本日、ここに平成五年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には何かとご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜り深く感謝を申し上げます。
ことしは釧路沖に始まり、能登沖、北海道南西沖と大きな地震が発生しますとともに、冷夏、長雨の異常気象に加え、相次ぐ台風や豪雨の襲来という記録的な自然災害の年となりました。このため、全国各地で多くの方々が犠牲になり、あるいは被災をされております。豊島区内におきましても、八月二十七日台風十一号により百件余の床上、床下浸水等の被害がございました。まずもって、これら被害を受けられました多くの方々に対しまして心からのお見舞いを申し上げたいと存じます。
さて、景気低迷が長期化、深刻化している我が国の経済情勢についてでございますが、今月十四日、経済企画庁から発表されました国民所得統計速報によりますと、本年四月から六月期のGNPは、個人消費、設備投資の落込み等から、実質で前期比〇・五%のマイナス成長に転落したと報ぜられております。しかも、その後に続く急速な円高と異常気象の追打ちを受けて、景気は足踏み状態から底割れの恐れさえ出てきたとの見方もございまして、企業収益の悪化、雇用不安の増大等と相まって、経済状況は残念ながら一段と冷え込んでいるものと認識いたしております。このため、政府は今月十六日、景気テコ入れ策として六兆二千億円に上る緊急経済対策を打ち出し、続く二十一日には日銀からバブル崩壊後第七次の公定歩合引下げが発表されたのであります。しかしながら、これらによっても、今後景気が回復軌道に乗るという明るい見通しを得るには、なおほど遠いとの観測が有力であります。
このような状況の中で、平成五年度都区財政調整の区別算定につきまして、既にご案内のとおり、去る七月十五日の都区協議会において決定されましたが、豊島区の算定結果は、基準財政収入額及び基準財政需要額のいずれも本区の想定を超えたものとなっておりまして、普通交付金におきましては、予算計上額を約十九億円下回るということになったのでございます。これは直接的には区税収入等の算定にかかわる補正係数にも一因がありますが、厳しい景気後退局面の中で、財政調整交付金の原資である調整三税のうち、市町村民税法人分が三年連続して大きく落ち込み、これが普通交付金の減少に影響を与えたものであると考えております。また、財政調整交付金が予算に比し減少する一方で、都区財政調整の当初算定で用いております区税の六月調定も、特別区民税、中でも土地等にかかわる譲渡所得が大幅に減少し、その結果、本年度の決算見込みでは約十四億円の予算割れを生ずることが想定されるなど、本区財政を取り巻く環境は極めて深刻であると言わざるを得ません。
このため、当面平成五年度の予想外の難局をいかに克服していくかという課題につきましては、その財政運営により一層の創意工夫を凝らしてまいりますとともに、平成六年度予算編成に向けましては、中・長期的視点に立ちつつ、新たな活路を切り開くべく、全庁挙げて取り組んでいるところでございます。
豊島区議会のさらなるご指導とお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
この際、本年度の重点施策にかかわる主要な事務事業等の進捗状況につきまして、簡潔にご報告を申し上げます。
まず第一に、中小商工業者への支援についてでございますが、深刻な経営環境の中で、区内の中小商工業者の方々のご苦労もいかばかりかと推察しているところでございます。このため、本年度の中小商工業融資につきましては、既に本年度予算におきまして、預託原資を二十億円から三十億円に大幅増額いたし、その貸付目標額を百億円から百五十億円へと拡充して、多くの資金需要に対応することといたしましたが、その結果、八月末までの貸付件数は対前年度比一四八%と大きな伸びを示しており、貸付総額も既に百五十六億円を超え、達成率は一〇五%となっております。しかしながら、景気回復は依然不透明であり、また今回の公定歩合第七次引下げをも勘案いたしまして、各種資金の貸付利率につき、十月貸付実行分から本人負担分をさらに〇・二ポイント軽減することといたしました。また、九月末まで延長いたしました緊急特別資金の貸付につきましても、さらに来年三月末まで再延長することといたしたところでございます。
第二に、住宅対策についてでございます。区民の住生活の安定を図り、もって生活の豊かさを実感できる住宅及び住環境の創造を目指した豊島区住宅基本条例に基づく住宅マスタープランにつきましては、先般住宅対策審議会より四項目の付帯意見を付した答申をいただき策定をいたしたところでございます。今後は、本答申のご趣旨をも尊重しつつ、住宅マスタープランに添って区民住宅や福祉型住宅の整備を着実に進めてまいりたいと考えております。また、区民の方々が自ら居住する住宅の建設、購入または増築に際し必要となる資金の一部について、区が金融機関に斡旋し、その利子の一部を助成する豊島区住宅建設資金融資あっせん及び利子補給事業につきましては、今月十六日からパンフレットの配付を行うとともに、制度の周知を図り、来月十八日から申込みを受け付けることといたしております。
第三に、高齢者介護相談センターについてでございます。要介護及び虚弱高齢者への福祉・保健サービスを一体的に推進することを目的といたしましてこの四月に開設いたしました高齢者介護相談センターの運営状況でございますが、前年度までの各担当部局における個別の対応と比較いたしますと、訪問看護指導事業の新規認定、住宅改造費助成事業、日常生活用具の給付事業等の実績は、それぞれ大幅に増加しております。しかしながら、切実な区民要望が多くある中で、いまだ検討課題も残されております。このため、早急に体制の整備を図るなどいたしまして、区民の方々への的確かつ迅速な対応ができますよう積極的に努力してまいりたいと考えております。
第四に、福祉のまちづくり事業についてでございます。本年度は池袋駅周辺地区で進めてまいりました福祉のまちづくりモデル事業の最終年度にあたるわけでございますが、これまでJRに対しまして要請を続けてまいりました池袋駅二基、巣鴨駅一基のエスカレーター設置工事がようやくこの七月着工の運びとなり、来年三月の稼働を目指し、現在JRの手で工事が進められております。
第五に、リサイクル事業の推進についてでございます。まず、二十三区で初めて着手いたしましたトレー・ペットボトルの回収につきましては、この七月から駒込・巣鴨地区を皮切りに事業を開始いたしました。予期以上の成果を上げております。今後さらに対象地区の拡大を図り、今年度中には区内全地区において実施することといたしております。また、印刷段階で発生する残紙等を利用したノートの作成・活用につきましては、区内の印刷業者の方々のご協力をいただき、去る八月十日、再生自転車のルートに乗せて、ガーナ、ガンビア、ケニア等の国々の子供たちに寄贈を行い、国際協力として、また資源の再利用としてマスコミでも大きく取り上げられ、反響を呼んでいるところでございます。さらに、九月十四日からは区内の児童生徒にも配付を行い、資源活用の意識啓発に大いに寄与しているものと考えております。また、区内事業者の方々のリサイクル・ゴミ減量の促進を目的としたリサイクル推進事業者認定事業につきましても、今月六日、学識経験者等を含む委員会を発足させたところでございます。
第六に、施設建設事業についてでございます。内水氾濫対策の一環としての都下水道局による雨水地下調整池の整備にあわせて進めてまいりました総合体育場の全面改修工事がこのたびようやく完了いたしまして、来る十月十日、体育の日に落成式を迎えることとなりました。また、巣鴨五丁目地区の民間ビル内に整備を進めてまいりました高齢者在宅サービスセンター、児童館及び区民集会室につきましては、今回条例をご提案申し上げておりますが、来る十二月一日に開設いたすべく準備を進めているところでございます。
最後に、本日ご提案申し上げます案件は、条例五件、譲与一件のあわせて六件でございますが、各案件につきましては後刻助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜わりますようお願い申し上げます。
これをもちまして、私の招集あいさつ並びに所信表明を終わります。