平成12年第2回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十二年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。


 ただいま区議会の議決に基づきまして、栄えある永年在職議員として表彰を受けられました秋山てつお議員、副島健議員、篠敞一議員、河野たえ子議員、小倉秀雄議員には、私からも、ここにその栄誉をたたえ、二十五年間にわたります区政への大きなご貢献に対しまして、心から敬意を表し、感謝申し上げる次第でございます。


 また、先の臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成が決定され、豊島区政の一層の発展を目指して議会活動が展開されておりますことに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。


 この際、定例会の開会に当たりまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。


 私が、区民の皆様から厳粛なるご信託をいただき、区政の運営に当たることとなりまして二年目を迎えました。


 時折りしも、この四月には地方分権一括法が施行され、本格的な分権と自治の時代に入りました。また、地方自治法の改正により特別区が明確に基礎的自治体として位置づけられ、都区制度改革が実現いたしました。新たにスタートした特別区は、東京都との間では明確な役割分担を行い、対等の立場で新たな関係を確立していくとともに、区政運営では、区民の意向を十分酌みつつ地域の特性を生かしていくことが、今後はさらに強く期待されることとなりました。区政運営の二年目が自治体としての自己決定と自己責任が問われる、厳しい自治体間競争の時代の幕開けに当たりますことを考えますと、責任の重大さに改めて身の引き締まる思いがいたします。


 この一年間の区政運営の実績を基礎に、就任に当たりましてお約束いたしました区政運営の二つの基本理念、すなわち、平和と基本的人権を尊重する区政を実現すること、個性ある豊島区を実現すること、区財政の再建を図ること、これらの理念の実現に着手するまさに正念場の年として、二年目の区政運営に渾身の力を振り絞って臨んでまいりたいと考えております。


 まず、財政再建と行政改革の取り組みについて申し上げます。


 本区の財政状況は、今さら申し上げるまでもなく、極めて切迫した土壇場の状況に追い詰められております。それは、十二年度予算において講じた財源対策に加え、これまで財源対策の主な原資としてきました基金が底をつき、さらに公債費などの歳出圧力が高まる一方、歳入の確保についても極めて厳しい状況にあり、今後も相当の財源不足が見込まれるからであります。現段階の粗い試算ではありますが、特に平成十三年度から十五年度までの三年間は、毎年、約五十五億円から六十億円の財源不足が見込まれるのでございます。この危機を何としても乗り越え、将来への展望を切り開くことが私に課せちれた第一の任務であります。


 昨年、平成十二年、十三年度を「行財政緊急再建期間」と位置づけ、十二年度における取り組み事項をご説明申し上げ、「行財政緊急再建計画」として取りまとめさせていただきましたが、第一回定例会におけるご質問でもお答え申し上げましたとおり、私は、この緊急再建期間内に、ぜひとも財政再建の道筋を明らかにする中期的な展望が必要であると痛感いたしました。地方分権一括法の施行、都区制度の改革の実現という新たな状況は、一面では豊島区が財政危機を克服しつつ、二十一世紀にふさわしいまちづくりへ、さらなる歩みを再開するための得難いチャンスでもあると位置づけられるのであります。このため新たな時代にふさわしい行財政運営の視点を掲げ、自らの意志と決断によって財政再建と自己改革を同時になし遂げることが必要と判断しております。


 これからの行財政改革には、以上のような観点から取り組むことが不可欠と考え、そのために二つの大きな計画の枠組みを設定いたしました。その一つは、財政再建のための「財政健全化計画」であり、もう一つは、財政再建期間中の行財政運営の指針となる「新生としま改革プラン」であります。


 まず、「財政健全化計画」は計画期間を四年間とし、計画期間内に収支を実質的な黒字に転換するため、その目標、方法等を盛り込むものでありまして、計画内容を着実に実施することにより財政の健全化を達成しようとするものでございます。「新生としま改革プラン」は、財政健全化計画と同様に計画期間を四年間とし、豊島区が財政再建に取り組みつつ新たな行政スタイルを創造する指針とするものでありまして、「新たな時代に対応しうる行政サービスの展開」、「公共施設等の再編成」、「区民との協働の推進と地域コミュニティの活性化」、「計画的な人材育成と適正な組織定数管理」、「透明性、迅速性にすぐれた行政システムの確立」、という五本の柱を据えそれぞれに具体的に取り組むべき課題と対応策を明確化しようとするものであります。


 この改革プランは、行財政運営における自己決定と自己責任の徹底、区民主体の自治運営の推進、情報開示と説明責任の確立などを基本的視点として掲げ、既に実施しております外部監査などに続き本格的な行政評価制度を導入、確立するなど、新たな時代に適合し得る自治体経営を追求しようとするものであります。


 「財政健全化計画」と「新生としま改革プラン」につきましては、本年四月から策定に着手しておりまして、現在行財政改革推進本部などにおきまして、鋭意その作業を進めております。内部での一定の検討を踏まえ、本年九月には区議会にご説明申し上げ、ご意見とご指導をいただきたいと考えております。


 これまでの行革には、ともすると財政の帳尻合わせのために取り組んできたとの印象がありましたが、今回の取り組みはこのようなイメージを払拭し、新たな豊島区を創り出すという決意のもと、全庁が一丸となって山積する改革課題に挑戦するものであります。この機を逃せば、自己変革の機会を失い、我が区はこの先、相当長期にわたって財政が疲弊し、みずからの意志を喪失した行財政運営に甘んじることになるという強い危機感を抱いているのでございます。まさに豊島区政は、正念場を迎えているのでございます。この二つの計画を相乗的に組み合わせ、いかに実現できるかによって豊島区の未来が決せられると申し上げても過言ではありません。


 私は、これらの二つの計画により財政再建と行政スタイルの転換を同時になし遂げ、二十一世紀に適応できる行財政運営の仕組みを確立することによって、魅力と活力にあふれた副都心づくり、ぬくもりのある保健福祉施策の再構築、教育環境の基盤整備など、目標として掲げた政策課題に着実に、しかも積極的に取り組んでまいる所存であります。


 次に、今年度の区政の主な課題について申し上げます。まず、リサイクル・清掃事業についてであります。


 本年四月、都区制度の改革の大きな柱の一つであり、区民生活に密着した清掃事業が区に移管されました。移管後、既に三カ月が経過しようとしておりますが、収集・運搬作業につきましては、混乱もなく順調に行われている状況にあります。今後、清掃・リサイクル事業の着実な展開を図るため、去る四月二十七日には、地域におけるリサイクルの普及啓発の推進役となる「リサイクル・清掃推進員」三百三十八名の認定証の交付式を行ったところであります。また、清掃事業の移管を契機としたイベントといたしまして、五月二十五日から三十一日までを「リサイクル・ごみ減量週間」に設定し、五月三十日には「ごみゼロデー・さわやかキャンペーン」を実施いたしました。この日、各町会、商店会や店舗、事業所、区職員など約二千名が参加し特別清掃を実施いたしましたが、このような区民と地域が一体となった意識啓発活動を今後とも積極的に続け、その輪が広がるよう努めてまいる考えであります。さらに、区への事業移管に当たりまして、継続案件として残されております財政問題などの解決に向けましても引き続き最大限努力してまいる考えでございます。


 次に、介護保険制度についてであります。


 介護保険制度につきましては、本年四月一日、我が国における第五番目の社会保険制度としてスタートしました。本区では、三月末時点で現にサービスを利用されている方が、四月からもサービスが途切れることのないよう全力を挙げて対応いたしましたが、大きな混乱もなくスタートできましたことを、改めてご報告申し上げます。なお、五月末日現在の認定申請件数は延べ五千八百十二件で、このうち判定件数は九一・三%を占めます延べ五千三百七件となっております。申し上げるまでもなく、本制度はスタートしたばかりでございます。これからが正念場であると肝に命じております。今後さまざまな問題が生じてまいるものと認識しておりますが、一つひとつ解決を図りながら保険者として制度充実に全力で取り組むとともに、基礎的自治体としても介護基盤の整備に全力を挙げていきたいと考えております。


 次に、「これからの学校のあり方懇談会」についてであります。


 本区教育委員会は、これまでも保護者や地域住民とともに開かれた学校づくりに努めてまいりましたが、二十一世紀における区立小中学校並びに幼稚園等のあり方について検討するため「これからの学校のあり方懇談会」を設置し、五月三十日、第一回目の会合を開催したところでございます。懇談会は学識経験者、学校長、保護者、地域住民など、計二十一名で構成され、平成十四年三月三十一日までの二年間、区立小中学校の通学区域の弾力化問題をはじめ、新学習指導要領による選択教科や総合的学習の時間の導入、学校週五日制の完全実施に伴う対応策など、学校教育をめぐる今日的課題について検討をお願いするものであります。私といたしましては、教育委員会とともに新たな時代にふさわしい学校環境整備に向け、なお一層努力をしてまいりたいと考えております。


 次に、会議録の公開についてでございます。


 私は、就任以来、一貫して「顔の見える区政」、「区民の目線に立った区政」の具体化に取り組んでまいりました。その大きな柱である行政情報公開条例につきましては、先般の第一回定例会におきまして「区民の知る権利」や「区民への説明責任」などを明確にし、条例の全部を改正したところでございます。このため、本年六月からは区の政策形成に深くかかわる会議につきまして、会議録を適切に作成し、これを可能な限り公開し、審議の過程を区民に明らかにする会議録の作成に関する指針を定めまして、これを試行することといたしました。来年三月まで十カ月間に及ぶ試行実施の経過を踏まえまして、本格実施に移行したいと考えております。


 二十一世紀まであと六カ月、我が国は景気回復と財政再建という課題を抱えつつ、新たな国づくりへと向かいつつあります。区政もまた、未だ大きな課題を背負っておりますが、豊島区が住む人にとっても、また訪れる方々にとりましても快適で親しみやすい魅力を持ち続け、新たな世紀にあっても首都東京を代表する街となりますよう、私に与えられた役割を懸命に果たしてまいる所存でございます。改めまして、議員各位のご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。


 なお、本日ご提案を申し上げます案件は、条例十件、契約六件。予算二件、その他二件の合わせて二十件であります。各案件につきましては、後刻日程に従いまして助役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上ご協賛賜りますようお願い申し上げます。


 以上をもちまして招集のあいさつ並びに所信表明といたします。