本日ここに、平成六年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、何かとお忙しい折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げる次第でございます。
また、先の臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成が決定され、豊島区政の一層の発展を目指して、議会活動が鋭意展開されておりますことに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。
この際、第二回定例会の開会に当たりまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。
まず、我が国の経済動向についてでございます。
去る六月十日公表されました日銀短観によりますと、状況判断指数に小幅ながら改善傾向が見られることから、企業の景況感が回復しているとの見方が示されております。続いて二十一日、経済企画庁は、同日発表いたしました国民所得統計速報及び四月の景気動向指数から、「景気回復に向けて上向きの力が動き出した可能性がある」との判断を示しているのでございます。しかしながら、対ドル円相場は、二十一日のニューヨーク市場において戦後初めて一ドル百円を突破し、円高が再び急速に進む気配を見せましたことから、政府は本格的回復につながるかどうか、為替レートの動向など不確定要素もあるとの懸念を示していると報ぜられておりまして、景気動向の不透明感は、まだまだ払拭しきれていないと言わざるを得ないと思っております。
ご案内のとおり、バブル崩壊後のかつてない国・地方の財政環境の悪化は、本区におきましても深刻な影響をもたらしておりまして、財政状況は依然として厳しいものがあると認識いたしております。
このため、平成五年度は、区議会のご指導、ご協力のもと、緊急財政対策特命委員会を設置いたしまして当面の対応策を打ち出すなど、区民福祉の総量を後退させることなく、平成六年度予算を編成することができましたが、引き続き極めて厳しいかじ取りが要求されているわけでございます。このため、総合経済対策による特別減税の実施に伴う区民税の減収見込額約三十六億円余につきまして、その財源としての減税補填債の発行を予定するなど、新たな財源確保に努めますとともに、その一方で改めて全職員の創意と工夫により、なお一層の経費節減を図りつつ、切実な区民要求に真剣かつ的確に応えることができますよう、新たに中期的な展望のもとで、本区における今後の行財政運営の効率的なあり方を追求する「臨時行財政改革研究会」を設置いたしまして、全力を尽くしてこの財政危機の克服に努めてまいる所存でございます。
次に、特別区制度改革についてでございます。
ちょうど一カ月前の五月二十四日、東京都より、今回の制度改革の主要な事項でございます清掃事業の区移管にかかわる「特別区における清掃事業の実施案」が区長会に提示をされました。顧みますれば、区長の公選制や保健所の区移管を主眼といたします前回の改革実現後、昭和五十六年の「特例市の構想」から始まり、昭和六十一年の都区合意である「都区制度改革の基本的方向」や、平成二年の第二十二次地方制度調査会答申を経て、平成四年十月の「都区制度改革に関する中間のまとめ」へと統く長い期間にわたりまして、この問題について、都区双方で検討・協議を進めてまいりました。今回の都案の提示は、これまでの制度改革の歩みの中での最終段階における一つの大きな山場とも言うべきものでございます。他の移管対象を含め三十事務事業、並びに税財政問題など、さまざまな留意すべき課題もありまして、現在最終素案合意に向けて、精力的な取組みがなされているわけでございますが、豊島区といたしましては、区議会のご意見をも承りながら、区としての意思を表明してまいりたいと考えております。特に、事業の移管時期につきましては、豊島地区清掃工場の建設計画の進捗状況をも視野に入れつつ、円滑な移管受入れが実現できますことを第一義といたしまして、対応してまいる所存でございます。
次に、区政の重要課題につきまして、概略ご報告を申し上げます。
まず第一に、住宅施策の推進についてでございます。
本区の住宅政策の総合的・計画的な推進を目指すため、昨年九月に策定いたしました住宅マスタープランに基づきまして各種の施策を計画いたしておりますが、今年度新規に開始いたしますファミリー世帯に対する住み替え家賃助成につきましては、この七月から広く区民の方々にその制度の周知を行いまして、九月から募集を開始いたし、年度末までには五十世帯について助成を実施いたしたいと考えております。
なお、高齢者に対します家賃助成につきましては、前年度末までの四十八世帯に加えまして、本年度に入りまして新たに十二世帯を認定いたし、これも年度末までには合計九十五世帯を対象といたす予定になっております。
また、来年度から入居が始まります区民住宅につきましては、住宅対策審議会におけるご審議、ご答申を踏まえまして、住居費負担のあり方や入居資格などについて定めます「(仮称)豊島区立区民住宅条例」を第三回定例会にお諮り申し上げまして、年内には第一回目、四十九戸分、年明けには第二回目、四十五戸分と、合わせて九十四戸分の募集を行いたいと考えております。
第二に、リサイクル事業の推進についてでございます。
本区はこれまで、リサイクル事業の推進につきまして、地球環境にやさしい都市を目指して積極的に取組みを行い、二十三区の中でもトップクラスの実績を挙げてまいりました。先にも述べましたとおり、清掃事業の区への移管が具体的な日程に上ってまいりましたことから、本区といたしましても、これまで以上にリサイクル事業と来るべき清掃事業との関連性を真剣に考慮し、区長会で設定いたしましたリサイクル資源の回収目標量の確実かつ持続的な達成を図るため、多角的な資源回収システムの確立をはじめ、区内へのリサイクル中間処理施設の設置等をも念頭に置きつつ、名実ともに資源循環型となる社会の形成を目指しまして、新たな視点からリサイクル施策の計画化・体系化を推進していく必要があると考えております。
一方、本年度のリサイクル事業への取組みにつきましては、商店街において発生する紙などをごみとせず、資源として活用することを目的とする「リサイクル商店街モデル事業」につきまして、既に染井銀座商店街、長崎十字会、目白通り二又商店会におきましてご協力をいただき、確実な成果を上げております。さらに、過剰包装の抑制、再生品利用の促進を図るための「簡易包装・再生品利用キャンペーン」につきましても、この秋の実現に向けて、準備を積極的に進めているところでございます。昨年度から二十三区に先駆けて新たに着手いたしましたペットボトルの回収につきましても、本年度さらに、食料品用容器等を対象品目に追加いたし、その拡充を図ったところでございます。
第三に、中小商工業者への支援についてでございます。
区の委託による区内の景況動向調査の結果を見ますと、来期には一部に回復が見込めるとの内容となっておりますが、全業種とも依然として厳しいとの分析でございます。また、さまざまな機会に、中小商工業者の方々が日々、大変なご苦労をされておられるご様子をお伺いいたしますと、区としての不況対策への取組みは、引き続き継続が必要であると強く認識いたしております。
なお、商工融資全体の現況につきましては、平成六年五月末現在での貸付残高は百九十四億円強となっておりまして、また、このたびの平成不況に対処するため、一昨年、平成四年七月から開始いたしました緊急特別資金の貸付件数の累計は、この五月末現在で一千百九十四件、貸付総額は四十億三千二百十六万円に達しております。一方、不況の深刻化に伴い、昨年の暮れ、十二月十六日に緊急の支援策として創設いたしました、区での損失補償による不況対策臨時特別資金につきましては、やはりこの五月末現在で二百五十八件、五億七百六十万円の貸付けとなっております。
第四に、高齢社会対策についてでございます。
高齢社会へ向けて緊急に整備が求められております特別養護老人ホームにつきましては、区立として二番目の「アトリエ村」が去る四月二十七日に落成式を迎え、昨二十三日現在、既に八十名の入所予定者を内定し、そのうち二十三名の方が入所を済ませておられます。この施設の運営につきましては、本年四月発足いたしました豊島区社会福祉事業団への委託といたしております。さらに、三番目の南長崎地区特別養護老人ホームにつきましては、本定例会に工事契約案件についてのご審議をお願い申し上げているところでございます。なお、上池袋地区に予定いたしておりました特別養護老人ホームにつきましては、現在まだ確定的とは申せませんが、その代替地といたしまして西巣鴨二丁目の大蔵省関東財務局西巣鴨職員住宅跡地を確保いたすべく、国との折衝を開始いたしたところでございます。
第五に、新庁舎・新公会堂の建設計画につきましては、昨年度末に基本設計が終わり、本年度から実施設計へと移るわけでございますが、区議会へのご報告の後、基本設計に基づきまして、区政連絡会、近隣地区説明会、あるいは広報特集号等によりまして区民の方々のご意見をお伺いいたしながら、十分なご理解をいただいて、慎重に進めてまいりたいと考えております。なお、新庁舎・新公会堂の実施設計に当たっての基礎的な資料といたすべく、環境影響予測調査をはじめ、いくつかの調査を実施することとしているのでございます。
第六に、豊島地区清掃工場の建設計画についてでございます。
東京都は、建設予定用地の取得が完了したことから、この四月、清掃工場の基本計画案を区議会に提示いたしますとともに、地域住民の代表の方々十五名及び都区職員十名からなる清掃工場建設協議会を設置いたしました。本区といたしましても、豊島地区清掃工場の基本計画案について、広く区民の方々に正しくご理解をいただくべく、五月二十五日号の広報としまにその概要を掲載いたしたところでございますが、清掃事業の区移管に当たりましては、本施設も移管対象となりましたことから、さらに重大な関心を持ちつつ、そのかかわり合いを強め、積極的な対応を図ってまいりたいと考えております。
最後に、本日ご提案申し上げます案件は、条例二件、契約五件、認定二件、合わせて九件でございますが、各案件につきましては後刻助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
これを持ちまして、私の招集あいさつ並びに所信表明を終わります。