平成7年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日ここに、平成七年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には、参議院議員選挙を目前に控え、何かとご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜り深く感謝を申し上げる次第でございます。


 また、先の臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成を決定され、豊島区政の一層の発展を目指して、議会活動が鋭意展開されておりますことに対しまして、改めて深甚なる敬意を表したいと存じます。


 本定例会は申すまでもなく、私自身も先の選挙を経て引き続き区長に就任いたしましてから初めての定例会でございます。ここに謹んで区民を代表される区議会の皆様に、今後の区政運営につきましてこれまで以上の特段のご指導、ご協力を賜りますよう衷心よりお願い申し上げる次第でございます。


 この際、定例会の開会に当たりまして、私の所信の一端を申し述べたいと存じます。


 私は今回の非常に厳しい選挙を通して、区政の各般にわたる区民の皆様の期待と要望がいかに切実なものであるかを痛感いたしております。


 特に本年一月に発生した阪神・淡路大震災の影響もあり、多くの区民の方々が防災対策に不安を訴えられておりました。


 また、少子高齢化、情報化、国際化という社会潮流の変化の中で、山積する課題に対する区民の皆様の熱い想いを肌で感ずることができました。


 この三月ご議決をいただきました新基本構想で謳う、二十一世紀に向けた新しい豊島区の将来像、「暮らし豊かにこころ輝く都市」の実現を目指して、誠心誠意心血を注ぎ、区民の皆様のご信託にお応えする決意を新たにいたしている次第でございます。


 さて、我が国経済における景気の動向でございますが、昨年十一月、経済企画庁は、このたびの平成三年五月から始まりました景気の後退局面が平成五年十月で底を打ち、その後は緩やかながらも回復基調にある旨の宣言、いわゆる景気回復宣言を行いました。しかしながら、日米経済摩擦に起因する本年三月からの急激な円高の進行は再び景気の先行きに不透明感を助長しており、景気の腰折れを懸念する声も強くなってきております。


 今月十三日の経済企画庁の月例経済報告におきましては、基本的な回復基調の認識は同様でございますが、一方で円高の悪影響が現実化したこと、家計調査の消費支出の減少、新設住宅着工戸数のマイナス傾向が続いていること、さらには四月の完全失業率が過去最悪になったこと等から、景気の回復が足踏み状態になっていることへの懸念が表明されております。


 こうした我が国の経済情勢は、本区財政状況への深刻な影響も計り知れず、今後の財政見通しに一段と暗い影を落とし、これまで以上に厳しい財政運営を迫られるものと覚悟いたしております。このため本年三月、新たに収入役を長とする豊島区行財政臨時調査会を発足させ、現在、既定事務事業の徹底的な見直しをはじめ、公共施設体系の再構築、行財政の体質改善などについて、行財政のあり方の基本的な視点に立ち返って、精力的に検討を進めておりまして、今後この調査結果を踏まえまして、全職員の英知を結集し、この難局に対処してまいりたいと考えております。


 次に、当面する区政の重要課題につきまして、概略ご報告申し上げます。


 まず第一に、防災対策についてでございます。本年一月の阪神・淡路大震災の発生は、我が国の防災対策に対しまして幾つもの基本的な事項にかかわる問題を提起いたしました。本区におきましては、地震の直後に、助役を長とする緊急災害対策点検調査委員会を設置し、また、この四月には専任の災害対策担当部長を設け、防災対策の推進体制の強化を図ったところでございます。ご案内のとおり緊急災害対策点検調査委員会におきましては、情報連絡体制など緊急に対処すべき十一の事項について、全庁を挙げて鋭意検討を進め、先般これを四十五項目に取りまとめ、中間報告として公表させていただきました。


 また、この検討の過程におきまして、直ちに実施に移せる課題につきましては、予算化を待つことなく取組みを開始いたし、具体化を図っているところでございます。


 例えば地方都市との災害時の相互応援協定の締結でございますが、二月の下旬から姉妹都市であります秩父市をはじめ、その他の交流のありました三自治体にも協定の締結について協議の申入れを行い、その後協定案文の検討などを経て、埼玉県秩父市とは六月七日、山形県遊佐町とは五月十九日、群馬県万場町とは六月五日にそれぞれ協定の締結を済ませております。七月には福島県猪苗代町との締結を予定いたしております。


 これとは別に二十三区全体でも、これまでの慣行的な協力体制から協定による相互応援体制の整備を図るべく、協議を進めているところでございます。


 また去る六月十三日には、幹部職員を対象とする抜打ちの非常参集訓練を実施したところでございます。さらに災害時の職員配備態勢などにつきましても、別途、区立学校長もメンバーに入れたプロジェクトチームを設けまして、新たな視点から検討を進めているところでございます。


 家庭用消火器や防災用品のあっせんにつきましても五月にはパンフレットを区の施設等に配置し、区民の方々に周知を図っているところでございます。


 なお、公共施設の耐震診断など、予算化を伴なう事業につきましては、本定例会にご提案申し上げる補正予算を第一次とし、今後順次、実現に向けて最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。


 第二に、新庁舎・新公会堂の建設計画について申し上げます。昭和六十三年度に基金を設置し、平成元年度から二カ年にわたる審議会でのご審議を経て、その後基本方針の策定、基本計画、基本設計へと進み、昨年度には実施設計に着手するなど、これまで平成九年度の着工を目指して、新庁舎・新公会堂の建設準備を進めてまいりました。しかしながら、平成不況の長期化から逼迫する財政状況のもと、区議会はもとより、区民の各層からのさまざまなご意見をいただきました。このため、昨年十二月には、着工の時期につきまして、平成九年度を固定的に考えることなく柔軟に対処いたしたい旨を表明させていただいたものでございます。


 こうした中、本年に入りまして、一月には阪神・淡路大震災の発生による大きな行政需要の顕在化、並びに三月には急激な円高の進行による景気回復に対する不安感の増高という、新たな事態が生じてまいりました。これらの環境の変化を踏まえまして、現下の厳しい状況を総合的に判断いたしました結果、新庁舎等の平成九年度着工は、誠に残念ではございますが、延期せざるを得ないと決断するに至りました。しかし、区の防災対策の中枢となる新庁舎建設の重要性、緊急性はむしろ高まっていると考えておりますので、今後区議会のご指導をいただきつつ、改めて着工時期等につきまして判断をいたしてまいりたいと考えております。


 第三に円高対策についてでございますが、このたびの急激な円高の進行、定着化は、輸出関連企業にとどまらず、経営基盤の不安定な中小商工業者の方々にはとりわけ深刻な打撃を与えております。さらに市中金利の低下などもございましたので、急遽、区の商工融資制度につきまして見直しを行い、本人の負担利率の引下げ等の改訂をこの七月から実施いたしたいと考えております。原則として年〇・三%の引下げとなりますが、これにより本人の負担はもっとも高い運転資金で年二・八%から二・五%へと引下げとなりますほか、平成四年七月に不況対策の一貫として創設いたしました緊急特別資金の本人負担は、年一・〇%から〇・七%へと引下げになるものでございます。さらにこの緊急特別資金につきましては、返済期間を七十二カ月から八十四カ月に、うち据置期間を六カ月から十二カ月にするなどの条件緩和を行うことにいたしております。


 第四に、東京都の豊島地区清掃工場の建設についてでございます。ただいま豊島区の都市計画審議会でご審議をいただいておりますが、今後東京都では八月四日開催の東京都都市計画地方審議会の議を経て、年内には着工し、平成十一年度の稼働を目指す予定でございます。なお、平成十二年四月に予定されます清掃事業の区への全面移管に際しましては、この工場も対象となっておりますので、これに円滑に対応できますよう、移管の準備には万全を期してまいりたいと考えております。


 最後に、本日ご提案申し上げます案件は、条例九件、契約二件、予算一件の合わせて十二件でございますが、各案件につきましては、後刻助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上ご協賛を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。


 これをもちまして私の招集あいさつ並びに所信表明を終わります。