平成5年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成五年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には東京都議会議員選挙を目前に控え、何かとお忙しい折にもかかわりませず、ご出席を賜わり深く感謝を申し上げる次第でございます。


 また、先の臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成が決定され、豊島区政の一層の発展を目指して、議会活動が鋭意展開されておりますことに対し、衷心より敬意を表する次第でございます。


 この際、第二回定例会の開会にあたり、所信の一端を申し述べたいと存じます。


 まず、経済の動向でございますが、今月十日発表されました六月の政府月例経済報告によりますと、「日本経済は調整過程にあり、総じて低迷しているものの、回復に向けた動きが現れてきている。」とされており、翌十一日、日本銀行が発表いたしました五月の企業経済短期観測調査、いわゆる日銀短観におきましても、「平成元年十一月調査から続いていた低下傾向に三年半ぶりに歯どめがかかった」とはいえ、調査後に一段と進行した円高の影響などから、「これで着実な景気回復軌道に乗ったとはまだ即断できない。」と記述されております。


 一方、民間調査機関の多くも、「底入れ」とは言えるにしても「底離れ」はかなり先になると予測しており、残念ながら依然として経済の先行き不透明感は払拭しきれていないと言わざるを得ないのでございます。


 先般、大蔵省が発表いたしました四月末現在の国の平成四年度一般会計税収実績によりますと、土地取引の停滞や企業業績の悪化などにより、特に所得税と法人税の落込みが大きく、昨年末に減額補正した水準よりも、さらに税収が三兆円以上不足する見通しとなる模様でごさいます。このため、政府は十一年ぶりに決算調整資金を活用し、歳入不足分を穴埋めする方針であると報じられております。


 バブル崩壊による不況の長期化・深刻化は、国・地方を問わず、かつてない財政環境の悪化を招来しておりまして、ご案内のとおり本区におきましても、平成四年度には補正三号予算におきまして、十七年ぶりに十五億五千二百万円の減収補填債の発行を余儀なくされた次第でございます。また、平成五年度予算の編成におきましても、経常的経費の縮減や新たな施設建設経費の繰延べを行う一方、起債や各種基金の活用等によりまして、一般会計予算の伸び率を一・二%とし、辛うじて現行行政水準の維持向上を図ることができたと考えております。


 しかしながら、先に述べましたような国の税収の状況を勘案いたしますとき、平成五年度予算に計上いたしました一般財源への影響が懸念されますばかりか、平成六年度の予算編成につきましても、平成五年度以上に大変厳しい局面を予測せざるを得ないものと改めて認識いたしております。


 このため、平成五年度予算の議決成立を待って、庁内に「緊急財政対策特命委員会」を設置いたし、直ちに平成六年度予算の編成に向けて、その基本的な方針を策定いたすべく、具体的な方途の検討を開始いたしますとともに、平成五年度につきましても、全職員の創意と工夫により、いま一度、なお一層の経費節減を図るための予算配当方針につきまして、全部局に示達を行った次第でございます。


 したがいまして、今後の財政運営につきましては、極めて厳しいかじ取りが要求されると考えられますが、初心に立ち返り、切実な区民要望を真摯に受けとめ、施策の優先劣後を明確化することなどにより、トータルとしての区民福祉の維持向上を期し、全力を挙げてこの財政危機を克服してまいりたいと考えております。


 次に、当面する区政の重要課題につきまして、概略ご報告申し上げます。


 まず第一に、都区制度の改革についてでございます。


 ご案内のとおり、平成二年九月の第二十二次地方制度調査会の答申を受けまして、都区双方が昨年の十月、それまでの検討経過を「都区制度改革に関する中間のまとめ」として取りまとめた次第でございます。その後、東京都及び二十三区それぞれにおきまして、推進組織の整備・拡充を図るとともに、平成七年四月の制度改正実現に向けまして、その動きがにわかに高まってまいりました。目下、都区間におきまして、移管事務事業等の詳細に関する具体的な検討作業を精力的に進め、年内には合意に達するべく努力を重ねておりますが、今後経過の節目ごとにできるだけ速やかに区議会にご報告申し上げ、円滑な制度改正を実現できますよう努力を傾注してまいりたいと考えております。


 なお、東京都は都区制度改革の推進にあたりまして、都区間で協議を進める一方で、関係者の理解を得る努力を行ってきておりますが、五月の区長会総会におきまして、都側から清掃事業の移管に関して当該職員団体と協議を進めてまいった結果、清掃事業のあり方論として、「特別区が基礎的自治体として清掃事業を行う場合には、単に収集・運搬にとどまらず、処理・処分を含め一貫して責務を果たすことが原則である」との基本的認識で、職員団体と合意に達した旨、報告がございました。これは、これまでの運動の成果としての第二十二次地方制度調査会の「答申」や「都区制度改革に関する中間のまとめ」の枠組みから大きく踏み出す内容となっておりますので、今後この清掃事業の移管につきまして、都側からどのような形で区側に対し新たな提案をしてくるか、重大な関心を持って見守っているところでございます。


 第二に、リサイクル事業の推進についてでございます。


 本区におきましては、平成四年度をリサイクル推進元年と位置づけまして、リサイクル資源の回収に積極的に取り組み、二十三区の先頭に立つ実績を上げてきたところでございますが、平成五年度ではこれをさらに拡充・強化することといたし、所要の予算措置を講じたところでございます。


 二十三区全体といたしましても、家庭系を中心にリサイクル事業を推進いたすべく、その基本方針として本年一月の区長会総会におきまして、「平成五年度リサイクル事業の推進方針等について」を決定いたしております。一方、都におきましては、資源ゴミ収集の平成五年度拡充事業を見送るなど、リサイクル事業の推進をめぐる都区間の取組み体制に大きな変化がございました。このため、去る五月の都区協議会におきまして、新たに都区双方が協力するリサイクル事業のあり方を検討するための「都区リサイクル推進協議会」の設置を決定いたし、現在、都の支援・協力体制を含め、都区間の役割分担の見直しにつきまして、本年十月を目途に鋭意協議を進めているところでございます。


 第三に、住宅施策の推進についてでございます。


 過日、先の第一回定例会において議決されました豊島区住宅基本条例に基づき、豊島区住宅対策審議会を設置いたし、豊かな住宅及び住環境の創造を目指した住宅施策の指針となる「豊島区住宅マスタープラン」の策定につきまして、諮問申し上げたところでございます。また、本年四月、新たに都市整備部に住宅計画課及び住宅事業課を設け、これまで福祉部で所管しておりました高齢者住宅等の事業や区民部で所管しておりました住宅修築資金等の事業を含め、住宅施策の総合的かつ一元的な推進を図ることといたした次第でございます。


 第四に、高齢者に対する保健福祉サービスの推進についてでございます。


 ご案内のとおり、平成二年六月、老人福祉法及び老人保健法の改正により各地方公共団体にも「老人保健福祉計画」の策定が義務づけられましたが、本区におきましては、平成三年三月に策定いたしました「豊島区高齢社会対策総合計画」の中にこの趣旨を取り込み、高齢社会への総合的な対応を目指して各種の施策の推進に取り組んでいるところでございます。しかしながら、その後平成四年六月、厚生省から「老人保健福祉計画」についての作成指針が具体的に示されましたので、このたび本区の総合計画を補強する観点から、その事業計画の一部について改めて見直しを行い、法定計画としての性格を持つ「豊島区高齢者保健福祉計画」を策定することといたしました。この策定にあたりましては、庁内に高齢者保健福祉計画策定委員会を設けますとともに、区内の高齢者約一万五千人を対象としたニーズ調査を並行して実施いたし、また、学識経験者及び関係団体の代表者等で構成される「高齢社会対策推進区民会議」において意見を聴きながら検討作業を進めてまいりますが、素案がまとまり次第、区議会にご報告申し上げ、そのご意見を承りまして、平成五年度中を目途に策定をいたしたいと考えております。


 第五に、地元の皆様はもとより、池袋の街づくりにとりまして数十年来の悲願でありました新田堀踏切並びに第一鎌倉踏切の解消が、今月二十七日、ようやく実現する運びとなりました。明治通り並びに区道(豊28号)とJR線路敷との立体化工事は、平成元年度から平成七年度までの予定で施工されておりますが、このたび、下り線部分の線路敷掘下げ工事が完了いたしました。この二十七日以降は、この掘り下げた部分を使用いたしまして中距離電車等が単線運行されますので、新田堀踏切並びに第一鎌倉踏切そのものは、これにより廃止されることとなる次第でございます。なお、さらに残る上り線部分の工事及び橋梁架替え工事につきましては、引き続いて施工されることになっております。豊島区議会はもとより、長年にわたり踏切解消のため非常なるご尽力を重ねられた多くの方々に対しまして、ここで深甚なる敬意を表し、感謝の念を捧げたいと存じます。


 最後に、本日ご提案申し上げます案件は、条例五件、契約一件、譲与一件の合わせて七件でございますが、各案件につきましては、後刻助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。


 これをもちまして、私の招集あいさつ並びに所信表明を終わります。