平成12年第3回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十二年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。


 初めに、相次ぐ火山噴火や地震によって大きな被害に遭われた伊豆諸島の皆様に、心からお見舞いを申し上げます。


 全島民が島の外へ避難されています三宅村村民のうち、本区では、特別養護老人ホームに入所されていましたお年寄り三名の方を本区の特別養護老人ホーム「山吹の里」に受け入れますとともに、従前居住者対策住宅「アゼリア東池袋」には避難生活を余儀なくされている二世帯四名の島民の方々に入居いただいております。また、都立秋川高校に避難中の三宅島の小中学生に対しては、図書二百冊、自転車十台を寄贈したところでございます。


 このほか、区民の皆さんや職員から寄せられました義援金を被災町村にお贈りしたところでございます。今後とも、被災された方々に対しでき得る限りの支援をしてまいりたいと考えております。


 さて、今回ご提案申し上げます案件のうち、平成十一年度一般会計並びに三特別会計歳入歳出決算の認定につきましては、決算審査における成果を、引き続く予算編成に生かしたいとの考えから、従前より約二カ月早めて、初めて第三回定例会に提出した次第でございます。ここに、監査委員の審査意見書及び法令に定める書類を添えまして提出いたしました。よろしくご審議の上、認定賜りますようお願い申し上げます。


 この際、平成十一年度一般会計歳入歳出決算の概要について申し上げます。


 まず、決算収支の状況でありますが、歳入決算額は一千六億八千八百六十八万一千円、歳出決算額は九百八十八億五千九百九十八万七千円となっております。前年度に対する伸び率は、歳入決算額がマイナス二・七%、歳出決算額もマイナス二・三%となり、歳入歳出ともに二年ぶりのマイナスとなっております。


 予算現額に対する収入率は九六・五%、執行率は九四・八%で、前年度決算と比較いたしますと、収入率では〇・四ポイント、執行率では〇・八ポイントそれぞれ上回っております。


 また、形式収支は十八億二千八百六十九万四千円でありまして、翌年度に繰り越しすべき財源の必要がないため、実質収支も同額の黒字となっております。しかしながら、事実上の収支について申し上げますと、特別な財源対策として講じた庁舎等建設基金からの運用を行ったこと、これに加え財政調整基金からの取り崩し額が仮になかった場合には決算は赤字となります。十一年度決算の状況を財政分析指標の上から見てみますと、財政構造の弾力性を判断する指標であります経常収支比率は、前年度を五・一ポイント上回る九八・五%、公債費比率も前年度を一・一ポイント上回る一四・〇%と、過去最悪の数値となっております。


 こうした状況から、区財政は財政の弾力化が失われ硬直化が一段と進行し、極めて厳しい状況となっております。また、特別区債の年度末残高は、十一年度も減税補てん債を発行したことなどによりまして、前年度末より十億二千三百万円増加し過去最高の六百六十六億八千八百万円となり、十一年度の元利償還額は七十四億三千六百万円と歳出決算額の七・五%を占めるまでに至るなど、公債費負担が区財政に重くのしかかっております。


 今回の決算状況から、本区がかつて経験したことのない未曾有の財政危機に陥っていることが明らかでありますが、一方職員の人件費につきましては決算額の対前年度伸び率が四年連続して減少しているなど、財政再建へ向けての内部努力の結果が徐々にあらわれております。今後も引き続き、気を緩めることなく財政再建に向けて努力してまいりたいと考えております。


 次に、十二年度都区財政調整算定結果について申し上げます。


 今回の算定は、本年四月の都区制度改革を踏まえた新しい制度のもとで初めて行われたのでありますが、普通交付金は二百四十四億五千三百十六万九千円、対前年度比三十一億九千二百七十七万円、率で一五%の増となっております。この算定額は、本区の十二年度予算計上額を二十九億八千五百十三万八千円下回るものとなっております。この見込み違いは、清掃事業の移管や介護保険の導入、地方分権の実施などによる基準財政需要額の変動に加え、基準財政収入額の算定方式の変更等により生じたものでありますが、既に織り込み済みの要素を除きますと予算割れの規模は約二十二億円と見込んでいるものであります。また、今回の算定では、特別区全体で約二百十三億円の算定残が生じておりまして、この取り扱いによりましては予算割れの規模も縮小するものと考えられるのであります。


 いずれにいたしましても、このような事態を想定して既に十二年度予算の執行管理を行っているところでありまして、引き続きさまざまな工夫を凝らし今回の算定結果へ対処する所存であります。なお、算定残の問題を含め、新しい財調制度の安定と確立に向けて引き続き努力してまいりたいと考えております。


 次に、区政の課題について申し上げます。


 まず、行財政改革への取り組みについてであります。


 区財政は、これまで申し上げてきましたとおり極めて厳しい状況にあります。日本経済が自律的回復に向けた動きを徐々に広めつつありますが、雇用や個人消費ではなお厳しい状況が続いておりまして、地方税収の好転には相当の時間を要するものと見込まれます。このため、今後もしばらくこの状態が継続するとの前提で見込みました平成十三年度の財源不足額は、現段階における試算で五十六億円、十四年度では七十九億円、十五年度七十二億円、十六年度五十四億円と、十三年度から十六年度までの四年間で合計二百六十一億円という膨大な額になるものであります。


 したがいまして、これまでのように単年度ごとの特別な財源対策に依存した予算編成に終始することでは、もはや乗り切れないものと考えております。こうした多額の財源不足は、構造的な面からこれを打開していく必要があると考えておりまして、そのためには投資的経費を抑制することは当然のことでありますが、後年度に財政効果が大きく波及する経常的経費の大幅な削減を行うことが何よりも重要であると考えているのであります。このたび公表いたしました「施設白書」や「人事白書」、「行政サービスとコスト」の分析などでも明らかのように、公共施設の維持管理経費は本区の歳出の半分近くを占めております。したがいまして、その配置や運営形態などについて抜本的な見直しを行い、いわば公共施設の再構築を行うことが喫緊の課題であると認識をしております。


 また、各種の行政サービスについても抜本的見直しを断行し、在宅サービスの充実などを中心とする、効率的で質の高い新たなサービス体系の再構築を図ることが必要であります。


 このため、先の定例会で表明いたしましたとおり、平成十三年度を初年度とする「財政健全化計画」及び「新生としま改革プラン」という二つの計画をただいま策定中であります。この二つの計画の実行によりまして、平成十六年度までには特別な財源対策を講じなくても実質的収支が黒字へ転換するよう最大限の努力を図ってまいる決意であります。


 次に、生活安全条例についてでございます。


 近年、犯罪の若年化や凶悪化が毎日のようにマスコミを賑わし、都市における防犯や治安の強化が叫ばれています。多くの繁華街を抱える本区におきましても、安心して住めるまちづくりを目指して区民と行政が一体になって取り組んでまいりました今日までの努力が、大きな危険に見舞われようとしております。


 本区では、既に池袋の西口地区や東口地区をはじめとして、多くの区民の皆さんがみずから先頭に立って環境浄化、安全確保のために献身的な活動を展開されておりますが、区民の自主的活動をさらに一層強力に推進することにより犯罪を未然に防止することが何よりも重要であります。このため、安全で明るい街づくりを目指す生活安全条例を制定することとし、本議会に提出した次第であります。


 この条例案では、生活安全協議会の設置や住民の安全意識の高揚と自主的な活動の推進について規定したことに加え、事業者の責務や防犯に効果的な設備の設置にかかわる具体的な規定についても定めている点が、他区にない特色となっているものであります。この条例の制定によりまして、区民の自主的な活動の広まりと相まって、豊島区が安心して住めるまちとなるよう区も一体となってその責任を果たしてまいる所存であります。


 次に、中規模小売店舗の立地調整に関する条例についてであります。本年六月一日、大規模小売店舗法が廃止され、大規模小売店舗立地法が新たに施行されましたが、この条例は新法の対象とならない中型店に対しまして、本区の実情を踏まえた新たな立地調整を行い中規模小売店舗周辺の生活環境を良好に保つため制定しようとするものであります。


 条例案では、飲食店を除く店舗面積五百平方メートルを超え千平方メートル以下の小売店舗を対象とし、店舗設置者に対して出店計画の届け出、近隣住民への説明会の開催を義務づけるとともに、近隣住民には、新設店舗が生活に与える影響について区長に意見を書面で提出できることとしております。また、区長は、附属機関として新たに設けます調整審議会の意見を聞いた上で、設置者との協議を行い、協議を図っても改善されない場合には勧告することができるなど、国の小売商業政策の大転換に対し基礎的自治体としての独自規制を設けることになるものであります。この条例の制定によりまして中規模小売店舗周辺地域の生活環境の悪化が防止されることを期待するものであります。


 最後に、昨年十一月からとっております私を含めた特別職の給料の減額継続についてであります。


 給料の減額は、区財政が未曾有の危機に直面している中で区政を預かる最高責任者として、また、この危機を何としても克服しようという決意をあらわすためのものでございます。先ほど来ご説明申し上げているとおり、財政危機はむしろ深刻さが増しております。このため、早期に財政健全化を達成するための決意を再度お示しするために、改めて、本定例会に給料等の特例に関する条例を提出した次第であります。何とぞご理解を賜るようお願いを申し上げます。


 なお、これとあわせ管理職員全員から管理職手当一〇%を引き続き辞退するとの申し出があり、これを受け入れることといたしました。


 私は、区長就任以来一年五カ月、この間、区財政の厳しい状況を目の当たりにして、二十一世紀という時代に対応できる新たな行政運営システムの構築手法を常々模索してまいりました。さまざまな機会を通じて私が披瀝した、豊かさの実感できる副都心としての豊島区の将来に明るい光をともしたい、という私の深い思いがこのたびの一連の行財政改革への取り組みであります。明年平成十三年度は、長期的な視点に立って堅実な財政運営に徹する、行財政改革への揺るぎない第一歩を踏み出す初年度であります。議員各位におかれましては、大所高所からのご献策、ご指導を賜りたくお願い申し上げる次第であります。


 本日ご提案申し上げます案件は、決算認定四件、条例八件、負担付き譲与一件、道路認定一件、補正予算一件、土地の売払い一件のあわせて十六件であります。各案件につきましては、後ほど日程に従いまして助役並びに収入役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願いを申し上げます。


 以上をもちまして招集のあいさつといたします。