平成15年第4回区議会定例会招集あいさつ

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 本日、ここに平成十五年第四回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましては何かとご多忙の中にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝申し上げます。


 去る十一月九日、総選挙が行われ、新たな衆議院の構成が決まりました。今回の選挙では、国の重要な政策課題をめぐってマニフェスト、即ち政権公約を各党が掲げて選挙戦が行われた点に大きな特徴がありました。国民にわかりやすい政治が進められていく大きな転換点となったのではないかと思います。従来にも増して区民にわかりやすい区政を政治姿勢としてまいりました私といたしましても、今後の国政の動向に大いに注目してまいりたいと思います。


 まず、区政の重要課題への対応について申し上げます。


 最初に、「公共施設の再構築・区有財産の活用」本部案について申し上げます。


 今回の再構築案は、その規模、内容のいずれを見ましても、言わば豊島区として平成の大改革とも言うべきかつてない思い切った内容となっております。本区におきましては、昭和四十年代以降、区民福祉の向上を目指すという時代の要請もあって、積極的な施設整備を行ってまいりました。この間約三十年間に、用地取得に約一千二百二十億円、施設建設に約一千七百六十億円、合わせて約三千億円を投入いたしました。この結果、本区の施設設置水準は、二十三区の中でも極めて高い水準に達しました。保育所の定員数は二十三区平均の一・六倍で一位、児童館の数も二倍以上で一位、ことぶきの家の数は五倍以上で二位であります。この他、社会教育会館、体育施設の数なども上位にランクされております。


 しかしながら、平成十二年度の施設白書でもお示しいたしましたように、本区の公共施設整備や管理のために支出された経費は、公債費なども含めますと、私が区長に就任した年の平成十一年度一般会計決算ベースで歳出規模全体の四三・七%を占めております。白書ではこの施設関係経費が本区の財政硬直化の大きな要因の一つであると指摘しておりますが、問題は、これらの施設を維持していくための改修経費だけでもさらに毎年数十億円規模の経費を要するという点であります。建築後四十年を経過する施設が既に二〇%近くを占めている上に、さらに年を追うごとにその数も増えてまいりますが、これら老朽化した施設の改修経費は今後十年間で約六百億円近くになるものと予測をしております。さらに耐震補強経費約六十億円を加えると、毎年六十五億円余の改修経費が必要となります。しかし、現実に予算化できた額は、平成十五年度予算では十億円にも満たない額であります。


 経済が右肩上がりの時代には建設後のランニングコストをさほど意識しなくても何とか維持できたのでありますが、現在のように先行き不透明な、さらに厳しい経済状況が予測されるときには、当然のことこれらの施設をこのままで支えていくことは極めて困難であります。昨今、公共経営ということがよく言われますが、まさに行政運営の基本にこれまでは経営感覚が欠けていたと言っても過言ではありません。つくるだけつくって後の始末は人任せ、このような無責任な体質が無意識のうちに行政そのものの体質になってしまったのではないか、このように考えざるを得ないのであります。


 私は、区長就任以来、一貫して区財政の再建に努めてまいりました。平成十三年度からの四年計画であります財政健全化計画を実施することによりまして、これまでに起債残高を百八億円削減し、公債費比率も一〇%台前半に抑制してまいりました。さらに、九九%近くにまで上昇していた経常収支比率も何とか八〇%台にまで押し下げるなど、人件費の大幅な圧縮も実行してまいりました。この結果、平成十三年度一般会計決算は、まさに血の滲むような努力を議会と区民、そして職員と共に成し遂げ、実質二十七億円の黒字となったのであります。


 特に私は、千登世橋中学校及び南池袋小学校の二つの新校舎につきましては、豊島区の未来を担う子供たちの成長を願って、最優先に建設を実行いたしました。教育環境の整備こそ教育内容を充実させる基本だからであります。本年度の区立中学校への進学率は六六%であります。このまま手をこまねいていては、区立小学校の卒業生の半数が区立中学校に進学しないという、まさに豊島の教育の基盤そのものが崩壊する事態を招きかねません。このため私は、極めて厳しい状況の中でも、この学校建設だけは実現しなければならないと決断したのであります。


 また、学校跡地の有効活用として、旧雑司谷小学校跡地を活用し、保育園、福祉施設、住宅施設など区民の要望にできる限り応える施策を講じてまいりました。しかし、定期借地権という特別な方式をとりましたこの事業計画も大変厳しい道のりでありました。


 このように、必要最低限の建設事業に絞り込み、財政健全化にすべてを傾注してきたのであります。しかしながら、日本経済の低迷はいまだ予断を許さない厳しい状況が続いており、平成十四年度決算は実質二億円の赤字となったのであります。


 私の区長在任五年間を振り返ってみますと、ぜひ実現したい事業でお金のかかるものはすべて目をつぶってきました。いつかは景気がよくなると期待しながらの日々でありました。さらに、区の歳入規模は平成十三年度決算ベースの一千五十億円が平成十五年度当初予算では八百八十八億円と九百億円台をも下回り、財政健全化計画の最終年度に当たる平成十六年度予算を現在編成中でありますが、当初計画した実質黒字達成の目標の実現は極めて厳しい状況にあります。今後も中期的には歳入規模が八百五十億円前後にまで落ち込むのは必至の状況にあります。この歳入規模を本区の身の丈とするならば、この身の丈に合った行財政規模への構造転換を今成し遂げなければ明日の豊島区の存立が危ぶまれる状況にあると言っても過言ではありません。


 この間、血の滲むような財政健全化へ向けた努力を重ねながらも依然としてこのような状況に甘んじている背景には、日本経済の極度の長期低迷の結果、大幅な税収減が続いていることがありますが、本区の財政構造硬直化の大きな要因であります公共施設の見直しが遅れていることが何と言っても最大の原因であります。もちろん歳入が減っている中でも毎年扶助費など義務的経費は確実に上昇しており、これらを抑えることは非常に難しい状況でもあります。私は、今回の本部案にお示しした施設の再構築、即ち施設の廃止・休止や民営化、売却を含めた資産活用の徹底を実行しなければ、本区の財政構造の改革は果たせず、早晩、財政破綻、赤字再建団体転落への危機の再来とならざるを得ないと考えております。今回の再構築案は、このような極めて厳しい状況を根本から打開していくためには何をなすべきか、このことを最大の課題として提案したものでありまして、二十一世紀、新しい時代の区民のライフスタイルにどう応えていくのか、また右肩下がりの厳しい財政状況にいかに適合させていくのかという、大きく二つの面から抜本的な見直しを行ったものであります。


 二十一世紀としまの将来ビジョンにつきましては、この三月に新基本構想を策定したところですが、その基本的な考え方は、区民との協働の推進であります。この区民との協働を実現する方策として、今回、小学校区を基礎単位とする地域区民広場構想の発想が生まれてきたのであります。地方分権の推進には、国の制度や法律の整備も必要でございますが、地域に住む住民が地方自治の主人公として現実に活動できる条件を整えることが最も重要であると考えております。私は、これまでも区民の目線に立った区政、区民にわかりやすい区政を一貫して進めてまいりましたが、区民が自らの活動を通じて区政運営に参画する道筋をつくるという点では、まだまだ行政の施策としては不十分だったと思います。


 この区民広場構想では、小学校区を地域コミュニティの基礎単位とすることを明示しております。小学校区は平均して半径四百メートル前後の区域であり、幼児や高齢者が歩いて通え、フェイス・トウ・フェイスの交流ができること、また小学校の卒業生などのつながりを通じて世代を超えての連携を図りやすいことなど、区民には極めてわかりやすい単位であると考えます。この小学校区単位に、地域の団体を中心に区民広場の運営協議会をつくり、事業の企画・実施、施設の管理・運営などをできる限り委ねてまいりたいと考えております。まさに区民と行政との協働、パートナーシップ実現の舞台とするものであります。このような構想は一朝一夕に実現するものではありませんが、どんな小さな芽であっても、その芽を大切にし、育て上げていく過程が極めて重要であります。この区民広場の中にこの芽をしっかりと根付かせ育てることにより、真の地方分権がこの豊島区に誕生するのではないか、このように期待をしております。


 また、地域に馴染み深い児童館、ことぶきの家、区民集会室、社会教育会館、学校開放施設などを施設の縦割りの壁を取り払い、小学校区単位に再編成することにより、施設全体の減量化が可能となるとともに、地域の特色に応じた施設運営が可能になるものと考えます。学区内の学校を中心に様々な機能が一つにまとまることが理想ではありますが、点在する施設を事業の展開に合わせ、区民の創意工夫により有効に活用していくことも自治活動発展の大きな要素になるものと思います。さらに、これまで福祉と教育という形で別々に実施してきた小学生の放課後対策につきましても、新たに学校施設を活用し統一的に展開する全児童クラブ構想を打ち出しておりますが、従来の児童館の果たしてきた役割を区民広場というより広い舞台で継承、発展させることにより、地域で子供を育て、地域が学校を支えていくという方向をより明確にすることができるものと考えております。


 次に、今回の再構築案では、学校統合や今回の再構築により生み出される施設・用地について、売却を含めた資産活用に大きく踏み込んでおります。現時点で上げております二十五カ所の資産活用候補地につきましては、街づくりに寄与し地域の発展を促すような方向での活用を図るべく、大胆かつ慎重に検討してまいりたいと考えております。この活用により生み出された財源は、財政基盤強化のために生かしてまいりたいと思います。また、できる限り施設を集約し、集約した施設の跡地の活用により生み出した財源を新たな施設整備の財源に充当していくという手法を徹底していく必要があります。また、施設の管理運営のあり方につきましても、これまでの公設公営中心から公設民営や民設民営を中心としたものに大きくシフトしていく考えを示しております。とりわけ今年九月に施行されました地方自治法改正によりまして、広く民間事業者に使用許可などの行政処分を含めて公の施設の管理運営に道を開くことになりました。この際、この制度の積極的な活用によりまして、施設運営の柔軟な展開や管理運営コストの削減を図ってまいりたいと思います。


 以上のような再構築案は、新基本構想の策定、基本計画策定に向けた区民ワークショップからの提案、「区民と行政とのパートナーシップ会議」の提言などにおいて、区民との協働により地域社会づくりを進めていこうという気運が急速に高まってきたことを踏まえ、素案に修正を加え今回の案にまとめたものであります。素案からの大きな修正点は、地域コミュニティの基本となる地域区民広場を核とする再編構想を示したこと、学校統合や今回の再構築で生み出される施設・用地について売却を含めた資産活用にまで思い切って踏み込んだことであります。私は、平成十三年一月に策定した新生としま改革プランの柱に公共施設の再構築と区民との協働の推進を大きな柱として掲げてまいりましたが、このような一貫した取組みの成果が今回の再構築案に凝縮して示されていると考えております。今後、十二月五日号及び十二月十五日号の広報としまやホームページへの掲載、十二月の区政連絡会での説明、明年一月から二月の地域説明会の開催など、あらゆる機会を通じましてこの再構築案を広く区民の皆様に周知してまいる考えであります。


 また、区財政の中期的な見通しにつきましては、現在編成中の平成十六年度予算案を発表します来年初頭には区議会や区民の皆様にお示しをし、この財政フレームを踏まえつつ、現在策定中の新たな基本計画にこの再構築案の内容を盛り込んでまいりたいと思います。今回の本部案のように区内全域にわたりほとんどの分野の施設・用地を対象にした大改革に取り組みますのは、本区におきましても初めてのことであります。それだけに区民の皆様のご理解、ご支援がなければ到底成し得るものではございません。豊島区の将来をしっかりと睨んで、逃げないで、先送りせずに真正面からぶつかっていきたいと思いますので、議員各位と十分な論議を尽くしてまいる考えであります。私は、今回の改革を私の政治生命にかけ、背水の陣を敷いて取り組む覚悟でございます。改めて議員各位のお力を賜りますよう、心からお願い申し上げる次第であります。


 次に、二つの新税条例について申し上げます。


 昨年、構想として発表いたしました放置自転車等対策税とワンルームマンション税の二つの法定外税につきまして、学識経験者や利害関係人などで構成する法定外税検討会議での約一年四カ月にわたる検討を経て、先般、両税の導入を可とする最終報告書の提出を受けました。私は、この報告書の内容を慎重に吟味し、検討会議の結論を踏まえまして、この度二つの新税を導入する方針を固め、それぞれ豊島区放置自転車等対策推進税条例案、豊島区狭小住戸集合住宅税条例案として今議会に提案いたします。


 放置自転車等対策推進税は、この財政難の中で平均十億円もの巨費を投入しても、なお全国ワースト順位の上位にとどまっております放置自転車問題の現状を打開するためのものであります。即ち、自転車利用者と行政と、そして大量駐車需要を発生せしめる鉄道事業者の三者が責任と負担を適正に分担する仕組みとして、区内駅における旅客輸送の規模に応じて鉄道事業者に課税するものでございます。


 狭小住戸集合住宅税は、単身世帯の占める割合が実に全世帯の五六%に達している本区において、狭小な住宅がこれ以上増加することを抑制しようとするものであります。ゆとりのあるファミリー用住宅を誘導して定住化を進めるために、一定基準に満たない狭小な集合住宅を建築しようとする場合にその建築主に対して課税するものでございます。


 このような地域特有の課題を解決するための新たな政策手法として法定外税を積極的に活用することは、地方分権時代に相応しい自治体経営における大きな試金石になると考えております。この二つの新税に関する条例案につきまして、よろしくご審議くださるようお願いを申し上げます。最後に、住民参加型ミニ市場公募債「豊島ふれあい債」の発行について申し上げます。


 本区では初めてとなりますミニ市場公募債につきましては、十二月五日から募集を開始することとなりました。発行額は五億円、償還年限は五年で、満期一括償還となります。利率は、国債や都市場公募債の利回りなどを参考に決定し、十二月四日に発表の予定であります。今回は、新豊島清掃事務所の建設及び区立小中学校の耐震補強工事などの経費に充当するものでありますが、このように使途を明確にした上で区民から直接資金調達を行い施設整備を行うことによりまして、区政への区民の参加意識が今後ますます高まっていくことを期待しております。


 この度の招集あいさつで申し上げました中心は、今まさに乗り越えなければならない「公共施設の再構築・区有財産の活用」という課題への私の思いのすべてであります。国家百年の計と申しますが、私は、この改革の機を逃すことなく、まさに豊島区百年の計に向かって、直面する状況の本質をしっかりと捉え、確固不抜の決意で立ち向かう必要があると考えております。私は魔法の杖を持っているわけではありません。決して奇跡が起きるわけでもありません。区議会、区民の皆様と共に、二十一世紀としまの未来を切り開くこの歴史的な事業に自らの渾身の力を振り絞って臨んでまいりたいと強く決意しているところでございます。ぜひとも議員各位のお力を賜りますよう、重ねてお願いを申し上げる次第でございます。


 本日ご提案申し上げます案件は、条例十一件、予算二件の他、三件の合わせて十六件であります。後程日程に従いまして助役よりご説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願いを申し上げます。


 以上をもちまして、私の招集あいさつといたします。