本日、ここに平成十五年第三回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。
最初に、安全・安心のまちづくりについて申し上げます。
東京都では、去る八月一日、竹花豊副知事を本部長とする東京都緊急治安対策本部を設置し、総合的な治安対策を推進しております。この対策の一環として、九月十七日、都内有数の繁華街を有する豊島、新宿、渋谷の三区長及び所轄警察署長、さらに都からは竹花副知事も出席して治安対策代表者会議が開かれました。席上、私は三区を代表して「東京は世界一安全な街と言われてきましたが、今やその神話は崩れ、東京の治安状況は最悪の事態になっています。とりわけ東京の顔とも言うべきこの三区の治安回復がなければ、東京の治安は決してよくなりません。石原知事を先頭に都を挙げての真摯な姿勢を痛切に感じております。二十三区も認識を新たにし、都との連携・協力を強化していかなければならない」と申し上げ、三区の横断的な取組みを積極的に進めていく決意を表明いたしました。会議では、不良外国人問題、少年問題、まちづくりなどをテーマに対応策を協議して、今後、実務者レベルの幹事会を設けて、これまでにない取組みを行うこととしました。
本区では、平成十二年十一月、豊島区の環境浄化を訴える区民の請願、陳情を受け、他区に先駆けて豊島区生活安全条例を制定しております。一方、東京都の安全・安心まちづくり条例が十月一日に施行されますことから、本区においてもこれを契機に庁内組織を立ち上げ、効果的な施策を検討してまいりたいと考えております。また、来る十月九日には竹花副知事を迎え、第十二回地域安全豊島区民大会を開催いたしますとともに、十一月には、日頃から区内各地域で環境浄化、治安対策に積極的に取り組まれている多くの区民の方々を中心に治安回復総決起大会を開催いたします。さらに、十一月一日には総務部に危機管理担当課長を設置して、総務部長を危機管理監に位置付け、自然災害だけでなく様々な事件や事故に対する総合的な危機管理体制を確立することといたしました。
区民の安心、安全を確保するという、区政にとって最重要の課題に対しましては、治安対策及び危機管理対策の両面から、これまでにない決意をもって取り組んでまいりますので、議員の皆様のご理解とご支援を改めてお願い申し上げます。
次に、平成十四年度決算及び平成十五年度都区財政調整当初算定結果について申し上げます。
平成十四年度一般会計決算額は、歳入が収入率九六・四%で九百十五億四千四百八十一万四千円、歳出が執行率九五・三%で九百五億二百七十万六千円となり、前年度決算額に比べて、歳入の伸び率はマイナス一二・八%、歳出伸び率がマイナス一一・五%と、いずれも平成六年度に次ぐ大幅なマイナスとなりました。歳入の減は、特別区税が課税人口の増などにより二年連続して増収となったものの、地方消費税交付金や特別区交付金が三年振りに、しかも大幅な減収となったことによるものであります。また、歳出の減は、投資的経費及び退職者増による人件費の増加はあったものの、一般行政経費、公債費が減少し、財政健全化計画による経費抑制効果が反映されたことによるものであります。
歳入歳出の差引きである形式収支は十億四千二百十万八千円、実質収支は前年度に比べ大幅減の八億五千百二十万八千円となりました。また、単年度収支は十八億八千二十七万七千円、実質単年度収支は二十五億四千八百二十三万五千円と、いずれも赤字となりました。経常収支比率については、二年連続で八〇%台になったものの、経常一般財源が大きく落ち込んだため、前年度より五・七ポイント高い八八・八%となり、財政硬直化が懸念される結果となりました。
次に、平成十五年度都区財政調整の当初算定結果についてでありますが、本区の算定額は、二百三十億二千七百万円と前年度の当初算定に比べ十八億三千三百万円の減、七・四%のマイナスとなるとともに、本年度当初予算額を十七億四千五百万円下回る結果となりました。この要因は、基準財政需要額の算定に差が生じたためであります。こうした算定結果となりましたため、今後、算定残による追加交付、特別交付金の拡充などに努めるとともに、より一層厳しい執行管理を行うこととしております。
次に、平成十六年度予算編成について申し上げます。
我が国の経済は、長引く景気低迷の中で概ね横這いで推移し、所得や雇用環境など、いずれも依然として厳しい状況が継続しておりますが、一方で、一部の大企業の業績の回復などを反映して株価が一万円台に乗るなど、明るい兆しも僅かながら見えてきております。今後の経済動向につきましては、構造改革の推進とデフレ克服に向けた総合的な取組みが行われておりますが、不透明感は依然として払拭されておらず、区財政を取り巻く環境も引き続き厳しい状況であります。
平成十五年度予算は、財政健全化計画に基づく歳出の抑制と収入確保等に取り組んだ結果、特別な財源対策を講ずることなく編成できました。しかしながら、先程申し上げました十四年度決算では、三年振りに運用金を十億七千八百万円充当したところであります。また、本年度予算の歳入においても、特別区交付金が十七億四千万円、財政調整基金繰入金が二億九千六百万円と、それぞれ既に予算割れが確実視される状況であります。
このように厳しい財政状況の下で編成中の十六年度予算につきましては、現段階では約七十二億円の財源不足が見込まれる状況であります。平成十三年度から取り組んできた財政健全化計画により一定の財政効果を生み出したにもかかわらず、健全化計画の策定時の見通しを超える歳入の落込みによりまして、区財政は依然として極めて厳しい状況にあります。したがいまして、今後とも徹底した歳出抑制とあらゆる手段を尽くして財源確保に努め、財政の健全化、そして基盤強化を強力に推進する必要があります。そのためには、内部努力の徹底はもとより、行政サービスや官民の役割分担のあり方の見直しなどを、この際、聖域を設けずに徹底的に検証するとともに、最終年度である財政健全化計画を着実に実行する決意であります。
次に、新税の導入について申し上げます。
全国的にも初めての試みとなる放置自転車等対策税とワンルームマンション税という本区独自の新税構想につきましては、昨年の五月以降、法定外税検討会議におきまして熱心な検討・論議が行われてまいりましたが、九月二十二日には最終報告がまとめられました。この検討会議には区民の代表や専門家のほか、関係者の代表にも参加をしていただき、それぞれの立場からの意見を存分に述べていただけるよう十分な時間をかけていただきました。時には非常に厳しい意見の応酬もあったと聞いております。
平成十二年の地方分権一括法施行に伴い創設された法定外目的税は、自治体の自主・自立を支える新たな税財源として多くの自治体で検討が進められてきました。しかし、実現されたものはそのうちの極一部にしか過ぎません。途中で中断されたものも少なくなく、新しい税をつくることがいかに困難なものであるか、改めて痛感をしているわけであります。
検討会議の結論としては、両税ともに導入は妥当であるとのご判断をいただきましたが、初めに税ありきではなく、地域社会の課題について、このようなオープンな論議の場を設けた本区の試みに対しまして全国的にも高い評価を得ているものと自負をしております。今後は、パブリックコメントや区民集会を通じまして、広く区民の皆様のご意見をお聴きいたしまして、条例案の検討に着手し、早ければ区議会第四回定例会に提案をいたしまして、区議会のご審議を賜りたいと考えております。
次に、自治基本条例研究会の設置等について申し上げます。
本年三月に議決をいただきました新たな区基本構想におきましては、地域づくりへの区民等の参画と協働を徹底して進めるための仕組みを(仮称)自治基本条例に位置付けることとしております。自治体の憲法とも呼ばれる自治基本条例は、区、区長、事業者の責務を明らかにするとともに、区民の権利と義務を定義し、区民等の参画と協働の仕組みを定めるものであります。この条例制定に向けて、十月に区民、学識経験者、区職員で構成する自治基本条例研究会を設置し、課題の整理、検討を行い、明年三月には報告書として取りまとめる予定であります。また、本年七月には、基本構想審議会の会長である森田朗東京大学教授を初めとする有識者が参加して、基本構想策定記念シンポジウムを開催したところでありますが、地方分権時代に相応しい公共経営のあり方など、今後の区政運営の道筋を明らかにしていくための熱心な議論が交わされました。
このような新たな区政運営の方向を具体化する一つとして、これまでも私は区政への区民参加を進めるための対話集会、まちかど区長室などを開催してまいりましたが、この度、このまちかど区長室を引き継ぎ、新たにお茶の間区長室を開設いたしました。このように区民の皆様のご自宅に直接お伺いし、膝を交えて区政を初め身近な生活のことなどを語り合うことにより、区民の区政参加をより一層促進しようとするものでございます。このお茶の間区長室を初めとするあらゆる機会を通じまして、「未来・信頼・ふれあい」の区政を積極的に進めていきたいと思います。
次に、社会福祉協議会発足五十周年について申し上げます。
社会福祉法人豊島区社会福祉協議会は、昭和二十八年に設立され、今年で五十周年を迎えました。少子高齢化がさらに本格化するこれからの時代、地域福祉の推進は最重要の課題と認識をしております。とりわけ区民参加や区民との協働が強く求められる中で、その実現の場として社会福祉協議会の役割はますます大きくなるものと考えております。社会福祉協議会は、これまでも地域福祉の推進役として、また区の福祉行政を側面から支える重要な役割を担っておりましたが、今年度からは権利擁護のための窓口「サポートとしま」を開設しております。毎月百五十件を超える相談が寄せられており、困難ケースには十三人の弁護士が専門相談で対応しております。十二月七日には五十周年記念式典が予定されておりますが、この機会に現在の会員約四千人を一万人まで拡大する運動に取り組むこととしておりまして、区といたしましても全力を挙げて支援をしてまいりたいと考えております。
次に、文化の風薫る街づくりについて申し上げます。
本区では昨年度、区制施行70周年記念事業の一環として、区民の歌「としま 未来へ」を制作いたしましたが、この度、CD五千枚の有償頒布をいたしております。恐らく自治体としては初めての試みではないかと思います。今月の十五日と二十三日に東京芸術劇場大ホールで催されました豊島区管弦楽団と吹奏楽団それぞれの定期演奏会では、公募による区内の小学校一年生から六年生までの児童四十五名が参加し、緊張しながらも元気いっぱいに「としま 未来へ」を歌いました。また、としまテレビでは、すべての区立小学校二十四校の皆様による学校紹介とともに、「としま 未来へ」の合唱を放映しております。このように、今後とも区民の歌が広く区民の間に浸透し、愛唱歌として長く歌い継がれるよう、その普及に努めてまいりたいと考えております。
また、七月十六日には「文化の風薫るまちづくり」をテーマといたしましてホット・ほっと区民集会を開催いたしましたが、百四十名余の区民の方々にご参加をいただき、大変熱気ある集会となりました。こうした区民の皆様の熱い思いを形にしながら、これからの文化を機軸とした魅力と活力ある、愛着と誇りの持てる街づくりのために力を尽くしてまいりたいと考えております。
次に、観光都市としまについて申し上げます。
観光都市の一番の華はお祭りです。この夏から秋には本区の代表的な祭りが次々と繰り広げられています。夏の終わりを飾る一大イベント「第三十一回大塚阿波踊り」は、八月二十七日の前夜祭、二十八日の本祭りが盛大に開催をされました。また、秋の最大イベント「第三十六回ふくろ祭り」も、初日の九月二十日には「踊りの祭典」が、そして二日目の二十一日には「第四回東京よさこい」が開催されました。折からの台風の影響であいにくの天気となりましたが、雨風を吹き飛ばす勢いの皆さんの熱い踊りに街が一つになり盛り上がりました。東京よさこいは、昨年の一・五倍、八十四チームの参加という都内屈指の規模となりました。また、両日、西口公園では昨年の八市町村を大きく上回る十五市町村によります友好都市観光物産展が開催され、多くの区民で賑わい、都市交流の輪が広がりました。都市交流のうち、秩父市との友好関係は本年で二十年目を迎え、十月一日には記念式典を開催することとしております。引き続き九月二十七日のミュージックフェスティバル、二十八日のクライマックス「神輿の祭典」と、池袋駅西口周辺はお祭り一色となります。この秋の区内のお祭りの成功が、豊島区の目指す「活気に満ちた魅力溢れる観光都市としま」の実現につながるよう、大いに期待するものであります。
次に、都市再生への取組みについて申し上げます。
西武池袋線東長崎駅の改良につきましては、地元の皆様から長年にわたり強いご要望をいただいておりましたが、この度、国が新たに鉄道事業と都市再生事業を同時採択するという駅・まち一体改善事業を創設し、その第一号の候補地として東長崎駅が選定されました。区といたしましても、地元の皆様から強いご要望のあります駅施設のバリアフリー化、南北自由通路、駅前広場などの整備を実現するために積極的に取り組むことといたしました。これらの整備により、東長崎駅周辺は魅力溢れる街へと生まれ変わるものと確信をしております。
また、池袋活性化の起爆剤となるとして提起いたしましたLRT構想につきましては、現在、その実現に向けて区内部での検討を進めておりますが、年内には一定の方向性を明らかにしたいと考えています。一方、この構想につきましては区内外から大きな反響を呼んでおりまして、この程地元の区民、企業、関係団体からなる「池袋の路面電車とまちづくりの会」が組織されました。八月二日には、この会の主催により、法政大学の黒川教授を初め多くのゲストを招きまして「路面電車を考えるフォーラム」が開催され、三百人以上の区民が集い、熱心な論議が進められるとともに、八月二十五日には会の有志によるLRT想定ルートなどの現地視察会が開催されたところであります。さらに、国の都市再生本部が広く全国から募った都市再生モデル調査事業として、本区のLRT導入調査が採択されることになりました。この調査は、全国各地の先導的な都市再生活動を支援するため、全額を国の負担で実施するものですが、国としても本区のLRT構想に大きな関心を寄せていることが窺われます。
池袋は、豊島区の中央に位置しています。池袋を中心として多数の地域拠点が個性を競い合うことによって、豊島区全域に活力が漲ります。中心が沈滞していれば区全体が元気を失ってしまいます。池袋副都心の再生は豊島区発展の命運を握っていると言っても過言ではありません。こうした認識の下、私は池袋副都心の再生に今後とも全力を投入していく所存でございます。
私は、二期目となりますこれからの四年間の間に、豊島区を安心して過ごせる、魅力・活力溢れる街にしたい、このように決意をしております。安心して過ごせる街にするためには、治安対策はもちろんのこと、子供たちから高齢者までそれぞれが地域で安心して過ごせる環境づくりが大切であります。このため、前回、所信表明においても申し上げました地域区民広場構想についても、さらに内容の検討を深めてまいりたいと考えております。また、子供たちの健全な成長と生きる力を育むための教育と福祉の連携を視野に入れつつ、二十一世紀の学校と地域のあり方についても教育委員会と連携し検討を深めているところであります。
このような福祉と教育の基盤整備を基礎に、街全体の魅力と活力を生み出していく新たな街づくりの方向を、私はこの間、文化の風薫る街と都市の再生として提案をしてまいりました。極めて厳しい財政状況にあるにもかかわらず、このような課題に私が敢えて挑戦するのは、現在のような厳しい時期にこそ未来に向けてのメッセージが必要であると考えるからであります。今、池袋の地盤沈下には極めて深刻なものがあります。サンシャインプラネタリウムの閉鎖はその一例であります。ますます激しくなる都市間競争にややもすれば遅れをとり、そのことがさらに街の衰退をもたらすという悪循環に陥りつつあります。確かに現在の区には財政的にこの状況を一気に打破する力はありませんが、自分たちの住み、働く街のイメージアップを図るという意識改革に区民や事業者などが一致団結して取り組むことができれば、街づくりの新たなテーマが生まれ、街自体が大きくその様相を変えていくことができるものと確信をしております。
LRT構想は、まさに新しい街づくりへの起爆剤であり、池袋副都心の新たな文化そのものを表現するものであります。これをきっかけにグリーン大通りの街並みをもっともっとお洒落で賑わいのあるものにつくり変えていく可能性が生まれます。また、再開発事業が完成すれば、新中央図書館や交流施設も文化発信の基地としての力も街の発展に大いに寄与することでありましよう。そして、一千戸以上の住宅が完成し、この新たな魅力に引かれる新たな区民が集まってまいります。区の財政基盤も徐々に強化されることになると思います。私は、これからの時代に求められるものは、行政、区民、民間が知恵と汗を出し合って、街のイメージづくりを前面に押し出した、まさに都市再生への取組みによって魅力と活力ある街をつくり上げることではないかと考えております。ここに改めて、議員の皆様のご理解とご支援を賜りたく、お願い申し上げる次第でございます。
本日ご提案申し上げます案件は、条例五件、決算認定五件、予算二件、その他七件の合わせて十九件であります。後程、日程に従いまして助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願いを申し上げます。
以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。