本日、ここに平成十三年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。
今定例会に、平成十三年度予算(案)を初め五十三議案をご提案申し上げるに当たりまして、この際所信の一端を申し上げたいと存じます。
私は、二十一世紀最初の日、百年に一度の歴史的な瞬間を、婚姻届を出された次の世代を担う若い方々と迎えることができました。歴史のめぐり合わせとは言え、新世紀への扉が開かれたときに区政を預かる区長として、こうした未来を担う若い世代が将来への夢と希望を持てる区政を実現するという私に課せられたその責任の重さを改めて痛感し、みずからの決意を新たにしたのであります。
激動の二十世紀最後の十年は、経済活動が極端に停滞し、社会全体が閉塞感に覆われた空白の十年とも言われる時代でありました。また、我が区においては、この間さまざまな分野で二十一世紀の日本のあり方を決定するような改革や動きがありました。区政運営におきましても、こうした時代の流れを十分意識して二十一世紀初頭の課題に取り組んでいかなければなりません。昨年、平成十二年はこのような時代の変化が象徴される年でありました。地方分権の本格的な幕開けや都区制度改革の実現、またIT社会の急速な進展など、特別区を取り巻く制度や社会環境が大きく変わり、基礎的自治体としての本区の役割がますます重要なものとなり、その自立性と自己責任がより厳しく問われる時代になりました。
二十一世紀を迎えたこの記念すべき年に当たって、私は自己責任を徹底していくことを基本に据え、全力を挙げて新世紀の区政運営に取り組んでまいる決意であります。
次に、平成十三年度予算案についてご説明申し上げます。
私は、平成十三年度予算を極めて厳しい財政状況下のもとで区政の新たな基盤づくりを推進するとともに、「財政健全化計画」の着実な実現を図り、「財政の再建に向けて確実な一歩を踏み出す予算」と位置づけました。区財政の再建は、区長就任時に掲げた公約のうちでも最大の課題でありました。財政再建団体に転落しかねない区財政の実態を一刻も早く解明し、将来への展望を示したいとの思いから、私はこの二年間、財政白書・施設白書などによってさまざまな角度からの現状分析やプランの策定に取り組んでまいりました。また一方で、財政再建には時間を限りこれを大胆に実行することが大事であるとも考えてまいりました。平成十三年度を初年度とし、十六年度までの四カ年間で財政再建を果たすには、とりわけ一段と厳しさを増す十四年度予算をどう乗り切るかなど、極めて険しい道のりが想定されますが、私は改革と再建への意欲を引き続き持続させながら、区財政の負の遺産の解消に向けて最大限の努力を払ってまいる所存であります。
こうした認識と自覚に基づきまして、十三年度予算の編成に当たっては、次の四点を基本方針といたしました。
第一に、「財政健全化計画」に定めた事項を確実に実施することにより、歳入の確保と歳出の抑制を図り、危機的な財政状況の克服に向けた対応を徹底することであります。第二には、本年一月に策定しました「新生としま改革プラン推進計画」に盛り込んだ取り組み事項を積極的に予算化し、新たな行政システムの構築に着手するとともに、事務事業の再構築、施設の再編成を推進することであります。第三には、少子高齢化の進展、介護保険制度の実施状況を踏まえつつ、福祉の基盤整備を積極的に進めるため、これまでの事業の見直しと新たな施策の展開を図ることであります。第四には、限られた財源を一層重点的に配分し、教育環境の充実、都市基盤整備など長期的、計画的に対応する必要がある課題へ適切に対処することであります。
その結果、一般会計予算(案)の規模は、九百四十六億九百万円で、対前年度当初予算比では二十二億七千百万円、二・三%の減と、三年連続のマイナスとなりました。このマイナス幅は平成元年度以降では八年度のマイナス二・六%に次いで四番目に大きなものであります。
歳入予算を財源別に見ますと、まず一般財源は、特別区税が景気の低迷の影響やたばこの売上本数の減少などによりまして、対前年度当初予算比四億五千三百万円、一・九%の減となったほか、前年度大きく伸びた利子割交付金が五億五千五百万円、二三・三%の大幅減となったことなどによりまして、対前年度当初予算比九億九千六百万円、一・五%の減となるものであります。一方、特定財源もまた対前年度当初予算比で十二億七千五百万円、四・〇%の減となっております。
歳出の性質別では、人件費が前年度に比べ六億九千二百万円、二・七%の減となっておりますが、これは予算人員で六十六名の職員を削減したほか、期末手当等の削減、管理職員給与の五%カット、超過勤務手当の抑制など厳しい内部努力を行った結果によるものでありまして、減少額、率とも過去最大のマイナスとなっております。事業費は二十一億六千二百万円、三・二%の減で、「財政健全化計画」による施策の見直し効果が反映されたものでございます。また、投資的経費は、五億八千三百万円、一四・四%の増となっておりますが、新中学校建設が最終年度を迎えたことなどによるものであります。
次に、区財政に大きな影響を与えています都区財政調整について申し上げます。
今回の財調協議は、十二年度の大きな制度改正後、初めての協議となったものでありますが、特別区の自律性の実現、中長期的な安定性の確保という改正趣旨の具体化とともに、清掃事業の実施経費など都区間配分に関する事項が協議の焦点になったと考えております。その結果、引き続き協議となった事項もございますものの、おおむね区側の要望にこたえた内容になったものと受けとめております。
その十三年度当初フレームについてでありますが、調整税等の伸びを反映し、調整財源は対前年度当初フレーム比で五・八%の増と見込まれております。また、基準財政収入額は、特別区民税や利子割交付金などの減少により対前年度当初フレーム比二・二%減の八千九百二十八億七千万円、基準財政需要額については、区側の要望を反映した新規十三項目の追加、十七項目の算定改善などにより、対前年度当初フレーム比一・五%増の一兆七千百四億二千七百万円と見込まれております。したがって、交付金総額は五・九%増の八千百七十五億五千七百万円となりますので、これによる本区への交付額は二百八十四億四千五百万円と、対前年度当初予算比三億七百万円、一・一%の増と見込んだものであります。
以上、ご説明申し上げました一般会計予算に、国民健康保険事業会計、老人保健医療会計、介護保険事業会計、従前居住者対策会計の四特別会計を加えますと、本区の平成十三年度予算の総額は一千四百七十二億五千四百万円、対前年度当初予算比四億三千万円、〇・三%の増となり、これまで最も大きかった平成十二年度の当初予算を上回り、過去最大の規模となります。
次に、区民の暮らしを守るための五つの重点施策とその主なものについて申し上げます。
十三年度予算編成では、苦しい対応を余儀なくされましたが、昨年策定しました「財政健全化計画」に掲げた事業を着実に実施するとともに、一方で多くの区民要望や区政の課題にも対応すべく五つの重点施策についてこれを予算化し、区民福祉の向上に向け着実な前進を図ってまいることといたしました。
重点施策の第一は、「新生としま」の実現であります。十三年度では、「新生としま改革プラン」に基づいて新たな時代に対応する区政をつくり出し、区民とともに自治の未来を切り開く総合的な施策を展開いたします。今日、民間の大企業では社内における情報の共有化が一般的でありますが、本区では必ずしもこのような状態にあるとは言えません。そこでまず、庁内LANの構築による高度情報化された区政、つまり電子自治体の実現に着手し迅速な情報伝達と情報の共有によりまして、事務の簡素化、効率化を推進いたしますとともに、区民ニーズへの柔軟かつ迅速な対応を図ってまいります。また、区民がIT社会に対応するための施策として区民対象のIT講習会の開催、児童館などの区民施設へのパソコン配置にも取り組みますとともに、「新生としま」の実現を図るため、「地域活動のあり方検討会」の設置、住民票等の自動交付機の金融機関への設置、出前サービスの実施など区民サービスのきめの細かい施策を展開してまいります。
重点施策の第二は、保健福祉の新たな基盤づくりであります。保健福祉の基盤づくりに関しましては、本格的な少子高齢社会の到来や介護保険制度の実施等社会状況の変化に対応し、各種サービスが連携して総合的に提供されるよう新たな施策に取り組んでまいります。このため、まず障害者福祉については、障害者が身近な地域で自立した生活を送ることを支援するため、心身障害者福祉センターに新たに自立生活支援センター機能を付与するほか、知的障害者、精神障害者に対する各種ヘルプサービスの充実など、在宅サービスメニューの拡大を図ってまいります。また、学校跡地を活用した施設整備では、二十三区内では三番目となります身体障害者療護施設の整備を図ることといたしました。介護基盤施設の整備では、入所待機者を解消することを目指し、学校跡地を活用した区内では初めてとなります老人保健施設を初め、特別養護老人ホームの整備を民間誘致によりまして取り組んでまいります。また、特別養護老人ホームの整備は、民間誘致による西山児童遊園用地等の活用をも図る考えでありますが、これらにより区内の福祉施設の整備は一段と充実するものと考えております。
重点施策の第三は、子育て環境の整備でありますが、子育て環境の整備に関しましては、特に二カ所の子ども家庭支援センターの整備に重点を置きました。本年秋に開設を予定しております二カ所の子ども家庭支援センターは、地域において子ども家庭支援のネットワークづくりができることを目標にいたしまして、相談や在宅サービスの提供、またサービスの調整や地域子育て活動への支援など、四つの機能を合わせ持つものでありまして、多発する児童虐待の未然予防など本区の子育て支援施策の拠点となるものであります。いずれも廃園後の保育園施設を活用するものでありますが、このうち西部支援センターにおきましては、心身障害者福祉センターに設置しておりました障害児の通所部門を移設し、併設するものであります。これらの施設は、障害の有無を越えて子どもの発達を総合的にケアしていこうとするところに特色を有しておりまして、その成果に大きな期待を寄せております。区立保育園四園、すなわち巣鴨第二、西巣鴨第一、池袋第四及び千早第二の各保育園につきましては、三月三十一日をもって廃園となりますが、保育園は子育て支援の拠点として大きな役割を果たしていくことについて変わりはございません。今後は多様な保育ニーズに柔軟にこたえていくため、経営・運営のあり方について見直しを進めてまいりたいと考えております。その第一歩として、雑司谷小学校跡地の活用の際、隣地にあります南池袋保育園を民営化し、多機能型の保育園としてその整備充実に取り組む考えであります。また、児童館配置の再編成につきましても、「児童館のあり方検討プロジェクトチーム」の中間報告の趣旨を踏まえ、区民の皆様のご意見を賜りながら、今後積極的に進めてまいりたいと考えております。
重点施策の第四は、教育・学習基盤の充実についてであります。次代を担う子どもたちを健全に育成するため、児童・生徒一人ひとりの創造性や社会性を育むとともに、多様で個性的な特色ある学校づくりを展開する基盤づくりが重要であります。本区では、教育委員会において昨年来、「これからの学校のあり方懇談会」を設置し、各界の皆様から貴重なご意見をいただいてまいりました。これらを踏まえまして、本年四月から通学区域の隣接校選択制を導入いたしますが、区立学校に入学する予定者の約一四%の児童・生徒がこの制度を利用し、従来の学区域を越えた選択をしました。本区では、初めてこの制度の実施の効果が特色ある学校づくりへと生かされ、児童・生徒がいきいきとした学校生活を送ることができる環境が開花するよう期待するものであります。また、十四年度から学習指導要領に新設される「総合的な学習の時間」への十分な対応ができるよう、人材確保やコンピュータの整備などを行ってまいります。小中学校の適正配置では、十三年度には高田、雑司谷、日出の三小学校が統合され、新たに南池袋小学校としてスタートいたしますとともに、大塚、朝日中学校の統合により巣鴨北中学校が誕生いたします。また、千登世橋中学校校舎の建設が最終年度を迎え、南池袋小学校の新校舎建設についてもいよいよ実施設計に着手いたします。厳しい財政状況下にありますが、教育環境の整備、とりわけ新校舎の建設につきましては、財源捻出にも工夫を凝らし計画的な整備に積極的な対応を図っていく考えであります。また、近年極めて関心の高い健康づくりやスポーツについては、その振興施策についてスポーツ関係者等によります「スポーツ振興計画策定委員会」を設置し、学校跡地を活用したスポーツ施設の整備及び再配置を含む生涯スポーツの基本計画を策定いたします。スポーツ振興策のみならず、区民の皆様の生涯学習活動には今後も一層その充実に努めてまいります。
重点施策の最後は、元気のあるまちづくりと都市環境の保全についてであります。長引く景気の低迷の影響は、さまざまな面で区民生活に深刻な影響を与えております。とりわけ区内商店街や中小企業には、衰退と低迷の時代が続いております。このため、二十一世紀の商店街づくりへ向けて積極的な取り組みが急がれておりますが、十三年度では「区内若手経営者会議」を設置し産業振興に関する斬新な発想を取り入れるとともに、若手経営者のネットワークづくりを支援していくほか、「二十一世紀商店街づくり振興プラン」の策定、中小企業実態調査の実施など、区内産業の振興を図る基本的な取り組みに対処してまいります。また、区内商店街の振興とも密接に関連するものは、街づくり施策の推進であります。十三年度では、都市計画道路補助一七二号線の整備と沿道地区計画の策定、グリーン大通り周辺整備の基礎調査など、都市計画マスタープランに沿った計画的なまちづくりに取り組んでまいります。さらに、放置自転車対策では、巣鴨駅北、巣鴨駅南、千川駅北第二の三カ所、合わせて千六百台分の駐輪場を開設いたしますとともに、グリーン大通りなどの歩道空間を活用する登録制自転車置き場の整備にも新たに取り組み、八百二十台分を確保する予定であります。安全・安心のまちづくりでは、池袋東西の街角に防犯カメラ二十八台を設置いたしますとともに、西武鉄道池袋駅構内のエレベーター、エスカレーターの整備に対する支援経費を予算化いたしました。
以上、平成十三年度予算案の重点施策についてご説明申し上げましたが、これらの中には従来の制度に変更を加えるものや区民や関係者の合意形成を必要とするものなどが少なくなく、その実現は簡単なものではないと認識をしております。財政健全化を着実に実行しつつ、新たな区政の課題にも対応し区民の生活を支えていくためには、勇気を持ってこれらの施策実現に取り組んでいかなければなりません。改めて区議会のご理解とご協力を賜りますようお願いを申し上げます。
今回、ご提案申し上げました平成十三年度予算においては、私が実現に向けて強い思い入れをしておりました江戸川乱歩記念館整備構想について、この間、さまざまな角度からその可能性について検討をしてまいりましたが、現在地に記念館を整備するためには、用地取得費や建設費などで多額な資金が必要となることなどのため、現在の厳しい財政状況にかんがみ、誠に残念でありますが記念館の整備については見送ることといたしました。
予算全体では、「財政健全化計画」でお示しした財政規模を健全化計画スタートの地点ではほぼ堅持し得たものと考えております。しかし、先ほども申し上げましたように、十六年度に実質黒字を実現しようという目標を達成するためには、まだまだ乗り越えるのに困難な幾多の壁が待ち構えております。また、区財政の現状を考えるとき、熟慮に熟慮を重ねざるを得ない予算編成となりましたが、財政再建を最優先の課題としなければならないため区民の皆さんや職員に対して多大なご負担をいただく内容を盛り込んだものとなっております。一方、「副都心としま」の現状は、潜在力がありながら将来に向けた活力と力強さに欠けていると申し上げてよい状況にあります。活力を取り戻すために、区に今何が必要なのかを原点に立ち返って考えなければならないときでもあります。
二十一世紀を迎えた今、私は、区政のかじ取りの難しさ、その責任の重さを痛感しております。新しい世紀を区民が真に豊かさを実感し、生活できる街の実現に向けて、持てる力のすべてを捧げてまいる決意であります。区政の前途にはさらに厳しくなる財政状況を初め、さまざまな困難が待ち受けていますが、今日の財政状況や社会の変化を危機としてとらえるのではなく将来に向けた改革のチャンスとしてとらえ、この改革によって豊島区らしさを生かした「新生としま」の実現が一歩一歩近づくよう、その道筋づくりに最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
本日ご提案申し上げます案件は、予算九件、条例四十二件、協議規約一件、契約一件、合わせて五十三件であります。各案件につきましては、後刻、日程に従いまして助役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして招集のあいさつ並びに所信表明といたします。