本日、ここに平成十六年第二回区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員各位におかれましてはご多忙の折にもかかわりませず、ご出席を賜りまして深く感謝を申し上げます。
さきの臨時会におきましては、区議会の最高人事を含む議会構成が決定され、豊島区政の一層の発展を目指して議会活動が展開されておりますことに対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。
最初に、新たな行財政改革に向けた私の決意について申し上げます。
平成十一年に区長に就任してから五年、私が自らに課し続けた最大の課題は区財政の再建であり、これまでその実現に向けて全力を傾注してまいりました。平成十三年度からの四年間の財政健全化計画では、議員の皆様を初め区民の皆様の大変なご理解とご協力により、歳出抑制と歳入確保を合わせて百四十三億円の健全化対策を実施いたしました。これに財源対策を含めますと二百十九億円もの対策を講じ、財政を維持してきたわけであります。さらに、この間、特別区債の残高をピーク時の六百六十七億円から百億円縮減し、三百人を超える職員定数の削減を達成いたしました。しかし、こうした効果を生み出す一方で、増加し続ける義務的経費や特別会計への繰出金、そして都区財政調整交付金の大幅な減額の影響もあり、結果として、十六年度において特別な財源対策を講じることなく予算編成を行うという目標を達成できなかったわけであります。財政調整基金も底をつき、旧時習小学校の跡地を売却せざるを得ない状況であります。現時点で振り返りますと、この四年間の取組みでは、事務事業の改善は積極的に実施したものの、新規需要に対応した事業を加える一方で、休廃止した事業はほとんどありませんでした。また、平成十二年の施設白書で指摘した歳出規模の四三%を占める施設関連経費の縮減についても、十分に踏み込んだとは言えません。こうしたことから、この間の取組みは、一時的な延命策としての効果はあったものの、歳出構造の構造的な改革には至らなかったものと深く反省をしております。
さらに、これから先、改革を実施せず、現状のサービス水準を維持した場合には、現時点で、平成十七年度に七十一億円、二十一年度までの五年間で三百八億円という財源不足が見込まれており、区長就任以来、最大の難局に直面しております。しかし、私は、この難局こそ抜本的な改革を成し遂げる好機と捉えるべきであると考えております。難局に立ち向かう必死の覚悟の中から、改革を進める斬新な発想と力が生まれ、制度疲労に陥った仕組みを廃し、過去のしがらみを断ち切ることができるのであります。今を逃しては大きな改革は成し得ません。これまでの四年間の取組みをさらなる平成の大改革へとつなげ、聖域を設けることなく区政の構造改革を推し進めてまいりたいと思っております。
改革への取組みは、それ自体が目的ではなく、区財政を蘇らせ、新たな地域経営を展開する力を生み出すためのものであります。都市間競争が激しさを増す中、地域経営の主体としての自治体の役割がクローズアップされております。明確な将来ビジョンと政策を掲げて、地域が持てる力を引き出し、文化政策や都市再生、教育力の向上など、明日に向けた地域の価値を高めるまちづくりを進めていくことが重要であります。現在の厳しい財政状況の中でも、東池袋四丁目における交流施設と新図書館、そして新中学校の整備への着手を決断したのもそのためであります。しかし、残念ながら、現在の区財政は新たな文化政策や都市再生を力強く推し進めていくだけの力を失いかけております。最近の統計を見ますと、平成九年以降増加してまいりました人口が、一時的であるとは思いますけれども、平成十五年には減少に転じ、二十三区で唯一人口が減少する結果となりました。池袋を初めJR五駅の乗降客数も、平成三年と十三年を比較いたしますと、全駅で減少をしております。また、平成十六年の地価下落率を二十三区で比較いたしますと、商業地では二番目、住宅地では五番目の大きな下落となるなど、豊島区はその輝きを次第に小さくしているように感じております。
深刻な危機から立ち直るための改革を実行する過程では、これまでにない大きな変化や痛みを伴うことがあるかもしれません。しかし、これから進める改革を成し遂げて初めて未来を切り開く力が回復し、私たちの次の世代に魅力と活力ある地域社会を引き継ぐことができるのであります。私は、今回の改革に臨み、区長としての政治生命をかけ、一つ一つの課題に向けて全力を尽くす決意であります。区議会の皆様におかれましても、何とぞご理解をいただき、区民の視点から、そして大所高所からのご意見・ご指導を賜りますよう心からお願い申し上げます。
それでは、現在取り組んでおります新たな改革プランの策定方針について申し上げます。
本格的な少子高齢化の到来は、自治体の行政運営に構造的な変革を迫っております。今後の低成長・成熟社会においては、もはや大きな税収の増加を望むことはできません。その一方で、扶助費や特別会計への繰出金が伸び続けるとともに、公債費や施設改修経費、人件費等が財政を圧迫し、硬直化が進んでおります。右肩上がりの時代に拡大してきた行政サービスを維持する経常的・固定的な経費の負担が大きくなる一方、社会の変化に対応して新たな施策を展開するための政策的経費が確保できない状況に立ち至っているのであります。刻々と変化する社会状況に機敏かつ柔軟に対応していくためには、身の丈を超えて拡大した行政サービスを歳入に見合った水準へとスリム化していくことが必要であります。
また、こうした中、自治体経営も大きく転換することが必要であります。行政中心から民との協働へと、公共サービスの提供を多様化していかなければ、少子高齢社会における地域社会のニーズを支えていくことはできません。行政を初め多様な主体が公共サービスを担い合うことで、きめ細かなサービスが提供されている社会、いわば「新しい公共」の創造に向けた構造改革が今こそ必要であります。現在進めている地域区民ひろば構想は、こうした考え方を一つの形にしたものであります。私は、こうした認識の下、「身の丈に合った持続可能な財政構造の回復」と「スリムで変化に強い行政経営の確立」の二つを基本目標として新たなプランの策定を進めてまいりたいと考えております。
そしてさらに、二つの目標に共通する改革の視点として、「選択と集中」を掲げたいと思います。これは、真に行政が担うべき事業を選択し、限られた財源をそれらに集中するという考え方であります。右肩上がりの成長が期待できない今後の社会では、施策の重点化を図りながら、歳入の範囲内で行政が担うべきものを選択するという発想が重要であり、こうした視点から、事務事業の原点に立ち返った見直しを進めてまいります。また、行政が直接的にサービス供給を担うべき部分を明確にするとともに、民間が担うことができるサービスについては、思い切って民間に委ね、区民や事業者、NPOと協働する形で、地域社会が必要とする多様な公共サービスの提供を行う行政経営への転換を図ってまいります。こうした構造改革を進めることで、一日も早く新たな政策を展開するための力を回復し、文化と都市再生を柱とした、人口増加や区民税等の増収につながる価値あるまちづくりを展開してまいりたいと考えております。
この五月には、プラン策定に向けた第一ステップとして、「選択と集中」をキーワードとする事務事業の見直し調査に全庁を挙げて取り組んだところであります。六月に入り、各部局の検討結果について、私自らがヒアリングを実施し、現在、結果の取りまとめを行っております。
現時点での検討状況の一端をご報告申し上げますと、まず施設の見直しでは、猪苗代青少年センターや秀山荘、各種の体育施設、さらには介護施設や障害者通所施設、保育園、そして南池袋斎場などを対象として、廃止や思い切った民営化、指定管理者制度の活用を含む民間委託等を検討しております。また、現在、民間から借り上げている児童館・区民集会室については、廃止する方向で検討いたします。二番目に、事業やサービスの見直しでは、限られた財源の中で事業を選択するという観点から、休廃止を含めたゼロベースからの総点検を行うとともに、保育料や住宅使用料、検診費用などにおける受益者負担の適正化、補助金制度の見直しなどにも取り組んでおります。三番目として、電子システム保守業務、小学校給食調理業務、住民記録や国民健康保険における窓口業務、そして図書館受付業務など、専門的・定型的業務については、民間委託のさらなる推進を検討しております。四番目に、外郭団体の見直しについてでございますが、コミュニティ振興公社と街づくり公社の統合や勤労者福祉サービスセンターの広域化を進めるとともに、補助金に頼らない自立的な経営に向けた体質改善を進めてまいります。五番目に、内部努力の取組みといたしまして、平成十七・十八年度の職員ゼロ採用を含め、今後五年間で四百人を目標とする職員定数の削減を進め、人件費の抑制を図ってまいりたいと思います。また、私はもちろんのこと、特別職の給料等の減額を初め、管理職から一般職に至るまで、区民の皆様と改革の痛みをどのように共有することができるのか検討を進めているところでございます。
このほか、新たな行財政運営システムにつきましても、予算編成手法や人事制度の改革、組織内分権の推進、そして参加・協働の促進などについて検討を進めてまいります。また、組織の改革につきましては、かねてからの懸案でありました生涯学習やスポーツに関する事業の区長部局への移行について、教育委員会と具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。さらに、財政健全化の目標といたしまして、これまでの経常収支比率等の指標に加え、区債残高の計画的縮減や財政調整基金の積立ての目標を設定したいと考えております。歳入の確保につきましても、先程も申し上げましたが、区税等の増収につながる政策を推進するとともに、区民税等の徴収強化、未利用資産の売却・貸付、ロケーションボックスの創設など、様々な工夫を検討しております。
以上のような検討結果を基に、今会期中には途中経過として改革プランの骨子をお示しいたします。また、今後、十五年度の決算状況や八月の都区財政調整当初算定結果を踏まえた検討を進め、九月を目途に、平成十七年度からの五カ年を計画期間とするプランの全体像を明らかにしてまいりたいと思っております。
次に、新たな基本計画の策定状況について申し上げます。
基本計画につきましては、これまでの財政健全化の取組みに一定の区切りをつけた後の新たな政策展開を示す計画として位置付け、昨年七月から基本構想審議会においてその審議をお願いし、様々な角度から活発なご議論をいただいております。私は、平成九年一月に策定した現在の基本計画には大きく二つの課題があると考えております。その一つは、計画の実効性を担保する財政的な裏付けを持たない計画であったこと、そしてもう一つは、既に右肩上がりの財政状況が終焉していたにもかかわらず、旧来の網羅的・総花的な計画内容を継承している点であります。そのことが、歳入が減少傾向にある一方で、身の丈を意識した行政サービスの見直しを自らに厳しく課すことができず、結果として抜本的な財政健全化を成し得なかった要因の一つになったと思います。新たな基本計画の策定に当たっては、政策レベルでの「選択と集中」を念頭に、今後十カ年における重点政策を明らかにすることが何よりも重要であります。文化と都市再生を初め、今後重点的に進めるべき政策の内容を、例えばとしま戦略プランという形で位置付け、めりはりのある政策を推進していかなければならないと考えております。
折しも現在、企業メセナ協議会会長の福原義春氏、東京芸術劇場館長の小田島雄志氏を初め、各界でご活躍されている文化人の皆様のご協力を得て、「東京芸術劇場から広がる文化都市としまの創造」と銘打ったとしま文化フォーラムを開催しております。
ここで大変悲しいお知らせを申し上げなければなりません。豊島区のこれからを考え、特性ある魅力あるまちづくりに最大のご協力をいただいております人間国宝、豊島区名誉区民である狂言師野村萬氏のご子息、総合芸術家・狂言師野村万之丞氏が、昨日、急逝されました。一昨日、としま文化フォーラムの講演の予定でありましたが、緊急入院のために弟さんの野村与十郎さんに急遽ピンチヒッターを務めていただきました。野村万之丞氏は、東池袋四丁目地区交流施設の総合プロデューサーとして、また豊島区文化政策顧問としてご指導をいただき、まさにこれからの豊島文化の中心として活躍を期待し、お力添えを賜ることをお約束いただいていたわけでございます。誠に痛恨の極みであります。私たちばかりでなく、これからの日本文化の大きな損失ではないかと思っております。野村万之丞氏の教えや思いをしっかりと胸に秘めて、区民の皆さんと共にとしま文化特区を、魅力あるまちをつくり上げたい、そんな思いもしております。心からご冥福をお祈りいたします。
それでは、本論に戻らせていただきます。
私は、こうした文化創造の息吹を基本計画の戦略プランに位置付け、としま文化特区構想を力強く推し進めてまいりたいと考えております。
さて、こうした明日への展望を開く基本計画を策定すべく鋭意検討を進めてきたわけでありますが、私の思いとは裏腹に、平成十七年度以降における大きな財源不足に直面しております。この六月には新たな基本計画の素案をお示しすることを予定しておりましたが、今後想定される計画事業や多種多様な区民需要を盛り込む形での財政フレームを現時点で設定することは大変難しい状況です。また、「公共施設の再構築・区有財産の活用」本部案についても、同様にすべての取扱いを明確化することは困難であります。したがいまして、戦略プランを含む計画の構成や事業選定のあり方について、再度検討を行うとともに、基本構想審議会にもお話をし、新たな改革プランを踏まえた上で九月を目途に具体的な案をお示ししてまいりたいと考えております。
次に、二つの新税の実施状況について申し上げます。
私は、区が直面する地域固有の行政課題を解決するために、全国に先駆けて放置自転車等対策推進税と狭小住戸集合住宅税の創設に向けた取組みを進めてまいりました。二つの税のうち、狭小住戸集合住宅税につきましては、三月末に総務大臣から同意する旨の通知を受け、約二カ月の周知期間を経て、この六月一日から条例を施行いたしました。既に、この税によりまして、ワンルームマンションの建築主が計画の変更に着手するような事例も出てきております。今後は、この税による抑制効果を注視しつつ、魅力と活力ある住宅・住環境の実現に向け、街づくりや住宅政策を展開してまいります。
さて、もう一つの放置自転車等対策推進税につきましては、既にご報告いたしましたように、先月二十六日、総務大臣から意見書を受け取りました。その内容は、自転車法に基づく対策協議会を通じ、鉄道事業者との話合いを進めるまでの間、新税についての同意・不同意の判断を見合わせることを提案するものであります。しかし、この税条例は、法定外税検討会議における一年四カ月にわたる鉄道事業者との協議を経た上で、区議会における慎重な審議の下に圧倒的多数の賛成を得て可決成立したものでございます。地方税法では、法定の不同意要件に該当しない限り、総務大臣は同意しなければならないと規定されておりますが、この度の提案は、法定事由とは異なる条件によって、区議会の意思を棚上げにするものであります。私は、こうした先延ばしにより、地方分権そのものの意義、そして区議会による議決の重みが失われはしないかと深く懸念をしております。駅周辺の放置自転車問題は大都市の自治体が抱える共通の悩みであり、その意味からも本区にはこれを速やかに実施する大きな責任があると認識しております。こうしたことから、今回の総務大臣からの提案につきましては、区議会の皆様のご意見を十分に踏まえて対応してまいりたいと考えておりますので、ご支援賜りますようお願いを申し上げます。
最後に、第二東京タワーの誘致について申し上げます。
昨年十二月、NHKと在京の民放五社からなる放送事業者により、地上波デジタル放送の電波を発信する第二東京タワーの建設計画が発表されました。平成二十三年から本格的にスタートするデジタル放送に対応し、高さ六百メートル級のタワーが新たに必要となるというものであります。放送事業者は、現在の東京タワーの継続利用も含め、秋頃までには建設の方向性を明確にするとともに、経済効果や立地条件等を基に建設地を絞り込み、年内には結論を出す見通しであります。こうした第二タワーの建設計画を受け、この間、さいたま市、台東区、足立区、そして豊島区においてもそれぞれ誘致活動が進められております。
豊島区におきましては、区内のNPO法人である東京アーバンクリエイト21によりまして、東池袋四丁目の造幣局敷地を想定したプランが提案されております。地上六百メートルのタワー計画は、カナダのトロントのCNタワー(五百五十三メートル)を凌ぐ世界一の高さであり、池袋副都心への誘致が叶えば、二十一世紀を象徴する一大ランドマークとなります。年間を通じて世界から人々が訪れる集客施設になることは確実であり、そこから生まれる経済的な波及効果には計り知れないものがあります。さらに、LRT構想と新タワーを連携させていくことも可能であります。サンシャインシティ方面へのLRTの経路を延長し、池袋駅と新タワーの間にユニバーサルデザインの交通手段を確保することで、インパクトが広がり、池袋副都心だけではなく豊島区全体のイメージとステータスの飛躍的向上が期待できると考えております。これまで区では、造幣局の敷地を活用し、総合体育場と一体となった大規模な防災緑地広場を確保することを計画してまいりました。しかし、池袋副都心の将来を考えるとき、タワーを建設しつつも一定の防災緑地広場を生み出し得るプランの実現性について、再検討をする必要性を感じております。この際、区といたしましても、NPO法人による提案の実現に必要となる都市計画上の課題整理や造幣局東京支局への働きかけ、そして庁内における検討組織の設置など、できる限りの協力と支援を行い、世界に誇る新タワーの誘致に向けて力を合わせていきたいと考えております。区議会の皆様におかれましても、ご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げる次第であります。
孫子の兵法に「迂直の計を知る者は勝つ」という言葉がございます。回り道したことを失敗としてではなくプラス思考で捉えて努力することで、最短の道筋を見出すことができ、ひいては人に先んじるという意味でございます。今、各区が改革への道を進む中、豊島区は少し回り道をし、遅れをとってしまった感があります。しかし、私は、このことを「迂直の計」として捉え、豊島区の未来を開く新たな道程を歩んでまいりたいと考えております。
本日ご提案申し上げます案件は、条例九件、予算二件、その他四件、合わせて十五件であります。各案件につきましては、後程日程に従いまして助役より説明申し上げますので、よろしくご審議の上、ご協賛賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして私の招集あいさつといたします。