平成8年第1回区議会定例会招集あいさつ・所信表明

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 本日、平成八年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位には何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げる次第でございます。


 この際、平成八年度の予算、その他の案件をご提案申し上げるに当たりまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。


 阪神、オウムをはじめ、数々の歴史的な事件を生んだあの悪夢の年に別れを告げて、ことしは、二十一世紀までに残された最後の五年の幕開けとなりました。


 バブル経済の崩壊という荒波をかぶってから五年、冬来たりなば春遠からじと申しますが、あまりにも長く険しい道のりが続いております。去る二月九日、政府は、月例経済報告で「緩やかながら再び回復の動きが見られ始めている」との判断を示し、事実上の景気回復宣言を行いました。回復感なき回復とも言われる今回の宣言が本格的な景気回復軌道へのスターティングボードになりますことを心から願ってやみません。


 さて、不況の長期化による影響は、国、地方を通して、財政状況に未曾有の危機的な様相を招来させております。国の平成八年度一般会計予算案では、景気対策等に配慮するということから、その規模を対前年度比五・八%増としてはおりますものの、税収等の極度の落ち込みなどにより、国債の発行額は過去最高で、うち赤字国債が、対前年度当初に比べ実に三・二倍にも達し、このため平成八年度末の国債発行残高は約二百四十一兆円に上ると見込まれているのであります。


 また、東京都におきましては、平成八年度の予算を「財政健全化元年の予算」と位置づけまして、これまた、過去最高となる都債の大量発行、また財政調整基金の全額取り崩しなどにより一般会計予算を編成いたし、対前年度マイナス一・五%の規模となっているのであります。


 本区におきましては、一般財源の大宗をなす特別区税と財政調整交付金が四年連続してマイナスとなるなど、一般財源が大きく落ち込む一方、防災対策をはじめ、福祉・保健、住宅、まちづくり等々、区政の取り組むべき重い課題は次から次へとメジロ押しに増高し、財源不足はこれまでにない巨額に膨らんでまいりました。これまでも基金や起債など、財政の対応能力を最大限に活用することで区民のご期待に積極的に応えるべく渾身の努力を重ねてまいりましたが、残念ながらここまでまいりますと、もはや限界を越えつつあります。


 ご案内のとおり、本年一月十五日付「広報としま」により、「区の財政に赤信号」という衝撃的なタイトルで区民の皆様に緊迫した区財政の概要をお知らせいたし、ご理解とご協力をお願いしたところでございます。区民の皆様のさまざまなご要望に右肩上がりの財政の中で、相当程度お応えできた時代もいつしか過ぎて、誠に残念なことですが、急速に落ち込みを続ける財源と、肥大化した歳出との間に広がる大きな落差をいかに縮めるかが当面至上の命題となったのでございます。


 このため、昨年十一月に提出されました豊島区臨時行財政調査会の報告を基本に、思い切った既定事務事業の経費縮減など、非常に困難な課題に全庁を挙げて取り組んだ次第でございます。しかしながら、これらの財政効果は約四十五億円にとどまりましたので、残余は基金の運用によらざるを得なかったのでございます。


 その結果、一般会計予算案の総額は九百三十八億五千六百三十一万七千円でございまして、対前年度比二・六%減となり、二年ぶり二回目のマイナス予算となりました。今回運用金として計上した額は七十六億円に上りましたため、今後運用できる基金にも底が見えてきた次第でございます。したがいまして、平成八年度を行財政改革元年と位置づけまして、冷厳な現実を直視し、区議会のご指導を仰ぎつつ、特別区財源の充実強化と内なる行財政改革にさらなる努力を重ねまして、何としてもこの難局を打開いたすべく決意を新たにいたしております。


 次に、重点施策を中心に一般会計予算に計上いたしました主な新規・拡充事業につきまして、概略ご説明申し上げます。


 まず第一は、防災対策でございます。


 この取り組みに当たりましては、阪神・淡路大震災からの教訓を真摯に学びとり、本区の防災体制をさらに強化するために、発災直後に設けました豊島区緊急災害対策点検調査委員会の最終報告、緊急対策51の提言を着実に実施することが肝要であると認識しておりまして、また公共施設や学校等の耐震性能を向上させるため、計画的に耐震診断を行い、その後必要な補強等の措置を講じていく必要があると考えております。


 このため、平成八年度におきましては、51の提言で掲げる救援センターの整備など二十項目二十四事項につきまして、三億四百四十六万円余の予算計上を行ったところでございます。そのうちの主なものを申し上げますと、まず救援センターの整備についてでございますが、従来の小学校区ごとの防災拠点でありました二十九の地域防災センター体制から、避難所としての機能強化を図りつつ、情報連絡、給水・給食、医療救護などの機能をも兼ね備えた防災拠点をすべての区立小中学校と都立高校、合わせて四十五カ所体制へと整備・拡充を図ろうとするものでございます。備蓄物資の分散配置や災害用医療資器材の事前配備、さらに各区立学校への防災井戸の掘削等々につきましても予算化を図っております。


 また、地域防災組織の強化につきましても、担当する防災指導員を六名から十二名に倍増するとともに、これまでに配備した資器材に加え、新たに救出・救助用の資器材などの追加を行いたいと考えております。


 また、飲料水確保のための公衆浴場への非常用発電機の設置も順次実施する予定でございます。


 災害弱者対策といたしましては、高齢者や障害者世帯向けに家具の転倒防止を、また木造住宅の簡易診断の際の図面作成経費の一部助成等を予定いたしております。


 区の災害対策本部態勢の機能強化につきましては、まず初動要因としての災害対策要員を十一名増員し、四十一名体制にいたしますほか、第一次参集要員であります職員の指名基準につきましても、職員の住居地が区から四キロ以内という現行の基準を十キロ以内へと拡大いたしました。また、より高度な情報通信が可能となる地域防災無線システムの整備につきましても、引き続き計画的に導入を進めたいと考えております。


 次に、公共施設の耐震補強等の実施についてでございます。昨年、点検調査委員会の中間報告に基づきまして、モデル区分を定め、抽出により、総合庁舎など五施設について耐震診断を行いましたが、その結果、旧耐震基準以前のいわゆる第一世代に属する施設につきましては、いずれも耐震性能に疑問性を指摘されましたところから、八年度におきまして、対象となる施設のほぼすべてについて、補強工事に向け、事業着手いたそうとするものでございます。また、区立小中学校につきましても同様にモデル区分を定め、現在、小中学校各二校、合わせて四校について耐震診断を行っておりますので、その結果を踏まえまして、一場合によっては八年度途中におきましても補正予算をお願いいたしたいと考えております。なお、橋梁につきましても昨年の診断結果に沿いまして空蝉橋の補強工事を実施する予定でございます。


 第二は、高齢者福祉施策について申し上げます。


 まず、特別養護老人ホームでございますが、区立としては三番目、定員五十名の風かおる里がこの五月にオープンすることになります。また、区の補助事業として建設中でありました社会福祉法人恩賜財団東京都同胞援護会による定員五十名の特別養護老人ホームゆたか苑が、この四月、長崎三丁目に開設されます。この施設は、豊島区民の優先的な入所が可能であるほか、区での痴呆性高齢者のショートステイ事業を実施するため、この施設に二ベッドを確保することにいたしております。さらに、区立として四つ目の特別養護老人ホームを西巣鴨二丁目の国家公務員宿舎跡に建設いたします。


 また、高齢者在宅サービスセンターにつきましては、特別養護老人ホームに併設の風かおる里が五月にオープンするほか、西巣鴨二丁目地区では特別養護老人ホームに併設して、さらに上池袋二丁目地区では健康診査センター等との併設によりまして、それぞれ建設工事を進めてまいります。また、池袋四丁目には区の補助事業として社会福祉法人シルバーセンター豊島により、平成九年度開設を目指して施設が建設中でございます。これらの施設整備によりまして、区内の高齢者在宅サービスセンターは合計十二施設と相なります。


 さらに西巣鴨二丁目地区の特別養護老人ホームにつきましては、本区で初めて自立生活維持のためのケアに配慮した軽費老人ホームでありますケアハウスを併設いたします。


 巣鴨三丁目のことぶきの家が本年十月にオープンいたしますが、この施設の完成によりまして、旧基本計画で目標として掲げました老人いこい室十六館構想が完了することになります。


 次に、二十四時間巡回型ホームヘルプサービスについてでございます。介護を要する高齢者等を抱えるご家庭のご労苦には大変なものがあると拝察いたします。この事業に対する切実なご要望をこれまでにもひしひしと痛感いたしておりました。平成八年度では駒込、巣鴨、西巣鴨、北大塚、南大塚、上池袋を対象地域として実施いたし、家族介護者の負担軽減の状況や要介護高齢者自身の日常生活動作の改善状況、さらには一チームが対応できる適正区域等を検証しつつ、今後、区内全域へと拡大を図ってまいりたいと考えております。


 第三は、保健医療・健康づくり対策でございます。


 まず、池袋保健所の移転改築でございますが、健康指向の高まりによる保健衛生サービスの需要増大と新たな事業をより積極的に展開するため、手狭となっております現在の保健所の移転を図りまして、あわせて口腔保健センター、休日診療所等を併設し、区における保健衛生行政の拠点施設として整備するものでございまして、八年度に工事に着手いたし、十年度の秋に移転をする計画となっております。


 健康診査センターにつきましては、清掃工場用地内のいわゆる還元施設の一部として建設するものでございまして、その機能といたしましては、がん検診をはじめ、各種健康診査の充実や新たに配備する高度医療機器の地域医療機関による共同利用を図るとともに、併設されますスポーツセンターの利用者に対するメディカルチェック、カウンセリング等を通しまして、地域医療の振興と区民の体力向上や健康づくりの拠点として位置づけ、今後の地域保健医療サービスの一層の推進を図ろうとする施設でございます。


 次に、小児事故予防センターの開設でございますが、小児期の死亡原因のトップが不慮の事故でありますことから、その予防のための啓発普及機関としてのセンターを全国では初めての試みとして池袋保健所内に開設するものでございます。


 また、乳幼児医療費助成につきましては、対象を三歳未満から就学前までに拡大いたそうとするものでございますが、この拡大部分につきましては所得制限を導入するものでございます。


 第四は、住宅の供給についてでございます。


 まず、都心共同住宅供給事業についてでございますが、この事業は、都心地域での人口の空洞化を防止し、良質な中高層住宅を都心に確保することを目的に、昨年二月、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法の改正によりまして、新たに創設された制度でございまして、その対象地域は環状七号線以内とされております。本区につきましても、その対象地域でありますことから、八年度において四カ所三百七十戸の共同住宅の整備を図ろうとするものでございます。


 次に、公共住宅の整備につきまして申し上げます。福祉住宅は高田一丁目の高齢者向け住宅十戸並びに借上げ型による二団地三十六戸でございまして、また区民住宅は借上げ型による一団地十九戸の整備を予定いたしております。


 八年度に供用を開始する住宅でございますが、まず長崎五丁目区営住宅二十六戸、要町一丁目の母子住宅十一戸、北大塚つつじ苑の高齢者向け二十戸、障害者向け二戸、区民住宅ソシエ四団地八十七戸を予定いたしております。


 次に、住宅マスタープランの改定でございますが、七年度までで住宅マスタープランのちょうど前期五カ年が終了することになりますので、この際に見直しを図ろうとするものでございまして、現在、住宅対策審議会におきまして改定案のご審議をいただいておりますが、八年度には新たなマスタープランを作成してまいりたいと考えております。なお、この五カ年における事業の進捗につきまして主なものを申し上げますと、高齢者住宅は目標百八十戸に対しまして百九十六戸、ファミリー向け区民住宅は目標二百五十戸に対しまして二百八十二戸、また区営住宅は目標九十戸に対して九十六戸となっております。高齢者や障害者、一人親家庭などに対するアパート提供事業につきましては目標百十戸に対して百三十六戸、家賃助成につきましては目標百五戸に対して百十六戸となっておりまして、おおむね全体として目標を達成できたものと考えております。


 第五は、リサイクル・清掃対策についてでございます。


 まず、資源分別回収パイロットプランでございますが、資源循環型社会の構築に向け、また清掃事業の移管を視野に入れまして、昨年七月から南長崎地区で順調にスタートいたしました。既存のごみ集積所を活用し、古紙、古布、牛乳パック、びん、缶、トレー、ペットボトルの七品目九分別で回収を行うものでありまして、清掃協力会や地元区民の方々の積極的なご協力をいただきながら、着実にその成果を上げているところでございます。したがいまして、この実績並びに多くの区民の方々のご要望を踏まえまして、平成八年度におきましては、さらに実施地区の拡大を図るため、新たに長崎地区並びに千早一丁目において取り組みを開始する次第でございます。この資源分別回収パイロットプランにつきましては、清掃事業の移管が予定される平成十二年度、西暦二〇〇〇年には区内全域にわたる新たな資源回収ネットワークといたすべく、その形成に向け一層の努力を傾注してまいる所存でございます。


 一方、新たなリサイクルの流れといたしまして、昨年六月に、いわゆる容器包装リサイクル法が制定されました。平成九年度には各市町村において、びん、缶、牛乳パック、ペットボトルの分別収集の実施が求められております。豊島区におけるこの資源分別回収パイロットプランにつきましては、これまで新法との整合性を考慮しつつシステムづくりを進めてまいりましたので、法律の趣旨等との大きな相違はないものと考えておりますが、特別区の区域における清掃事業は東京都、また家庭系のリサイクルは特別区といり役割分担のもとリサイクルに取り組んでおります現状から、この新法への対応につきまして、現在、都区間において協議を進めている状況でございます。


 次に、リサイクルの推進に関する都区の取り組みにつきましてご報告申し上げたいと存じます。申すまでもなくリサイクルは回収だけで終わるものではございません。回収した品目が再生品として生まれ変わり、人々の生活の場で利用されることによって、リサイクルの輪が完結するということができます。豊島区といたしましては、これまでリサイクルを積極的に推進するという立場から、再生ルートの確保及び拡大を図ってまいりましたが、このたび、ペットボトルにつきまして新たに防水シートや毛布等に再生できるルートを開拓いたしました。この新たなルートによって再生されました製品を防災用備蓄物資として活用を図ることが可能でございますので、今後の防災対策への取り組みの一環として役立ててまいりたいと考えております。


 次に、東京都の豊島地区清掃工場の還元施設である上池袋二丁目地区複合施設でございますが、一昨年の暮れから基本計画の作成に取り組んでまいりましたが、併設をいたします各施設の機能を十分に発揮させることを考えますとき、健康という視点からより機能を純化させることといたしまして、最終的には区の施設として、スポーツセンター、健康診査センター、高齢者在宅サービスセンター及び多目的ホールを中心とするコミュニティ施設の四施設に集約させ、計画を確定し設計を進めているところでございます。これに清掃工場の管理棟を合築いたしまして、本年十月には着工いたし、竣工につきましては平成十一年三月を予定いたしております。


 第六に、まちづくりについて申し上げます。


 まず、放置自転車対策についてでございますが、平成八年度は、現在JR駒込駅北口広場地下に工事を進めております約八百五十台収容の駒込駅北自転車駐車場が八年度末で八十八%まで工事が進捗するほか、さらに新たな事業といたしまして、JR巣鴨駅並びに現在工事中の都営地下鉄十二号線南長崎駅周辺における自転車駐車場の整備に具体的に取り組むことといたしました。


 次に、区民の森の整備でございますが、自然の樹木が数多く生い茂る池袋一丁目及び目白四丁目の用地につきまして、希少な緑を守り育て、身近に自然と触れ合うことのできる緑地として、あるいはこれまでの公園とは趣の異なる自然環境豊かな都会のオアシスとして整備してまいりたいと考えております。整備工事は、池袋の森、目白の森、いずれも年度の後半を予定しておりまして、年度内には開設できるものと考えております。


 次に、都市計画道路補助一七三号線の整備についてでございますが、区施工による本格的な事業着手に向け、想定交通量の調査並びに地元への説明会を開催することといたしております。この道路は池袋三丁目の住宅地を貫通する形で整備することとなりますため、まちづくりの視点からも周辺環境に十分配慮して推進してまいりたいと考えております。


 最後に、このほかの主な施設建設事業について申し上げます。


 まず、上池袋二丁目複合施設のスポーツセンターでございますが、清掃工場の余熱を活用した温水プールのほか、武道場、トレーニングエリア、多目的スポーツルームなどを備えまして、スポーツを楽しみながら心身ともにリフレッシュでき、また併設の健康診査センターとの連携により、豊島区にはこれまでにない健康増進施設として計画しているものでございます。


 次に、かねてより要望の強かった南池袋斎場の増築についてでございます。平成元年度に開設以来、利用実績は年々増加しておりまして、現在ではご案内のとおり常時待機者がおられる状況にございます。このため、さらにもう一組の葬儀に対応できますよう増築をいたすものでございまして、本年五月から十二月までの予定で工事を進め、来年の一月からは二組の葬儀への対応が可能となりますので、この間、しばらく区民の皆様にご不自由をおかけすることになりますので、ご容赦を賜りたいと存じます。


 以上をもちまして、平成八年度一般会計予算につきましての説明を終わらせていただきます。


 この一般会計予算に、国民健康保険事業会計、老人保健医療会計及び従前居住者対策会計の三特別会計予算を加えますと、本区の平成八年度予算の総額は千三百五億八千七百七万八千円、対前年度比一・〇%減となる次第でございます。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例二十三件、予算七件、合わせて三十件でございますが、各案件につきましては、後刻、助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜りますようお願い申し上げまして、招集あいさつ並びに所信表明を終わらせていただきます。