本日、ここに平成十年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜り深く感謝申し上げる次第でございます。
また、さきの臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成が決定され、豊島区政の一層の発展を目指して議会活動が鋭意展開されておりますことに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。
この際、定例会の開会に当たりまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。
さて、国内の経済情勢は、本年四月、政府が十六兆六千億円という過去最大の総合経済対策を打ち出したにもかかわらず、株価の安値膠着、円安傾向が続き、最近では、卸売物価の下落と景気後退が同時進行するデフレ懸念が一段と強まっております。このように、日本経済はますます氷結状態のまま混迷度を深めていると思うのでございます。
バブル経済崩壊後、自主財源の大宗を占める特別区税及び特別区交付金は急激に落ち込み、長引く景気の低迷は、住民税減税の実施と相まって税収の停滞をもたらすなど、区財政に大きな影響を与えておリます。本区では、累次の行財政改革計画の策定など全庁を挙げて取り組むとともに、なお不足する財源につきましては起債の活用や基金を運用するなど、ここ数年のとりわけ厳しい財政状況をひとまず乗り切ってまいりました。
しかしながら、限りある運用財源、暗雲低迷する景気動向を考えますと、目前に控えた二十一世紀を憂うることなく迎えるためには、なお一層渾身の力を振りしぼり、強固で安定した行財政運営基盤を確立することが、引き続きの行財政改革の重要テーマであると考えております。
そのため、年度早々の四月には行財政改革本部を開催し、改めて全庁的取り組み体制を整えますとともに、五月には組織等検討委員会を設置しまして、制度改革及び介護保険制度への対応はもとより、二十一世紀を見据えた中期的な行政組織整備を図るため、具体的検討に着手しております。また、学識経験者及び区民を中心に構成する行財政改革推進懇話会を引き続き開催するなど、総合的に行財政改革に取り組んでいるところでございまして、一定の成案を得次第、それぞれ区議会にご説明申し上げましてご指導を仰ぎたいと考えております。
次に、都区制度改革について申し上げます。
ご案内のとおり、今通常国会において地方自治法等改正法案が成立し、特別区を地方自治法上、基礎的な地方公共団体として明確に位置づけること、財政自主権を強化すること、清掃事業をはじめ区民に身近な事務を特別区に移管することの三位一体の都区制度改革は、ようやくにして平成十二年四月一日をもって実現する運びとなりました。
都区制度改革は、昭和二十七年の地方自治法改正により、特別区が都の内部的構成団体として位置づけられて以来、実に半世紀に及ぶ二十三特別区の自治権拡充運動であったわけでございます。
本区におきましても、区議会では、特別区制調査特別委員会を中心として精力的に調査研究を進められるなど、行政と一体となって取り組まれてまいりました。また、この間、多くの区民の皆様の多大なご支援とご協力を賜ってまいりました。
昨年は、法案の提出期限を過ぎてもなお東京都における清掃事業移管問題での調整が整わず、一時は実現に悲観的な空気が漂うなど緊迫した場面の連続でございましたが、悲願達成を願う多くの関係者のご努力によりまして、土壇場での法改正にこぎつけた次第でございます。
今回の制度改正により、特別区が行うこととなる事務事業の一つに清掃事業の全面移管がございます。
現在、上池袋二丁目に建設中の豊島地区清掃工場は、本年末竣工し、半年間の試運転を経て平成十一年七月から本格稼働いたします。そして、平成十二年四月には区に移管されることになりま’す。
振り返りますと、自区内処理の原則に立った清掃工場を持つという大きな行政目標のもと、清掃工場の建設誘致を実現し、あわせて、還元施設としてスポーツセンター、健康診査センター、高齢者在宅サービスセンター及びコミュニティ施設の複合施設を建設してまいりましたが、これらの施設も平成十一年六月から相次いでオープンすることとなります。一年十カ月後に迫りました制度改革の実現を考え合わせますとき、感慨無量なものがございます。
また、本区では、先駆的なリサイクル事業として平成七年度から事業着手しました資源分別回収パイロットプランを着実に推進してまいりますとともに、これを補完するミニパイロットプランにつきましても、本年六月より、月二回の資源回収を区内全域で実施することとなりました。清掃事業移管後は、これらリサイクル事業と一体となって資源循環型社会の実現に向け、さらなる前進を図ってまいりたいと考えております。
私は、改めましてここに都区制度改革実現への厳しい長い歴史の中で、挫折することなく地道に取り組みを重ねてこられました町会連合会をはじめ、多くの関係者各位のご労苦に衷心より感謝申し上げますとともに、この成果を生かし、本区が名実ともに基礎的自治体として発展するため、たゆまざる努力を傾注してまいりますことを肝に銘じているところでございます。今後とも、区議会のご指導はもとより、区民の皆様のご支援、ご協力を切にお願い申し上げる次第でございます。
また、都区制度の改革と軌を一にして介護保険制度がスタートします。
ご案内のとおり、高齢者の介護は社会全体にとって、また国民一人一人にとって大きな問題となっております。介護を必要とする状態となっても、引き続き住み慣れた地域やご自宅で自立した生活を送り、人生の最期まで人間としての尊厳を全うできることが私たちの共通の願いですが、現実には、家族だけで介護を行うことは、肉体的、精神的に大きな負担となっております。
介護保険制度は、医療保険や年金保険と同様、国民の協同連帯の理念に基づき、介護を社会全体で支える社会保険方式によって、介護を必要とする方に対して必要な保健・医療・福祉サービスを総合的に提供する制度でございます。
豊島区では、介護保険制度の創設を視野に置きまして、介護保険サービスも含めた地域福祉サービスの総合的調整機能を果たす拠点として、平成九年四月、東西の保健福祉センターを開設し、中央保健福祉センターと合わせ三カ所体制を整備いたしました。
サービス提供基盤の整備といたしましては、施設介護の中心施設である特別養護老人ホームを、平成元年以降、山吹の里、アトリエ村、風かおる里と順次整備を図り、現在、平成十一年五月開設を目指し、区立第四番目の特別養護老人ホームを西巣鴨二丁目地区で建設を進めているところでございます。これにより、区立四カ所、民間二カ所、合わせて六カ所、収容定員四百名の特別養護老人ホームが区内に実現することになります。
また、通所介護の拠点施設となる高齢者在宅サービスセンターは、西巣鴨二丁目地区及び上池袋二丁目地区に、平成十一年五月、六月と相次いでオープンいたします。これにより、区立十一カ所、民間一カ所、合わせて十二カ所の高齢者在宅サービスセンターが区内に整備されることとなります。さらに、介護を要する高齢者等を抱えるご家庭のご負担を軽減するため、訪問介護の重点事業として平成八年度から実施しております二十四時間巡回型ホームヘルプサービスにつきましても、平成十二年度までには区内全地域での実施を実現してまいりたいと考えております。
一方、この四月には、介護保険準備室を設置しまして、具体的かつ本格的な介護保険制度導入のための準備作業に入ったところでございます。
準備作業の重要課題の一つとして、本区の介護保険事業の根幹を成す介護保険事業計画の策定があります。これは、介護保険法により義務づけられているもので、介護保険制度運営の基本となるものでございます。そのため、庁内検討組織として設置した介護保険制度対策検討委員会とは別個に、(仮称)豊島区介護保険事業計画策定委員会を設置してまいります。委員構成は、事業計画に幅広いご意見を反映させるため、学識経験者をはじめ関係各機関・団体等代表者二十名のほか、被保険者の代表として四名の区民の方に参加していただくべく現在公募しているところでございます。この事業計画策定の進捗状況につきましては、節目節目に区議会にもご報告申し上げ、ご指導、ご意見等を賜りたいと考えております。
平成十二年四月の介護保険事業開始に向けて、平成十一年十月ごろから、要介護認定業務やケアプラン作成業務等の作業に入らなければなりません。また、電算システムの開発手法や執行体制のあり方など、早急に決定しなければならない課題も多く残されております。非常に厳しい日程でございますが、区民の皆様への周知徹底を図り、制度のご理解とご協力をいただきまして、円滑な導入に万全を期してまいる所存でございます。
次に、区立小中学校の適正配置の推進について申し上げます。
区立小中学校の適正配置につきましては、平成四年四月、区立学校の適正規模等に関する審議会の答申を受けて以来、教育委員会での内部検討を経て、昨年一月、平成十八年度までの十カ年計画として、区立小・中学校の適正化第一次整備計画を策定し、計画の推進に取り組んでまいりました。
この間、区政連絡会や地区別説明会等を開催いたしますとともに、平成十一年四月予定の統合対象校では、PTA、町会、学校等、関係者による統合推進協議会を設置しまして、統合を円滑に進めるため、新学校名をはじめとして種々の問題を協議していただいております。
このたび、高田中学校と雑司谷中学校並びに要町小学校と平和小学校の両統合推進協議会で統合に向けての協議が整いまして、平成十一年四月に新中学校、新小学校が発足する運びとなり、今回、区立学校設置条例の一部改正をご提案いたしております。
新しい学校の名称は、それぞれ千登世橋中学校、要小学校としてスタートいたします。千登世橋中学校は、千登世橋が知名度も高く由緒のある橋であり、高田中学校と雑司谷中学校の中間に位置すること、また千登世は明治・大正時代の旧地名の一部であったことから選定されたものでありまして、一方、要小学校は、要が地名の一部であること、また新小学校が地域コミュニティの要として、さらには豊島区の小学校の要になるような学校になってほしいとの思いを込めて選定されたと伺っております。
この二つの新学校は、今後の適正配置推進のモデルとなるものでありまして、統合推進協議会では今後もスムーズな統合へ向けての推進役を担っていただくわけでございまして、会長をはじめとして各委員の皆様方のご協力に対しましてここに深く感謝申し上げる次第でございます。
申すまでもなく、学校教育では、個性と社会性の両者の調和のとれた児童・生徒の育成が求められており、区立小中学校の適正配置の推進は、二十一世紀を担う児童・生徒の教育環境を整備するものでございます。このたびの統合では、要町小学校・平和小学校につきましては、地元関係者からのご要望により、計画より一年早めて統合いたしましたが、今後も地元の皆様のご意見を踏まえつつ、計画の実現に取り組んでまいる所存でございます。
本日ご提案申し上げます案件は、条例六件、契約一件、予算一件、ほか四件でございますが、各案件につきましては、後刻、助役より説明をいたさせますので、よろしくご審議の上、ご協賛を賜りますようお願い申し上げまして、私の招集あいさつといたします。