本日、ここに平成十三年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては、何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。
去る六月八日、大阪府池田市の小学校において、児童八人が死亡し、教師を含む多数の児童が重軽傷を負うという凶悪な殺傷事件がありました。亡くなられたお子さんに心から哀悼の意を表するとともに、ご家族の深い悲しみを思い、心からお悔やみを申し上げます。また、被害に遭われた方々の一日も早いご回復を願うものであります。
この事件が、「地域に開かれた学校づくり」に取り組んできた本区を初めとする全国の教育関係者や保護者に与えた衝撃ははかり知れないものがあります。本区におきましては、教育委員会が直ちに緊急アピールを行い、区立小中学校、幼稚園を初め、保育園、児童館などにおける危機管理について緊急対策を講じたところであります。
「開かれた学校づくり」と「子供たちの安全」というこの二つを両立させていくためには、子供たちを守る保護者を中心とした地域ぐるみの活動が何より大切なことは申し上げるまでもありません。
本区では、昨年、生活安全条例を制定し、生活安全協議会の場を中心に、区民の皆さん、関係機関の方々とともに、地域社会全体の安全対策を講じているところであります。今回の事件による尊い犠牲を無にせぬよう、豊島区を安心して暮らせるまちにしていくために、総力を挙げて取り組む決意であります。
次に、国におきましては本年四月、新たに小泉内閣が改革断行内閣のスローガンを掲げて誕生し、構造改革に取り組んでおります。
今回、国の経済財政諮問会議がまとめた「経済財政運営の基本方針」には、地方交付税や道路特定財源の見直しなど、国と地方の関係にも大きな変革をもたらす改革テーマが数多く盛り込まれております。
また、政府の地方分権推進委員会もこのほど、国から地方への税源移譲や地方交付税改革などを柱とする最終報告書を首相に提出しました。
今後、具体的検討に入り、実現までには紆余曲折が予想されるものの、一連の国の動きが昨年度の地方分権、都区制度の改革という流れに次ぐ、第二次地方分権改革ともいうべき流れが強まることを期待しております。
一方、特別区長会は、六月七日、全国市長会に加入をいたしました。これにより、従来は国に対するさまざまな働きかけは特別区長会として行つてまいりましたが、今後は新たに全国市長会の場を通じましても可能となります。全国六百七十市長とともに、地方分権のさらなる推進や地方財源の拡充を求める立場から、国に対する働きかけをさらに強めてまいりたいと考えております。
次に、平成十三年度行財政改革への取り組みについてであります。
たびたび申し上げてまいりましたが、平成十三年度予算編成は、平成十六年度までに区長就任時の公約である財政再建を何としても果たしたいという、私の思いを込めた、その第一歩になるものでありました。本年度は、この予算の確実な執行を通じて、区民サービスの向上とともに財政健全化への基礎をしつかりと踏み固めてまいりたいと考えております。
しかしながら、平成十四年度以降も想定されます多額の財源不足をいかに解消していくのかという課題も引き続き残されております。このため、このほど今年度に行うべき行財政改革への取り組み方針を決定したところであります。この取り組み方針では、「財政健全化計画」の達成を最優先課題とすることを再確認するとともに、平成十四年度以降の課題として整理した事項につきましても、その具体化への道筋を明確にすることといたしました。
また、公共施設の再構築につきましては、昨年十二月にまとめた第一次報告において、今後再構築をすべきとした高齢者・障害者施設、保健施設及び社会教育会館・青年館などの施設を中心に、幅広く検討を進めてまいる考えであります。さらに学校跡地、出張所跡地施設等の具体的活用策につきましては、新たに「区有財産活用推進会議」を設けまして、検討を深めてまいります。
これら公共施設の再構築と跡地活用案につきましては、この秋頃を目途に、できる限り早期に区としての考え方をまとめ、区議会にお示しをするとともに、幅広く区民の皆さんからもご意見を賜り、「新生としま改革プラン」の十四年度推進計画としてまとめてまいりたいと考えています。
次に、行革の大きな柱となります行政評価の本格実施についてであります。
行政評価につきましては、平成十二年度から一部事業について試行実施したところであります。本年度につきましては、当初十四年度までの三カ年に分割して実施する予定でした計両を前倒しし、この十月までにすべての事務事業評価を終えることといたしました。この事務事業評価に基づき、本年十一月からは次のステップとなる施策、政策評価の実施へ向けた検討に入りまして、平成十四年秋にはその結果を明らかにする予定であります。このほか、外郭団体のあり方の見直し、手数料・保育料の見直し、収納対策の強化などにも取り組んでまいります。
なお、補助金制度につきましては、先般、補助金検討委員会で新たな補助方式を定め、その趣旨と手続について関係者の皆様のご理解を得るべく、ただいま協議を重ねているところであります。
次に、子育て支援施策の充実についてであります。
乳幼児医療費助成についてでありますが、かねてより区議会からも強いご要望のありました所得制限年齢の引き上げについて、このたび現行の三歳未満を五歳未満とし、二歳引き上げることといたしまして、本議会に改正のための条例案を提出いたしました。
これは本年十月から都の助成対象年齢が就学前までに引き上げられることとなったこと、かねてより区民の皆様の強いご要望があったことを踏まえ、さらに現下の区の財政状況等を勘案した上で決断したものであります。
また、東西二カ所の子ども家庭支援センターの開設につきましては、本年十一月開設を目標に順調に準備が進んでおります。毎日のように報じられます児童虐待の深刻な事態を回避するため、育児不安に対する身近な相談窓口として、また子育て支援活動の核となる場所として、子ども家庭支援センターは大きな役割を果たすものであります。
本区では、既に子供の虐待防止、早期発見のために区内の関係機関を網羅した「子どもの虐待防止連絡会議」を設置し、虐待防止・対応マニュアルの作成を進めております。
このような本区の取り組みにつきましては、都内でも先駆的な事例として高い評価をいただいております。これらの成果が子ども家庭支援センターの機能をより充実したものにするものと考えております。
次に、現在取り組んでおります雑司谷小学校跡地を初め。区内三カ所における福祉基盤整備事業についてであります。
各地区におきましては、既に地元区民に対する説明会を数回開催いたしましてご理解、ご協力をお願い申し上げておりますとともに、民間社会福祉法人の選定を行う「福祉施設整備事業者選定審査会」を先般立ち上げたところであります。
また、国はこれまで特別養護老人ホームの設置につきましては、定期借地による用地取得を認可の対象としておりませんでした。しかし、このほど東京都を通じまして容認の方向であるとの見解をいただいております。全国でも初めてのケースでありましたので、国の判断を心配しておりましたが、国や東京都のご理解が得られたことによりこの事業が一歩前進することとなりました。
いずれにいたしましても、各施設が地元区民の方々のご理解とご協力のもとで円滑に運営されることが必要でありますので、今後とも引き続き話し合いを重ね、ご納得が得られるよう努力をしてまいりたいと考えております。区議会におかれましても、格段のご支援をお願い申し上げる次第であります。
次に、一関市との災害時相互応援協定の締結についてであります。
一関市と本区との交流は、平成八年に一関市で開催された忠臣蔵サミットに始まります。これをきっかけとして、平成十年以来、毎年本区の「としま商人まつり」や「ウエストパークフェア」などに一関市が参加し、観光物産展を開催しておりました。
一方、商業団体を初めとする民間レベルでもきょうまで交流を深めてまいりました。
また、私も昨年十二月、一関市を訪問する機会がありましたが、とりわけ過去の大洪水の教訓を生かした防災対策につきましては、大変勉強させていただきました。
このたび、こうした交流の積み重ねを踏まえまして、非常災害時における相互応援協定を締結することといたしました。
これにより、本区との間に災害時の相互応援協定を締結した自治体の数は、一関市を含め六自治体となるものであります。
次に、区制七十周年事業についてであります。
明年十月一日をもちまして、豊島区は区制七十周年を迎えることとなります。振り返ってみますと、昭和七年の誕生以来、豊島区は第二次大戦の戦火をくぐり抜け、戦後復興の中心的な役割を果たすとともに、首都東京の副都心としてその発展を支えてきたのであります。
しかしながら、二十世紀最後のいわゆる失われた十年では、区財政が未曾有の危機を迎えた中で、戦後の混乱期に次ぐといっても過言ではない苦難の時代でありました。
こうして迎えます区制七十周年を、私は新世紀にふさわしい、夢と希望に輝く豊島区を、二十五万区民とともに築くための船出の年としたいと考えております。既に七十周年事業を区民とともに取り組む準備に入っておりますが、今後区民参加の実施委員会をつくる予定であります。区民の皆様には、創意工夫あふれる企画をお願いしたいと思います。
最後に、二十一世紀に対応する区の文化行政についてであります。
豊島区には、昭和初期の時代から今日まで、アトリエ村が輩出した幾多の美術家、舞台芸術学院や、多くの小劇場から育った若き演劇人などの活躍によって、文化の風が薫り高く吹いてきました。今日、池袋は映画の街でもあり、書店の売り場面積では日本一を誇る本の街でもあります。また、池袋演劇祭が開催され、多くの小劇場もある演劇の街であります。一方、区民の方々の中には、能や狂言、舞踊、音楽の世界で多くの方々がグローバルな活躍をされております。
このように、豊島区には歴史的な文化活動のみならず、最新の文化が豊かに息づいています。これらの豊かな文化資源をお互いに生かし、文化を通じて世代や国境を越えた交流ができる街づくりを目指したいと私は常々思っておりました。
このようなことから、このほど区内四つの大学の学長、東京芸術劇場館長など、区内の十人程度の文化人と定期的に懇談する私的な場を設けました。この懇談を通じまして、文化性豊かな街をともにつくり上げていこうと気持ちを一つにしたところでありますが、この間、私たちは余りにも厳しい財政状況を目の当たりにいたしまして、心のゆとりを失いがちだったのではないかと思ったのであります。
私は、二十一世紀の豊島区に我々の世代が残すべき遺産の一つは、文化の薫り高い街であると思います。
これまでも、区ではさまざまな芸術、文化活動への支援を行ってまいりましたが、区制七十周年をきっかけに、二十一世紀を担う子供たちの心を豊かにする芸術・文化にかかわる行政の分野にさらに積極的に対処してまいりたいと思います。
その一つは海外の都市との文化交流であります。韓国のソウル市東大門区、中国の上海市静安区やドイツのライプツィヒ市などからも文化交流を行おうというお話があります。子供たちや若い世代が国境を越えて異国の文化に接することは、二十一世紀の地球市民としてぜひとも必要なことであります。
また、東池袋四丁目再開発ビルの開設を予定しております交流施設につきましても、区民がみずから演じ、みずから舞台づくりを行う、まさに芸術・文化の創造・発信の拠点として、これまでにないタイプの施設にしたいと、現在、基本計画づくりを急いでおります。
区の基本構想にもありますように、豊島区が豊かな文化と伝統を守り育てるとともに、新しいライフスタイルの中で多様な文化を生み出し続ける街として、二十一世紀にさらに発展できるよう、各界、各層の人々とともに取り組みを強めてまいりたいと考えております。
区議会の皆様のより一層のお力添えを賜りますよう、お願いを申し上げます。
本日ご提案申し上げます案件は、条例十一件、契約一件、権利放棄一件、合わせて十三件でございます。各案件につきましては後刻日程に従いまして助役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。ありがとうございます。(拍手)