本日、ここに平成十五年第一回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。
今定例会の開会に当たりまして、この際、所信の一端を申し上げたいと思います。
最初に、区制施行70周年記念事業について申し上げます。
昨年四月から区や地域主催の記念事業を初め、韓国ソウル特別市東大門区、ドイツ・ライプツィヒ市、中国上海市静安区などの海外の都市との交流を含め約百三十事業にも及ぶ記念事業が実施されました。
今年に入りましても、オリンピックマラソンの銀メダリスト有森裕子さんをお招きしてのエイズ予防キャンペーン、そして名誉区民で文化勲章受賞者の森田茂画伯の作品展、さらに区民の歌「としま 未来へ」の発表式典及びこの歌の作曲者さだまさしさんのミニコンサートを相次いで開催をいたしました。この愛唱歌「としま 未来へ」は大変な反響で、CDの発行や譜面の入手などに関する問い合わせが殺到している状況にあります。広く区民の皆さんに愛されるよう、今後も一層のPRに努めてまいりたいと思います。
また、一月二十九日から二月九日まで西武ギャラリーにおきまして江戸川乱歩展が開催されましたが、総入場者数は一万四千人を超え、まさに70周年記念事業のフィナーレを飾るに相応しい盛況振りとなりました。さらに、二月二十三日には子ども区議会を開催し、小学生の皆さんに区政への関心をより一層高めていただくこととしております。
このように、ほぼ一年間を通じまして様々な記念事業を、区民の皆さんはもとより区内外の大学、企業、団体など幅広い方々の力強いご支援を得て取り組むことができました。この新たなパートナーシップの輪を二十一世紀豊島区の未来へ向けてしっかりとつなげてまいりたいと思っております。
次に、平成十五年度予算案について申し上げます。
私は、平成十五年度予算を次のような基本方針を掲げ編成をいたしました。一つは、景気が低迷し先行きにも不透明感が強まるなど、区財政を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中で、将来を展望した豊島区づくりをさらに進めるとともに、区民の安心を確保するための施策へ重点的に取り組むことといたしました。同時に、第三年次目となる財政健全化計画を着実に実施し、財政構造の改革と健全財政実現を加速させること。この二つであります。
この基本方針に基づき編成いたしました平成十五年度予算の財政規模でありますが、一般会計の予算規模は八百八十八億八千四百万円で、前年度当初予算に比べ十七億八千五百万円の減、率では二・〇%のマイナスとなっております。また、四特別会計を含めた財政規模は一千四百二十二億五千八百万円で、前年度当初予算に比べ二十五億七千九百万円の減、一・八%のマイナスであります。一般会計予算は五年連続のマイナスで、当初予算が九百億円を下回りましたのは平成二年度以来実に十三年振りでありますが、この規模は財政健全化計画で想定した財政規模と同程度のものとなり、平成六年度以降継続してまいりました特定目的基金からの運用を講じることなく予算編成を終えたのであります。
次に、一般会計の歳入の主なものについてでありますが、特別区税は、特別区民税が納税義務者の増加等により、また特別区たばこ税が税制改正によりそれぞれ増収が見込まれるため、対前年度比四億九千七百万円の増、二・一%のプラスとなっております。また、特別区交付金は、調整税のうちの固定資産税が評価替え等により減収になると見込まれることや、本区の基準財政需要額が減少するため、対前年度比十七億三千八百万円、率にして六・三%の大幅なマイナスになるものであります。さらに、特別区債は、平成十二年度以降厳しい発行抑制を続けてまいりましたが、十五年度は学校建設の本格化などによりまして、対前年度比六億七千三百万円の増、三〇・六%のプラスとなりました。その結果、起債依存度は、昨年度より〇・八ポイント上昇し、三・二%となっておりますが、依然として極めて低い水準を維持しております。
次に、歳出でありますが、経費別では、人件費及び事業費が前年度より減少し、投資的経費が増加をしています。人件費は二百四十八億九百万円でありまして、職員数を九十二名減員とする一方で退職者が増加したことによる退職手当の増加などがありましたが、結果といたしまして対前年度比五億三千四百万円の減、二・一%のマイナスとなりました。事業費は、公債費が減少したことに加え財政健全化計画による施策の見直しを引き続き実施したことなどにより、対前年度比二十五億六千九百万円、四・二%のマイナスとなる五百九十億五千五百万円となりました。事業費の規模が五百億円台になりましたのは平成六年度以来九年振りであります。また、投資的経費は、学校建設が本格化したことなどによりまして、平成元年度以降では最小規模となった前年度を三五・六%上回り五十億二千万円となりましたが、投資の対象施策を厳選し、合わせて経費の厳密な積算などを行った結果、引き続き抑制基調を維持することができました。
次に、十五年度予算の重点施策について申し上げます。
重点施策の第一は、都市の再生であります。
池袋副都心を中心とする都市の再生と発展は、本区の魅力ある街づくりを進める上で緊急かつ重要な課題であります。また、戦後形成された首都圏の中核都市やターミナル駅周辺において近年次々と新たな開発が進められる中で、池袋が今後どのように生まれ変わり生き残っていくのか、本区としても改めて積極的に挑戦するべき時期に来ていると考えるのであります。このような都市の魅力を引き出し再構築するという課題に対しましては、明確な将来ビジョンを持って応えていくことが必要であると考え、十五年度中に池袋副都心再生プランを策定することといたしました。
本年十月には工事着工が予定されております東池袋四丁目地区再開発、グリーン大通りの整備構想、都市計画道路一七二号、環状五の一号線など幹線道路網の整備、東西デッキ構想、そしてこれらを総合化して街の質を高めるソフト事業の創設など、池袋の東西に跨る数多くのプロジェクトを新世紀の豊島区を創造するための都市再生戦略として再構築しようとするものであります。
また、大塚駅周辺再生の先導的役割を果たすことになる大塚駅南北自由通路につきましては、JRの駅舎改造と一体的に取り組むこととなりまして、この度、国の都市再生交通拠点整備事業として採択されました。十五年度には基本設計と実施設計に着手し、平成十九年度完成に向けて本格的なスタートを切ることとなります。都市再生事業としては、このほか東長崎駅のバリアフリー化に伴う駅周辺整備計画策定のための調査を実施することとしております。
このほか、池袋本町地区及び雑司が谷地区においては、街づくり事業地区の導入調査を新たに実施するとともに、今議会に上程しております街づくり推進条例に基づく街づくり団体への活動支援を行うこととしております。
また、住宅施策では、住宅施策を安定的・継続的に推進する財源を確保するため住宅基金を新たに創設するとともに、高齢者向け優良賃貸住宅の整備を三団地において行うことといたしました。さらに、昨年来、住宅審議会において検討が行われております新たな住宅マスタープランにつきましても、十五年度策定を予定しております。
重点施策の第二は、教育環境の充実であります。
「ゆとりの中で生きる力を育む」ことを目指して学校完全週五日制の下で新学習指導要領に基づく教育が始まりましたが、「ゆとりは学力低下につながる」との学力低下を懸念する声は一向に収まる気配がありません。私は今こそ、学力とは何か、子供たちに育んでいかなければならない力とは何かについて、保護者・教育関係者はもちろん、地域の皆様とも共通の認識を持たなければならないと考えております。子供たちがこれからの人生において、困難に遭遇しても、たくましく立ち向かい、勇気を持って強く乗り越えていく力、つまり生きる力を育てていくために、今、私たちがすべきことを着実に果たしていきたいと思います。教育委員会では、今後重点的に取り組むべき目標を、わかる授業・基礎基本の徹底、英語教育を中心とした国際理解教育の充実など七項目を定めたところであります。
こうした中、十五年度予算では、全中学校におきまして主要五教科の少人数指導、習熟度別学習が可能となりますよう、本区独自に非常勤教員を合わせて二十名配置することといたしました。また、学校環境の整備は教育の充実にとりまして極めて重要でありますことから、南池袋小学校の建設、大明・池袋第五小学校統合校舎の整備、長崎・第十・千早の三中学校統合校舎と道和・真和中学校統合校舎の建設費などを計上し、基盤整備を一層推進いたします。
さらに、基本計画の見直しに合わせ、学校の適正配置と隣接校選択制度の見直し、また幼保一元化、小中一貫教育の問題など、今後の長期的な学校運営のあり方等を検討するため、仮称ではありますが、「二十一世紀の学校づくり懇談会」を設置することといたしました。そして、この事務局を担当するとともに教育改革を一層推進するため、教育委員会事務局に教育改革推進課を新設することにしております。豊島区の未来を担う子供たちの教育の充実に向けて、教育委員会とも緊密に連携を持って全力を投入してまいりたいと考えております。
重点施策の第三は、文化の風薫る街づくりであります。
私は、区長就任以来、重要施策の一つとして文化政策の充実を掲げ、区を挙げて取り組んでまいりましたが、十五年度には、区制70周年記念事業の諸成果を継承し、文化政策の基本指針となる文化芸術振興プランの策定と教育委員会の芸術分野を統合した文化デザイン課の新設及び文化拠点施設の整備などを合わせて行うこととしておりまして、文化を基軸とした街づくりを大きく展開したいと考えております。
都市の魅力をつくり、個性化させる手段の一つは文化の創造であります。したがって、十五周年を迎えます池袋演劇祭への助成、区民の歌「としま 未来へ」の普及、さらに大学生に中心的な役割を担っていただく大学サミットの開催などのほか、記念事業の成果が一層花開くよう創意工夫に努めてまいります。
また、平成十九年四月に開設予定の東池袋四丁目地区再開発ビル内に整備いたします区民交流施設につきましては、この程、施設計画案を発表いたしました。演劇など様々な芸術文化活動に対応できる多目的ホールを中心に構成されておりますが、区民と施設との関り合いから新しい文化が芽生え、区内外の芸術文化活動の拠点となるよう、文化政策の発展につなげてまいりたいと考えております。
重点施策の第四は、総合的で効率的な行財政運営の確立についてであります。
二十一世紀に相応しい区政運営システムの構築と区民とのパートナーシップの確立は、本議会にご提案申し上げております新たな豊島区基本構想の重要な柱の一つであります。この間、ホット・ほっと区民集会、一日区長室、まちかど区長室など、区民との直接対話を実施し、区政の広範な分野にわたって区民のご意見を伺ってまいりました。また、行政評価制度、包括外部監査、連結バランスシート、行政コスト計算書、補助金制度改革など、従来の行政システムを改革する新たな手法を積極的に導入し、さらにはホームページの開設、会議録の公開、庁内情報基盤の整備などIT時代に対応した行政運営を徹底するなど、新生としま改革プランに掲げました改革メニューを精力的に実行してまいりました。この結果、「区民に開かれた区政」の確立へ向け大きく前進したものと考えております。
十五年度には、新たな基本計画の策定に合わせ、分野別の各種個別補完計画の策定を予定しておりますが、これら計画の策定に当たりましては、策定段階における審議機関等への区民参画はもちろんのこと、策定途上で区民の皆さんのご意見を反映するパブリックコメント制度を新たに導入することといたしております。また、昨年十二月に提出された「区民と行政とのパートナーシップ会議」のご提言の趣旨を踏まえまして、パートナーシップセンター開設の検討とNPOのための相談窓口の開設など、区民活動への支援を強化し、本格的な区民とのパートナーシップ体制を確立する新たな第一歩を踏み出します。IT化の推進では、国の総合行政ネットワークシステム(LGWAN)との接続に伴い、これに連動する庁内文書管理システムの構築にも着手する考えであります。また、住民参加型ミニ市場公募債を初めて発行いたしますが、こうした試みにより区民の区政への参加意識が一層高まるものと期待をしております。
重点施策の第五は、福祉基盤の整備と施策の充実であります。
福祉社会の実現と施策の充実は、地方自治体の最重要の使命でありますが、この間、我が国の社会保障制度は、児童福祉制度の改革、介護保険制度の導入、そして障害者支援費制度の導入と、大きく変わってきております。また、福祉サービスの提供主体も多様化し、また利用者の多様なニーズに柔軟に応えていくための「自らが選択し利用する福祉」への転換が大きな流れとなりつつあります。本区におきましても、このような状況に的確に対応しつつ、本区の特性を生かした福祉施策の充実に引き続き取り組んでいく考えであります。
介護保険制度につきましては、平成十二年度に創設されて以来、既に三年目を迎え、第二期事業年度に向けての初めての見直しが全国一斉に行われております。本区におきましても、去る一月二十七日、第二期高齢者支援としまプラン21の答申を介護保険事業推進会議からいただいたところであります。この答申に基づき、第二期の介護保険事業計画及び高齢者保健福祉計画を策定中でありますが、引き続き介護保険サービスの円滑な提供とそれを支える保健福祉基盤の整備に努めてまいります。十五年度には、南池袋三丁目地区を含む三地区で、特別養護老人ホーム二施設、介護老人保健施設二施設、合わせて三百六十四床を整備するため、建設費への助成を行います。
また、障害者福祉につきましても、十五年度から国の制度改正により支援費制度が新たにスタートし、これまでの「行政による措置」から「契約による利用」システムへと大きく転換されることになります。本区におきましても、この支援費制度への円滑な転換を図るとともに、知的障害者入所更生施設・通所授産施設及び身体障害者療護施設・デイサービスセンター整備への助成、三カ所目となります知的障害者グループホームへの支援など、サービス提供基盤の整備に努めてまいります。
さらに、西部子ども家庭支援センターで実施している発達支援事業につきましては、子供の発達など様々な面で育児不安を抱える保護者の皆さんが支援費制度への移行後も身近な事業サービスとしてご利用になれるよう、小学校就学前のお子さんの利用料につきましては引き続き無料とする考えであります。このほか、新たに福祉サービス権利擁護センターを開設し、痴呆性高齢者、知的障害者など独力ではサービスの利用が困難な方々へのサポート体制を確立してまいります。また、このような取組みをより効果的なものとするため、保健と福祉の総合的な計画である地域保健福祉計画の策定を予定しております。
次に、子ども家庭施策につきましても、現在の児童福祉計画を改定し、新たに、仮称ではありますが、子どもプランを策定するとともに、区民グループによる障害のある中高生の放課後対策事業への支援、プレーパークの開設、全児童館の午後六時までの開館など、新たな取組みを行うこととしております。
重点施策の第六は、環境の保全についてであります。
地球温暖化に対する危機感は、今、全世界で高まり、まさに地球規模での取組みが政府機関のみならず民間団体などを含め幅広く行われております。本区では従来からリサイクル事業を中心に先駆的な取組みを行ってまいりましたが、現在では、これまでの家庭や企業での取組みは無論のこと、街全体の環境浄化、美化活動へと発展をしてきております。豊島区に暮らし、働き、学び、また街を訪れるすべての人々の地球環境を守る活動に対し、支援をさらに強化してまいりたいと考えております。
清掃・リサイクル事業につきましては、十四年度から新たな資源回収・ごみ収集方式を導入いたしましたが、十五年度には、ペットボトル回収回数の増を図るとともに、繁華街の夜間早朝ごみ収集につきまして民間事業者によるモデル事業を行うなど、よりきめ細かな対応を図ってまいります。
また、たばこの吸い殼や空き缶などの路上へのポイ捨てを防止するため、本区では街行く人々のマナー向上を図ることを目的に駅前でのキャンペーンを強化しておりますが、十五年度も新たな啓発媒体として電光掲示板を池袋東口に整備するなど、引き続きこの取組みを強力に推し進めてまいります。
さらに、総合的な省エネルギー・新エネルギー対策を講じるためのビジョンづくりにも着手する考えであります。近年、重点的に取り組んでおります建物の屋上緑化につきましても、公共施設での取組みを初め、個人住宅など民間建築物への助成を拡充していく考えであります。
重点施策の最後は、地域の活性化についてであります。
地域の活性化には、地域経済の活性化が欠かせません。長期の経済不況が続く中、商店街が活力と賑わいを取り戻すためには、これまでにない発想により地域の持っている潜在的エネルギーを掘り起こし、それを新たな事業とし、魅力ある街づくりに結び付けていくことが必要であります。
とりわけ、区民はもとより区外からもたくさんの訪問客に来ていただけるような新たな観光施策の充実が求められております。本区では区制70周年記念事業として全国の友好都市との交流事業や観光物産展の開催、東京よさこいなど地域イベントへの支援などを行ってまいりましたが、これらの施策を引き続き充実させるとともに、十五年度には新たに商工担当部長と観光振興担当課長ポストを設け、商工振興に加えて観光施策の充実という新たな施策分野に取り組む考えであります。また、産業振興計画、観光産業振興プランなども合わせて策定し、区の地域特性と伝統や文化を生かした総合的な政策を確立していくこととしております。
次に、現在の区政に求められている課題についてでありますが、まず男女共同参画推進条例の制定について申し上げます。
昨年二月、本区は男女共同参画都市宣言を行いましたが、本年一月には都市宣言を記念する模擬区議会を開催いたしました。区民による模擬区議会は、長い豊島区政の中でも初めてのことでありましたが、四十名の模擬議員の方々から身近な区政に関わるご質問をいただき、区政における政策決定の一端を体験していただきました。
これらの取組みを踏まえて、今議会に男女共同参画推進条例を提案いたしました。この条例には、性別による差別的な取扱いの禁止、暴力の根絶、男女の社会活動における選択の自由の確保、あらゆる分野における活動の方針の立案及び決定過程への参画促進など、基本となる理念を明確にするとともに、性別に起因する人権侵害の禁止、拠点施設の設置、雇用分野における参画促進、区長の附属機関としての苦情処理委員制度及び男女共同参画推進会議の設置などを盛り込んでおります。この条例の制定を契機に、本区における長年にわたる男女共同参画への取組みをさらに強化し、男女共同参画社会の実現に向け大きく前進させていきたいと考えております。
次に、街づくり推進条例の制定についてであります。
最近の都市計画法や建築基準法の相次ぐ改正により、街づくりに関する住民参加の手法が法律上整備され、地区計画や都市計画の提案制度などが創設されました。さらに、平成十四年には東京都の用途地域の指定方針が新たに定められ、この中で、用途地域の見直しには地区計画が原則として必要とされることになりました。このようなことから、今後の街づくりは、住民の意見のより一層の反映と地区の実情に合った都市計画が必要になってまいりました。
また同時に、本区を停滞から再生へと蘇らせるための方策を築くことが極めて重要であります。このため、本区では従来から他の区に先駆け協議会方式などを取り入れた住民参加型の街づくりを展開してきましたが、このような街づくりのプロセスをこの街づくり推進条例において明確に規定することにより、より一層の街づくりの推進を図ろうとするものであります。とりわけ、今後重要性が増します地区計画につきましては、その策定手続きや住民からの提案ルールを明確に示しておりまして、より公正でスピーディーな対応が図られるものと考えております。
次に、住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットのセキュリティ対策に関する条例について申し上げます。
住基ネットは、本年八月二十五日から住民票の広域交付などの本格稼働に入る予定であります。本区でも、昨年八月の第一次稼働の際、住民票コードの通知を全区民対象に行いましたが、その際、一千六十四件に上るお問合せやご意見を区民の皆様からいただきました。また、十二月には住基ネットをテーマにホット・ほっと区民集会を開きまして、区民の皆様から直接ご意見をいただいたところであります。これらの切実なご意見を踏まえ、本区として住基ネットに参加するに当たり、個人情報の漏洩に対する万全かつ実効性ある対策を講じるため、セキュリティ条例を制定することとしたのであります。
今議会に提出いたしました条例では、区長は区民の本人確認情報等を適正に保護し、その漏洩及び不正利用を防止するため適切な措置を講じなければならない旨の責務を規定するほか、職員の個人情報保護義務、セキュリティ会議の設置、緊急時対応計画の策定、不適正な利用や漏洩の恐れがある場合のシステムの停止措置、切離し措置など、総合的かつ厳格な保護措置を講じようとするものであります。この条例の適切な運用により、区民の個人情報保護に万全を期してまいりたいと考えております。
次に、新たな基本構想について申し上げます。
新たな基本構想については、去る二月六日、基本構想審議会より答申を受け、豊島区基本構想として本議会に議案を提出いたしました。今回の基本構想策定の背景といたしましては、構造改革の推進や地方分権の進展、長引く景気低迷などが挙げられます。
平成七年の現基本構想策定以来、我が国の社会経済システムは、これまでのスピードや効率が重視された高度成長型社会から、安定した生活基盤をもとに、生きる楽しさや心の豊かさを求める成熟社会へと変化をしております。今回の基本構想は、五十二名の参加による三つの分野の区民ワークショップからの提案書をベースに、今後豊島区が目指すべき方向を示しております。こうした計画づくりの段階からの区民の参加は、新たな基本構想案が目指す方向の一つである「あらゆる主体が参画しながら、まちづくりを実現していくまち」という考え方を文字どおり実践していくものであると考えております。さらに、「生活者としての区民が喜びあえるまち」「再び訪れたくなる魅力あるまち」「多くの人々が共に創りあげる文化のまち」の合わせて四つの目指すべき方向を掲げております。
「未来へ ひびきあう 人 まち・としま」を将来像に掲げます基本構想の実現のために、すべての区民が安心して住み続けることのできる地域社会づくりに向け努力する決意を新たにしているところであります。区議会のご賛同を賜りたくお願い申し上げる次第でございます。
最後に、二十一世紀も三年目を迎え、今、私が区政に果たすべき役割について申し上げます。
日本経済は、本格的な景気回復へのきっかけをつかむことができず、またデフレ状態が継続し、国民の間には雇用や暮らしへの不安が日を追って広がるとともに、日本の活力が全体として失われるという状況に直面をしております。当面する国の景気回復策に期待をするとともに、現在の不況の根底にある日本社会の制度疲労にメスを入れるいわゆる構造改革への取組みにも、その道筋がいまだ十分に描かれておりませんが、大いに期待するものであります。
一方、地方分権改革を契機にして地方から国を変えていこうという新たな潮流が全国に生まれてきておりますが、本区におきましても、このような地方からの変革というその流れの一翼を担う積極的な取組みを行い、時代の潮流に負けない心の逞しさを持つ必要があると考えております。
本区でも、この間、全国に向けて新税構想を提起いたしましたが、地方分権改革の下でこうした施策を発信していくことは、国や社会を動かす上で大きな影響力を発揮するものと考えております。地方分権の新たな仕組みをつくるという全国自治体の共通の課題に本区が大きく貢献し、しかも特色ある街づくりを合わせて実現することこそ、今、私に課せられたこれからの使命ではないかと考えております。
私は、昨年十一月の第四回区議会定例会における一般質問への答弁の中で、区民の皆様のご信託を賜ることができますれば、引き続き区長としてその任務を果たしてまいりたいという意向を僭越ながら表明させていただきました。現任期中、地方分権、都区制度改革という大きな制度的変革に引き続き、区制施行70周年という歴史的な節目に区長という立場で区議会の皆様方を初め区民の皆様と共に立ち会えたことは、私といたしましても身に余る光栄であります。
私は、この四年間の区政運営の中で生まれた新たな区民との連携の輪をこれからの区政改革の原動力として、福祉と教育を基礎にした安心とゆとりの社会づくりをしっかりと行っていく考えであります。さらに、豊島区の未来を創造する夢とロマンのある副都心づくりへ邁進したいと考えております。
その夢を実現するために、LRT、即ち新時代に相応しい超低床の路面電車を池袋に走らせる構想をこの程発表いたしました。このバリアフリー化された新路面電車は、人、街、環境にも優しい都会のオアシスとも言うべき存在となる可能性を持っています。発表と同時に、国や都の関係機関、自治体などからたくさんの問合せが来ております。その反応は大変好意的でありまして、導入に向け力強いご支援をいただけるのではないかと強い感触を得ました。この路面電車の導入に合わせ、池袋グリーン大通りの街並みをトランジットモール化し、若者もお年寄りも安心して楽しめる広場につくり変えていくことができるならば、これまでとまた一味も二味も違う池袋の魅力を全国に発信できるのではないかと考えております。
この際、区内外、各界の英知を結集し、夢とロマンの都市づくりへ向けて創造性溢れるプロジェクトに取り組んでまいりたいと決意をしております。それだけに、より一層の区議会の皆様方の力強いご支援、ご協力、ご理解を引き続き賜りますよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。
本日ご提案申し上げます案件は、豊島区基本構想を初め、予算九件、条例十九件、そのほか八件、合わせて三十七件であります。各案件につきましては、後刻、日程に従いまして助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願いを申し上げます。
以上をもちまして、招集のあいさつ並びに所信表明といたします。ありがとうございました。