる次第でございます。


 昭和六十三年度の予算、その他の案件をご提案申し上げるに当たりまして、まず一般会計予算案の概要につきましてご説明を申し上げますとともに、あわせて所信の一端を申し述べたいと存じます。


 私は、昨年四月の統一地方選挙におきまして、本日ご出席の議員各位とともに、区民の皆様から厳粛なるご審判を受け、区長に就任いたし、区政執行の重責を担うことになったのでございますが、爾来、公平な行政、安定した行政、清潔な行政を区政運営の三本柱に据えて、内外に開かれた明るい豊島区政の執行に真剣に取り組んでまいったのでございます。


 この間、さまざまな場と機会に、各界各層の皆様方から寄せられました多種多様なご要望を踏まえまして、限られた財源を最高度に活用し、長期の展望に立った厳しい選択を経て、区長として初めての予算を編成することができたのでございます。


 世界経済は緩やかながらも息の長い景気回復基調にあり、我が国におきましても、緊急経済対策の効果も加わりまして、景気回復から拡大への方向をたどっていると思うのでございます。


 今後における国の経済政策は物価の安定を基礎としつつ、内需を中心とした着実な景気拡大を図る努力がなされようとしているわけであります。


 このような中で、国の昭和六十三年度一般会計予算案は、公共事業費を前年度当初比二割増に膨らませるなど、五年間続いた緊縮財政から一転して、財政拡大へと踏み出し、内需拡大と財政再建の両立をうたい、前年度当初予算に比べ、四・八%増となっているのでございます。


 一方、昭和六十三年度の地方財政計画も、同様の方針のもとに、新たな国庫補助負担率の引き下げを行わず、通常収支の均衡を前提として、地方財政の中期的な健全化を図る観点から策定され、前年度に比べ六・三%の増となっております。


 また、先般公表されました東京都の昭和六十三年度一般会計予算案は、極めて好調な税収を背景に、その規模、実に対前年度伸び率において、一九・九%と、まさに高度成長時代の復活を思わせる超積極予算となっているのでございます。


 次に、去る二月十七日、都区協議会において、決定をみました昭和六十三年度都区財政調整を見ますると、調整三税の伸び率が二四・四%と、昭和四十九年度以来の増収に伴い、基準財政需要額において、旧国鉄用地取得費の算入、地価高騰対策等、新規事業を含む投資的経費が六八・三%増となったことなど、かねて区長会より要望してまいりました事項が相当程度折り込まれた内容になっております。その結果、財政調整交付金は前年度に比べ、二六・六%増となっているのでございます。


 以上、申し述べました豊島区を取り巻く財政環境を踏まえまして、本区の昭和六十三年度予算の編成に取り組んだのでございますが、その基本的な考え方を申し上げたいと存じます。


 まず、限られた財源の重点的配分と経常支出の効率化に徹し、節度ある行財政運営に努めることであります。


 また、長期的視点に立った財政運営にも十分留意しつつ、積極的かつ活力ある区政の展開を図って、区民の期待にこたえることであります。


 その結果、第一に、昨年四月の区長選挙における私の公約に照らし、昭和五十八年度にスタートした豊島区基本計画の五本の柱ごとにその現状を省察しまして、新規発案を含め、必要な事業について緊急度に応じ、可能な限り予算を計上したことでございます。


 第二に、各行政分野のバランスに配意しつつ、文化・教育の振興と福祉水準の底上げに力点を置いたことであります。


 第三に、当面の緊急課題を土地対策と国際化対策に絞り、土地対策につきましては、積極的かつ機動的に対応できますよう用地取得基金を創設したことであり、国際化対策につきましては、予算面において国際化対策元年ともいうべき位置づけをしたことでございます。


 第四に、本区長年の懸案事項に思い切った予算を計上して、行政の姿勢を明らかにしたことでございます。すなわち、庁舎等建設基金の創設、狭あい道路の拡幅整備、幼稚園の公私格差是正、葬祭場の建設、池袋駅東口の駐輪場の建設等でございます。


 なお、かねて申し上げております基本計画の一部改定についてでございますが、特養ホームなど、基本計画には計上されていない施設で、既に着手している事業のほか、深刻な課題となっております老人住宅や、取得を要望しております国鉄用地の利用計画をも踏まえ、これらを基本計画の残り五年間に計上されております既定事業にあわせて、この際、施設などハードな事業に絞り、公共施設整備中期計画を策定いたしたいと考えております。


 この中期計画は、昭和六十四年度から六十八年度までの五か年計画とし、昭和六十三年度中に策定するものでございます。


 このような基本的な考え方に立ちまして、区政の隅々まで気配りしつつ、編成いたしました昭和六十三年度一般会計予算の概要につきましてご説明を申し上げます。


 予算総額は約六百六十七億六千三百万円でございまして、前年度当初予算と比較いたしますと、約八十六億二千三百万円、一四・八%の増となり、昭和五十三年度以来、最高の伸び率となっております。


 まず、歳入でございますが、財源別構成比では、一般財源が七四・一%となり、前年度より二・三ポイント高まり、伸び率では一八・五%となっております。


 一般財源の大宗を占める特別区税は対前年度伸び率九・六%となっておりまして、財政調整交付金は昭和六十三年度都区財政調整のフレームを基礎に推計いたしました本区の想定財調による普通交付金に特別交付金の見込額を加えた約百七十二億千百万円を計上し、対前年度比七・〇%増となっております。


 次に基金からの繰入金といたしまして、四十七億円を計上しておりますが、これは財政調整基金からの四十三億円と用地取得基金からの四億円でございます。


 また、特定財源のうち特別区債は、対前年度比一四・三%増の約十四億九千九百万円を計上しておりますが、その主な内訳は葬祭場、特別養護老人ホーム、池袋駅東自転車駐車場等の施設建設に充当する約八億六千万円、道路新設改良二億円、学校用地四億三千九百万円でございます。


 なお、用地の先行取得につきましては、別途、土地開発公社の予算に公園・児童遊園用地五千平方メートルのほか、葬祭場、福祉ホーム、児童館建設用地の購入費として約九十六億六千四百万円を予定いたしております。


 この公社予算額は、前年度当初計上額の三倍に上るものでございます。


 次に歳出について申し上げます。


 まず、経費別内訳を見ますと、構成比では人件費が二六・三%と前年度に比べ二・七ポイント低くなっているのに対しまして、事業費は六二・五%、前年度比一・九ポイント、投資的経費一一・二%で〇・八ポイントとそれぞれ高くなっております。


 人件費につきましては予算人員二千八百五十四人でございまして、その増減の内訳は、高齢化対策室の設置、狭あい道路拡幅整備事業の実施、街づくり公社設立準備等五十八人の増に対しまして、事務事業の見直し、委託化等による三十五人の減を見込みまして差し引き二十三人の増となっております。


 次に基本計画に定める施策の体系に従いまして、主な新規・拡充事業につき概略ご説明申します。


 第一の柱は「文化をはぐくむまち」文化・教育の振興でございます。


 暮らしに結びついた個性豊かな生活文化の創造や地域に根づいた伝統文化の継承を含め、多様な文化活動などを積極的に育成し、また支援していくため、「文化振興基金」を創設して、心の触れ合う潤いと活力に満ちた町づくりに寄与しようとするものでございます。


 区が拠出する基金三億円を出発点とし、将来に向かって広く区内の民間団体等からの寄附をも受け入れ、その果実である運用益金を基金設置の目的に沿って、真に必要とする事業に効果的な助成をしてまいりたいと考えております。


 次に雑司が谷旧宣教師館でございますが、昭和五十七年十二月、雑司が谷を愛する地域の方々を中心とする強いご要望を受け、敷地ごと買収したのでございますが、その後、本区の文化財保護条例に基づく登録有形文化財の第一号に指定いたしたのでございます。


 今回、その保存修理工事が完了いたしましたので、地域資料館として広く一般のご利用にも供すべく、展示用の工事を行うものでございます。


 展示の内容は建造物の歴史的沿革や雑司が谷地域の郷土文化をメインテーマとし、秋田雨雀を初め、地域で活躍された多くの文化人の年譜、日記等の歴史的資料を展示するものでございます。


 次に路上美術館の準備とイベントでございますが、ご案内のとおり、この構想は昭和六十一年度の職員提案を採用したものでございまして、池袋東口駅前のグリーン大通りの歩道を利用して、地域の活性化と文化都市のイメージ向上をねらった野心的な構想であります。沿道に立地する金融機関等のご協力を仰ぎ、大きなショーウインドーや緑豊かな歩行者空間に絵画や彫刻等を展示して、ウォーキングギャラリーを設けようとするものでございます。


 昭和六十二年度に実施しました企画調査をもとに沿道の企業や商店街の方々、さらには関係諸機関が参加する「協議会」を設け、実現に向けて合意づくりに努めますとともに、試行を兼ねた短期的なイベントを実施するものでございます。


 次に昨年十月、豊島区婦人問題懇話会から婦人問題解決に向けて、自立、参加、共生という三つの柱に基づく九十の提言をちょうだいいたしましたが、この提言が豊島区の今後の発展にとって重要な礎になることを確信しつつ、既に庁内に設けました「婦人行動計画策定委員会」において、本年十二月を目途に豊島区独自の婦人行動計画を策定してまいりたいと考えております。


 近年、国際化の進展はめざましく、情報化の発展と相まって政治・経済・文化などのあらゆる面で世界との結びつきが強まっております。


 国際都市東京における副都心としての池袋を中心地域に抱える本区におきましては、この国際化のテンポはとりわけ際立っておりまして、最近十年間に本区在住の外国人の数が約三倍に増加いたし、本年一月一日現在、ついに一万人を突破して、なお急増の傾向にあるのでございます。


 今や豊島区民の二十七人にひとりは外国人でございまして、このことは区民の日常生活の場が色濃く国際化していることを意味すると思うのでございます。


 このような地域社会の変化に対応して、末端行政としてどのようなサービスを提供すべきかを探るため、昨年十月、庁内に国際化対策委員会を設けて、調査検討を進めてまいりました。


 今回、同委員会より緊急に対応すべき課題について中間報告を受け、これらの中から十事業を予算化いたしたわけでございます。


 その主なものを説明申し上げますと、まず本年八月に開催されます「東京国際演劇祭八十八池袋」に区主催事業としての「としま薪能」をもって参加いたし、日本の優れた伝統芸能を披露するとともに、区民の方々に低料金で観賞していただこうとするものでございます。


 また、国際的視野に立脚し、国際感覚豊かな職員の育成が必要でありますので「職員海外派遣研修」「英語・中国語・ハングルの外国語研修」を実施してまいります。


 現在、区立小中学校に在籍する外国の児童生徒数は約二百三十人でございますが、子供たちに外国語への興味と、その国の文化を理解してもらうために、六十二年度に実施しました外国人教師の派遣事業をさらに拡大いたしますとともに、教育センターで英・中・ハングルの日常会話を中心にした「外国語教室」を開催するものでございます。


 また、引き取り手のない放置自転車の中には、手を加えれば新品同様によみがえり、十分長期の使用に耐えられるものがかなりございますので、これを国際親善の観点から、東南アジアの希望国に無償で輸出いたすべく、大使館、その他と協議を進めているところでございます。


 次に私立幼稚園児の保護者に対する助成でございますが、昭和六十三年度から新たに三歳児を区の助成対象に加えますとともに、区の補助額を大幅に引き上げまして、都からの補助とあわせ、三歳児については月額七千円、四・五歳児については月額一万円といたしますほか、現行四万円の入園時補助金を五万円に引き上げるものでございます。これにより公私の格差はほぼ解消しうるものと考えております。


 第二の柱は「生活を尊重するまち」福祉・保健の向上についてでございます。


 昭和六十三年度予算におきましては高齢者福祉を初め、福祉水準の底上げを最重点に据えて検討いたしました結果、この分野における新規・拡充事業はあわせて五十六事業に上っているのでございます。これは前年度の三十八事業と比べ、五割増の事業数になるのでございます。


 急速な高齢化の進行は、さまざまな面から区民生活に大きな影響を及ぼし、区政に寄せるご要望は多岐にして広範かつ切実なものがあり、今後ますます増幅の一途をたどると思うのでございます。


 このような時期に、区民それぞれの多様な老後の生活設計にタイムリーに対応し得る総合的方策を検討する組織として、福祉部内に「高齢化対策室」を設置いたしたいと考えております。同対策室におきましては福祉・保健衛生・教育等の各部門と連携を図りつつ、各種調査の実施、専門意見の聴取、幅広い区民のご意向の集約などを行いまして、昭和六十四年度には審議会を設置いたし、大所、高所からご審議をいただきまして、その答申を得て、二十一世紀に向けて長期的視点に立った「高齢化対策総合プラン」を策定してまいりたいと考えているのでございます。


 障害を持つ人々や高齢者・幼児などが安心して生活し、平等に社会参加ができますよう、総合的な福祉環境の整備を行うために、東京都の指針を参考に、本区独自の思いやりと潤いに満ちた「福祉のまちづくり整備要綱」を制定いたし、区内の公共的建築物等の建築主及び管理者に施設整備に協力していただくことにいたしております。


 本区におきましては、これに先立ち率先して福祉環境の整備を図るべく、昭和六十三年度予算に豊島荘、区民センター、ことぶきの家、出張所等二十か所の施設につきまして、階段手すり、出入口段差解消、身体障害者用トイレの設置等の整備費を計上したのでございます。


 次に建設第二年次を迎えます特別養護老人ホームと東池袋地区の老人いこい室・児童館等合築施設の建設につきましては、二事業とも順調に工事が進捗しておりますので、昭和六十三年度予算に所要の建設経費を計上いたしました。特別養護老人ホームは六十四年度当初から老人いこい室等合築施設は、本年十月の開所を予定しておるところでございます。また、双方の施設とも高齢者在宅サービスセンターを併設しているのでございます。


 なお、懸案になっております長崎厚生会館の改築につきましては、昭和六十五年度中の開設を目指して設計経費を計上いたしましたが、改築に当たりましては第六出張所、老人いこい室のほか、高齢者在宅サービスセンター・区民集会室及び現在、長崎保健所内に設けております休日診療所をここに移設するとともに、新たに歯科診療の休日診療所をも併設する予定でございます。


 次に老人の住宅問題につきましては、かねてから老人居室提供事業を実施しておるところでございますが、その借上料の上限を引き上げますとともに、新たに老人用アパートを建設していただく方を対象に、建設費の利子補給並びに火災保険料、家賃保証保険料の助成を行いまして、老人の居住にふさわしい住環境の整備を図り、全室長期間借り上げのアパートを確保してまいりたいと考えております。


 次に第二福祉作業所及び第二生活実習所につきましては、駒込地区の林野庁跡地に、周辺住民の方々のご理解を得ながら、六十四年度末の竣工を目指して、昭和六十三年度中に着工いたしたいと考えております。


 また、懸案の区民葬祭場の建設につきましては、取り付け道路問題が都区間で決着をみましたので、土地開発公社において用地を取得し、昭和六十三年度中に建設ができますよう努力してまいる所存でございます。


 続いて第三の柱であります「活力のあるまち」地域経済の振興について申し上げます。


 円高、地価高騰など内外の経済情勢が著しく変化する中で、対応に苦慮している区内の各種業種の方々に対しまして、新たに業種別の景気動向調査を実施いたし、経営戦略の指針にしていただきますとともに、中小商工業融資のうち、運転資金・小規模企業資金及び小口緊急資金の貸付限度額の引き上げと返済期間の延長を図り、また年末特別資金の貸付限度額の引き上げを図りまして、厳しい経済環境に直面している各事業者が、これに積極的に対処し、健全な発展が遂げられますよう支援してまいりたいと考えております。


 また、商店街を単位として助成しております事業の中で、魅力ある商店街づくりのために実施しております「モデル商店街づくり」につきましては、それぞれの補助限度額を引き上げ、基本計画作成については二百万円から三百万円に、整備事業実施については二千万円から五千万円に、コミュニティ活動については百万円から二百万円に改定しようとするものでございます。


 さらに「商店街共同施設整備事業」につきましても、カラー舗装、アーチ、装飾灯、その他の共同施設についてもそれぞれ補助限度額を引き上げますとともに、新たにアーケードを対象事業に加えるものでございます。


 また、商店街振興組合等の法人化対策につきましても、設立助成、運営助成とともに大幅な改善を図ったところでございます。


 第四の柱は「災害に強いまち」、防災対策についてでございます。


 昭和六十年度に執行されました都議会議員選挙に絡み、杉並区における防災行政無線の電波乗っ取り事件に端を発しました電波妨害防止対策につきましては、郵政省の地域防災無線構想の検討結果が明らかになり、また設備機能の検討内容がまとまりましたので、昨年の第三回区議会定例会で債務負担について、また第四回定例会で契約について、それぞれご議決をいただきましたが、今回、その経費一億九千万円を計上いたしたものでございます。


 また、防災思想の普及及び意識の啓発事業の一環として、各出張所区域を単位とする地域別防災マップを四か年計画で作成することとし、昭和六十三年度では四地区分を作成して、当該区域の全戸配付を予定いたしております。


 水害の警戒時に雷雲の動きなど、狭い範囲の気象情報を即刻入手し、迅速かつ的確な対応を図り、被害を最小限に食い止めることができますよう、定期的に気象情報を購入し、応急対策の充実を図ってまいりたいと考えております。


 第五の柱は「潤いのある街」すなわち都市整備に関する分野でございます。


 本区の特性は池袋を中心とする副都心機能と、それを取り巻く高密な居住機能という二つの異なる都市機能を組み合わせた複合都市という特性を持っております。


 本区の町づくり事業は、それぞれの地域が抱えている都市整備上の課題に対しまして、地域住民の積極的な参加を得ながら、協議会等を設置し、区と住民が協働して多様な技術的手法を駆使しつつ、長期的展望に立脚して総合的に進めておるところでございます。


 昨今、それぞれの事業が新たな段階に進んできており、より効果的な密度の高い指導・援助など、きめ細かな対応が望まれておるところでございます。


 また、事業の進展する過程で共同化や建てかえを誘導する際に、権利者間の調整や各権利者間の個別事情の相談など、行政による対応では処理の難しい問題が顕在化してまいります。これらに対処するためには、公共性と中立的主体性を有し、かつ弾力的な対応のできる、信頼性の高い機関の設置が必要となってまいります。


 このような状況を踏まえまして、昭和六十四年度当初の設立に向けて「街づくり公社」(仮称)の設立準備を効果的に進めてまいりたいと考えております。


 区民の日常生活に密着した生活道路は、快適な住環境の確保と災害時の安全性を高める上で重要な役割を果たしておりますが、本区内には建築基準法で定める幅員四メートル未満の狭あいな道路が多く、消防・救急活動や日照・通風などに大きな障害となっております。


 昭和六十三年度から新たに実施を予定しております「狭隘道路拡幅整備事業」は四メートル未満の道路に面する建築物をその個別建てかえ時に、段階的かつ着実に敷地の接する道路部分を拡幅し、狭隘道路の解消を図ろうとするものでございます。


 次に公園・児童遊園の整備でございますが、自然環境の回復とレクリェーション環境の創造を目的として、千川児童遊園の一部をありし日の千川上水の復活をイメージした親水公園に整備してまいりますほか、公園一か所、児童遊園三か所の整備を行いますとともに、公園十か所、児童遊園三十か所に時計塔を新設してまいりたいと考えております。


 新規の公園・児童遊園の用地取得につきましては、従来の四千平方メートルから五千平方メートルに引き上げまして、その買収経費六十四億円を土地開発公社の予算に計上を予定しているのでございます。


 次に放置自転車対策についてでございますが、昭和六十三年四月一日から「東京都豊島区自転車等の放置防止に関する条例」及び「東京都豊島区立自転車等駐車場条例」がいずれも施行されますので、池袋駅西口一帯を本区第一号の放置禁止区域に指定し、池袋駅西及び池袋駅北の二か所の自転車駐車場を開設するものでございます。


 また、池袋駅東口につきましては、池袋駅前公園の北側都有地及び国有地に昭和六十四年四月開設を目途に、半地下式の自転車駐車場を建設したいと考えております。


 また、かねて要望してまいりました西武池袋線東長崎駅の南口及び北口の二か所に西武鉄道の自転車駐車場が建設されることになりましたので、東長崎駅周辺を放置禁止区域に指定いたしますとともに、撤去自転車の保管所を一か所新設するものでございます。


 以上が基本計画に定める五本の柱にかかわる新規・拡充の主な施策の概要でございます。


 次に区が処理する事務事業の増大化に伴いまして、ますます事務室等のスペースが狭あい化となり、事務の効率的執行に支障を来しますとともに、来庁する区民の方々に大変ご迷惑をおかけしているのでございます。


 二十一世紀に向けて「みんなで築く生活文化都市」を実現してまいりますためには、区民サービスの飛躍的な向上を期するとともに、活力ある区政を展開する場として、効率的・近代的事務執行を担保する新しい庁舎の建設を具体化する必要がございます。


 建設計画の具体的な内容は部内検討を経まして、昭和六十四年度に学識経験者を含めた審議会を設置いたし、多角的な見地から慎重な審議検討をお願いいたしまして、昭和六十八年度の着工を目途に財源の手当を含め、計画を進めてまいりたいと考えております。


 このような前提のもとに、庁舎及びこれに併設する施設の建設基金を創設いたし、昭和六十三年度から積み立てを開始いたすべく、三十億円を計上したのでございます。


 以上をもちまして、昭和六十三年度一般会計予算の概略等につきましての説明を終わらせていただきます。


 この一般会計に国民健康保険事業及び老人保健医療の二特別会計を加えますと、本区の昭和六十三年度の予算総額は約九百三十九億八千万円となり、前年度当初に比ベ一一・二%の増となったのでございます。


 最後に、今回これと同時にご提案申し上げております昭和六十二年度の最終補正予算につきまして申し添えさせていただきます。


 一昨年秋以来の異常な地価高騰による都区財政調整上の用地費算定の臨時措置につきましては、ご案内のとおり区長会より昨年十月以来、たびたび都知事に対し緊急要望を重ねてまいりましたが、今回、その成果として昭和六十二年度都区財政調整の再調整において九百八十九億円が算入されるという異例な措置が図られたのでございます。


 このうち、本区の措置額は三十九億七千三百万円と見込まれるのでございます。


 したがいまして、この際、用地取得基金を創設いたしまして四十億円を計上いたし、昭和六十二年度に発足いたしました豊島区土地開発公社へのいわば財源的な裏付け基金として運用してまいりますとともに、必要に応じて基金を直接取り崩して土地を購入するなど、機動的、弾力的に運用してまいりたいと考えているのでございます。


 以上をもちまして予算に関するご説明を終わらせていただきます。


 本日ご提案申し上げます案件は条例十八件、予算六件、その他一件のあわせて二十五件でございますが、各案件につきましては後刻助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜りますよう衷心よりお願いを申し上げる次第でございます。


 これをもちまして私の招集挨拶、及び所信表明を終わらせていただきます。


 どうもありがとうございました。